Dr.トーコのラジオ診療室

2月7日放送「たとえ話」

2021年2月17日(水)

2月7日放送「たとえ話」

  • 管家先生&陶子先生&山本さん
陶:今回も前回に引き続き、医療法人春林会 華岡青洲記念病院の管家鉄平先生をゲストに
  お招きしました。管家先生、よろしくお願いします。
管:よろしくお願いします。
山:「Dr.トーコのラジオ診療室」、管家先生、今日のテーマは?
管:「たとえ話」です。
山:たとえ話、これはまた変わったテーマですね・・
管:普段患者さんと接するときに、心臓の話はとても難しいので、いろんなたとえ話を即興で作って、それで患者さんに説明する、というお話を今回はさせて頂きます。まず、「たとえ話」の話をする前に、自分が患者さんと話す時に気をつけていることあります。それは、友達や親戚でない限り、どんな患者さんに対しても必ず敬語を使うということです。勘違いされる方も多いんですが、「タメ口」を使うことが患者さんと親しくすることでは決してないです。患者さんというのは、医療従事者に対して弱者では決してありません。認知症や高齢の方も、自分より長く生きている人生の大先輩なんです。このように感じた理由のひとつとして、私の母親が病気で重度の障害をもっていたんです。うちの母親は昔は証券会社でバリバリ働いていたんですけど、そうなってしまったときに若い看護師さんに子供のような扱いをされているのを見て、非常に複雑で悲しい気分になったのを憶えていまして、気をつけるようにしているんですね。
山:管家先生は医者である前に人として接してくださるんですね。
菅:それと、専門用語を使わないでできるだけ説明する、ということも気をつけています。普段、医療従事者同士で話していると、専門用語ばかり使っているので、それが患者さんにも通用すると思ってしまうんです。心臓の病気自体はすごく難しくて、患者さんが理解してくれないと、治療がうまく進まないことがあるので、できる限りわかりやすく、たまにたとえ話しを使って説明するようにしています。それでは、「狭心症」~我々がよく接する病気です。それのたとえ話をご紹介したいんですが、まずは普通に説明をさせて頂きます。狭心症は、心臓の筋肉に栄養分を送っている血管が狭くなってしまうことによって起こるものです。普段リラックスしているときは気づかないけれども、運動したり重いものを持ったり、興奮したりすると苦しくなってしまう、というのが症状なんです。でも患者さんは、健康診断を受けた時に、心電図やエコー検査とかでは全然問題なかったのに、なんでそこで見つからなかったんだろう?と訴えることが多いんですね。これを「たとえ話」で説明すると・・・「ここに蛇口がありました。実は詰まって壊れかかっています。ふだん手を洗うくらいの水の量を出す程度なら壊れているのに気づきません。でも、この蛇口を使ってシャワーを浴びたり、洗車をしようとしたりして、たくさん水を出そうとしたらはじめて壊れていることに気づきます。」となります。そして「壊れていることに気づくには、水道屋さんに水道管の中身を見てもらう」というような具合です。心臓の血管も一緒なんです。普段、何もしていないとき、あまり動いてないときは、血管が狭くてもある程度血液が流れるので特に症状はないです。検査異常も見られないのが特徴です。だけど、心臓が激しく働いていて、より多くの栄養が必要な時はどうでしょう。血管が狭くなっていると「たくさん血液が流れてほしいのに流れない」ということが発生するので、その結果として心臓の筋肉が栄養不足になって、苦しくなってしまうんですね。なので、それを調べるとしたら、心臓にたくさん負荷をかけて、そのうえで心電図などの検査をするか、心臓の血管の中身をCTなどの画像診断で見てみるかしないと、そういうことで、患者さんに狭心症という病気を説明しています。
山:・・・すごくわかりやすいですね・・・
陶:ひとつのドラマを観たかのような気持ちになりましたね
山:頭の中に絵を描いてくださったみたいにイメージがピッタリはまりました!
管:ありがとうございます。あとですね、「心不全」という病気も診るんですが、これも普通に話すとすると・・・「心不全」とは心臓が普段行っている血液を全身に循環させるポンプの働きというのがうまくできない状態・・・ということになります。全身の臓器に血液がうまく行き渡らないと、古くなった血液も心臓に戻ることができなくなってしまうので、いきなりそういった状況になってしまうと、心臓だけでなく他の臓器もダメになってしまいます。だから治療としては、心臓の働きをお薬などで少し良くしてあげながら、他の臓器にも負担をかけないようにしてあげるというのが大事になってくるんです。
