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やさしいあかり  北本 隆雄

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北本 隆雄 プロフィールへ
「きょうはいい天気になってよかった!」

あまりの快晴に、一緒にイベントに行く約束をしていた同僚に
起きてすぐメールしました。

雪や氷で1000を超えるランタンを作り
灯すイベントです。
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午前中に別の用事を済ませ、会場に着いたのは午後。

すでに住宅街の広場に数えきれないランタンが完成し
灯りがつけられるのを待っていました。

すると、さきほどまでの空がウソのように
視界が遮られるほどの大粒の雪が降ってきました。

「大雪を運んできてくれてありがとう」と、住宅街で理髪店を経営するご夫婦が
いたずらっぽく言ってきます。

ご夫婦と出会ったのはちょうど半年前
テレビの生中継でこのイベントにお邪魔したときでした。

北海道胆振東部地震による液状化現象で
被害を受けた北広島市の大曲並木地区。

地域を離れて暮らす方々もいる中
「つながり」を絶やさないためにと半年に1度イベントを開いています。

冬は雪や氷、夏は紙で作ったランタンに灯りをつけます。

すべて“手作り”なので
準備や片付けが大変なのです。

半年前は生中継に追われ、お手伝いも
灯りをゆっくりとみることもできませんでした。

あたりが暗くなると同時に、雪が少し弱まってきました。

「そろそろ、いきますか」
ここから一つ一つのろうそくに火をつける作業がはじまります。

「午前中さぼった分、ここからたくさん働いてください」
朝から手伝いをしていた同僚が笑いながら言ってきました。

着火ライターは、1度や2度火をつけるにはかんたんですが

スイッチが固いため、50回を超えたあたりから
親指の付け根あたりの筋肉がピクピクしてきます。

雪でろうそくが濡れるなかでも
地域の方々が続々と集まり、試行錯誤をしながら灯していきました。

揺れるろうそくは、とてもきれいで
周りをオレンジに染めています。

いつの間にか、雪はピタリとやんでいました。

見とれていると、理髪店の女性が近くに来て言ってくれました。

「半年前に、北本さんがランタンを見て“やさしいあかり”と
 言ったので、ポスターにその言葉を入れました。」

たしかに真ん中に書いてあります。

「こころをつなぐ やさしいあかり」

決してこの地域の人でもない私のことも
こうやって受け止めてくれるあたたかさが
この灯りをよりやさしく見せる気がします。

いたるところで、明るい話し声が聞こえてきます。

3年半前。ブラックアウトの中での灯りは
ただ、その瞬間を生き延びるためのものでした。

いまは、人と人を結びつけるやさしく
力強い灯りに思えます。
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