生まれつき重度の難聴 バドミントンで世界に挑む高校生 ろう学校から強豪校に…金メダル獲得へ
耳が聞こえないアスリートによる国際大会「デフリンピック」が、11月に東京で開幕します。
北海道内から日本代表として高校生と中学生が出場。
世界に挑む若きエースを追いました。
両耳に補聴器…デフリンピックに挑む高校生
鋭いスマッシュを放つのは、北海高校の森本悠生さん。
(チームメイト)「耳の奥までつけるんでしょ」
生まれつき重度の難聴で、両耳に補聴器をつけていないと音が聞こえません。
そんな森本さんが挑むのが…
4年に1度開催される、聴覚障がいのアスリートによる国際大会「デフリンピック」です。
2025年11月、日本で初めて東京で開催され、森本さんはバドミントンに出場します。
(森本悠生さん)「初めての舞台なので、楽しみが膨らんでいる気持ちが大きい」
(顧問)「補聴器外して」
練習中に突然、補聴器を外す森本さん。
聞こえない状態で試合をするのが、大会の条件です。
バドミントンで大切な“音”…視覚で補い『健常者に負けない』
(森本悠生さん)「(聞こえないと)反応が健常者よりも遅くなって難しい。視覚を死守しないとついていけない」
バドミントンは、打った時の音で打球の種類を判断します。
強い音に、弱い音。
森本さんはその音が聞こえないため、相手のフォームを見て判断。
ダブルスではパートナーがどこにいるのか、振り返って確認するなど視覚で補います。
森本さんは得意のスマッシュを武器に、聴覚障害者の全国大会で2024年、日本一に輝きました。
(森本悠生さん)「健常者に負けないように、上の選手を倒すという目標をたてたり」
『健常者に負けない』
その思いから、バドミントンの技術を磨くため、ろう学校から強豪校の北海高校に入学しました。
(担任の先生)「ロジャーマイクです。このマイクを通じて森本がつけている補聴器に声がクリアに届くような形になっています」
(森本悠生さん)「いつもの会話よりも2倍くらいは聞きやすいと思います」
それでも入学当初はあまり慣れず、授業や部活で後れを取ることもー
そんな時、サポートしてくれたのは、バドミントン部の同期3人です。
(同期 鈴木悠真さん)「最初はどうやって接していいか分からなくて結構困ることが多かったんですけど、意外と2年生になると慣れてきて、森本に話しても聞こえたり普通に会話できたので、あまり苦労はなかったです」
(同期 伊藤柊雄さん)「口でわかるらしくて、口を大きくしてしゃべって聞こえさせる」
仲間に支えられて歩んできた高校生活。
その集大成をデフリンピックにぶつけます。
(森本悠生さん)「頑張ってこられたのは、みんなのサポートや聞こえないことへの配慮をしてもらったり、ありがたい」
背泳ぎで道内中学生のトップ デフリンピック日本代表に選出!
もう一人のデフリンピック日本代表が北広島市にいます。
(友達)「なんか元気」
(友達)「優しくて運動が得意な感じ」
少し恥ずかしがり屋の中学3年生・川眞田結菜さんです。
(友達)「もっと自信持ちなよ、すごいんだから」
なにが「すごい」のかと言うと…そう、水泳です。
(川眞田結菜さん)「泳ぐのはすごく楽しい」
2024年の道大会決勝戦。
2位に大差をつけて見事優勝!
背泳ぎで道内中学生のトップに輝きました。
速さの秘訣についてコーチは…
(菅野恭平コーチ)「しなやかな腕を使ってうまく前に進むことができる選手。高校に行けば着順3番でインターハイにいける」
健常者と同じ舞台で活躍している川眞田さん。
生まれつき重度の難聴で、左耳はほぼ聞こえません。
右耳には音を電気信号に変え、脳の神経を刺激する装置「人工内耳」を装着しています。
(川眞田結菜さん)「良いところはうるさい時は(人工内耳を)とって聞こえないことにする。悪いところは友達と話すときに聞き取りにくいことが多い」
水の中では「みんな一緒」
しかし、水泳では音が聞こえなくても競技に直接的な影響はないといいます。
だからこそ…
(川眞田結菜さん)「(水泳は)差別はない、みんな一緒」
水の中では全員が自由に、そして平等に力を競うことができるのです。
そんな娘を間近で支えてきたのが父の裕さんです。
(父 川眞田裕さん)「楽しんでもらえたらいい。なかなかチャンスのないことで、耳が聞こえないのも才能だと思っているので、そういった才能を生かした舞台を楽しんでもらいたい」
(川眞田結菜さん)「デフリンピックは初めてなので、楽しくベスト出したいと思います」
将来の夢は“ろう学校の体育の先生” 世界に挑む若きエース
バドミントンの日本代表・北海高校の森本さん。
大会に向けて極限まで筋力を鍛えます。
そんな森本さんはある夢を抱いています。
(同期 角田大宙さん)「将来の夢は何ですか?」
(森本悠生さん)「ろう学校の体育の先生になりたい。(ろう学校で)自分が今までにない経験をさせてもらって、自分の後輩に経験を伝えたいと思ったから」
(同期 角田大宙さん)「すばらしい。熱い思いがあるんです」
(記者)「仲いいよね2人」
(同期 角田大宙さん)「全然仲良くないです」
間近に迫ったデフリンピック。
森本さんがめざすのは、世界の頂点です。
(森本悠生さん)「まずはデフリンピックで金メダル獲得が目標なので、そこに向けて頑張っていきたい」