山:なんか・・複雑な状態だなっていうのはわかります。なんとなく、心不全というものの縁取りみたいなものはわかった気がしますが・・・
管:そうですね、なかなかこう言っても患者さんにとっては馴染みが薄いものなので、たとえ話を使うと・・・まずは、僕は患者さんに「マンションとかアパートに住んだことがあるでしょうか?」と聞いてみるんです。あります、と言った方には、「心臓というのは、マンションとかアパートで言うと、集合住宅の上にある給水ポンプのようなものなんですよ」と説明します。そこから不具合の想定に入るわけです。そう、いま、例えば災害や給水ポンプの故障によって、急にポンプの働きが半分になったとします。すると、それぞれの部屋の住人の水道の水が急に半分しか出なくなってしまうんですね。そうなるとすごく生活に困るというのがわかると思うんです。それぞれの部屋の住人というのを臓器になぞらえています。具体的には腎臓とか肝臓とか他の臓器がそのような状態(生活に困る状態)になっているというのが心不全の状態なんです。しかも、実は心臓というのは血液を送り出すだけでなく、排水の役目も担っているので、心臓がダメになるということは給水ポンプだけじゃなく下水処理にも影響が出てしまうということなんです。各部屋のトイレやお風呂などで使った水が溜まってしまって水浸しになっちゃうんですね。実際の心不全のときに、肺や皮膚に水が溜まってむくんでしまう、というのはそのせいなんです。治療としては、給水ポンプ=心臓を治してあげたり、あとは下水処理の能力、これは腎臓とかも関わってくるわけですが、そういった能力を上げてあげることも大切です。一方で各部屋の住人にも協力してもらって、水を節約して生活排水をできるだけ流さないようにしてもらうということも大事なので、治療の説明としては、心臓の薬を使うだけじゃなくて、全身の臓器を休めることが重要で、しっかり安静に努めてくださいと言っています。
山:これもよくわかりました
陶:傷んだから休める、っていうのは結構大事ですよね。慢性の病気や劇的に回復することが望めない状態だったりすると、「いま残っている力の範ちゅうで頑張っていってね」ということになります。「もう全部回復させるのは無理だから、この中でやりくりするしかないんだよ」というお話ってしなきゃいけないこともあるんですよね。先生のたとえ話、私もすごく勉強になりました。
管:いろいろこうやってなんとかたとえ話で説明しようとするんですけど、失敗することもあるんです。話が長くなりすぎて、飽きてしまった、とか、一生懸命話したんだけど、結局患者さんが僕から聞いた話をお家でご家族にいざ説明をしなきゃいけない、というときに、「紙に書いてないし全部忘れちゃった・・」という方もいらっしゃったりとか。あとは、たまにあるんですけど、たとえ話でわかりやすく話したな、と思ったら患者さんがお医者さんだった・・・とか・・・
陶:やっちゃったー!言ってよ〜!ってなりますよね(笑)。私は説明を紙に書いたりすることも大事だと思うんですけど、なかなかしゃべりながら紙に書くのって大変なんですよね。でも、きっと私たち医師は「わかってるから話せる」のであって、患者さんがいざおうちに帰ってご家族に同じ話をして、って言われたら難しいと思うんですよ。理解することと人に説明することって別のことなので。
山:管家先生、2回に亘っていいお話をありがとうございました!たとえ話って絵としてイメージできるからなんとなくだった理解を深めてくれるものなんですね!・・・管家先生、ラジオ出演、いかがでしたか?
管:昔から聞いていたんですけど、実際にしゃべる側にまわってみると、ことばひとつひとつの大切さというのを改めて気付かされたということで、非常に勉強になりました!
陶:・・・なんかちょっと優等生すぎませんか??(笑)
山:前回、今回と2回に亘り、医療法人春林会 華岡青洲記念病院の管家鉄平先生に
心臓の病気についてのお話を伺いました。
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