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真冬の大冒険  北本 隆雄

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小学生のとき、欲しくてたまらない
CDがありました。

何軒もCDショップをまわっては
店員さんに「ありません」と言われ続け

「取り寄せできますか?」には決まって
「できません。」という返事。

かなり特殊なCDだったのです。

タイトルは
『その時歴史が動いた オリジナル・サウンド・トラック』

NHKで当時放送されていた
歴史ドキュメンタリー番組のBGM集です。

とりわけ好きだったのは
番組のエンディングで流れるVTRでした。

その日取り上げた歴史上の人物の
”その後”を紹介するというもの。

松平定知(まつだいら・さだとも)アナウンサーの独特な語り口と
クラシック調の落ち着いたBGMが流れます。

だんだんと曲が盛り上がりをみせてくると

それまで優しい口調だったナレーションは
力のこもったものに変わり

最後に、渾身の一言を放つのです。イメージは

「信長の野望は、儚く…散っていったのです。」など。

直後、BGMは壮大なオーケストラの大演奏に変わり
画面上にエンドロールが流れる…

あまりにかっこよく
「このエンディングを自分でも再現したい!」
と思っていました。

ただ、サントラCDはどうやっても手に入りません。
諦めかけた時、気づきました。

「まだ、本家本元を攻めておらぬ・・・」

**************

関東の祖父母のもとに遊びにいった冬のある日。
ひとり電車を乗り継ぎ、東京の渋谷駅に降り立ちました。

私の体力を奪っていったのは
ビルを吹き抜ける冷たい風と長い上り坂でした。

白い息を吐きながらたどり着いた頂上には
城の如く鎮座している建物が。

「こ、これが・・・」

全国に50以上あるNHKの放送局の中枢
「NHK放送センター」です。

圧倒的な存在感を放つその巨大な建物にたじろぎ
足取りが確実に重たくなるのが分かります。

なんとか敵陣に入り込み、売店を見つけました。

小学生がひとり必死な顔で入ってきて
驚いたのだと思います。店員さんが近づいてきました。

それに気づいた私、すかさず一言。

「わたくし、その時歴史が動いたのCDを探しているのですがっ」

固まる店員さん。
震える私。

笑みを浮かべる店員さん。
より震える私。

店の奥に消えていく店員さん。
明らかに他のお客さんから注目される私。

戻ってきた店員さん。
その手に握られていた夢にまで見たあのCD。

「討ち取ったりいいいい」

家に帰り、何度も何度もそのCDを流しながら
ナレーションの真似をして満足していました。

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