ニュース

NEWS

「負けていられない」競走馬が余生過ごす養老牧場 豪雨災害に見舞われても“再起”めざし奮闘 北海道白老町

牧草地は今も冠水したままとなっています。

引退した競走馬などが余生を過ごす養老牧場が、10月に大雨の被害を受けました。

復旧の目処が立たない中、再起をめざす牧場を取材しました。

引退した競走馬などを飼育する「養老牧場」穏やかな日々が一転…

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「(本来は)水がなくて青草が全面に生えている状況でした」

大量の水と泥に覆われた放牧地。

わずかに残った牧草を食べる馬。

緑豊かだった牧場の面影はありません。

北海道白老町にある「ホースフレンドファーム」です。

豪快に駆け回る馬や、のどかに草をはむ馬もー

ここは、引退した競走馬などを飼育する「養老牧場」です。

牧場長を務めるのは、工藤紗矢香さん40歳。

娘のひまりさんとともに引退馬の世話をしています。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「しびれを切らして自分でかいてるじゃん、かゆいのここでしょ」

終の棲家で余生をまっとうするおだやかな日々。

そんな日常があの日、一変しました。

記録的な大雨 敷地が冠水し甚大な被害

10月1日、記録的な大雨に見舞われた白老町。

6時間で327ミリと、観測史上最大の雨量を記録しました。

近くに社台川が流れる工藤さんの養老牧場。

大雨で社台川の水かさが増し、牧場は敷地全体が冠水しました。

馬を飼育する厩舎にも川の水が流れ込み、牧柵は壊れたり流されたりして使えない状態に。

牧柵の修理だけで800万円以上かかる見込みで、被害は甚大です。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「農地といえど農作物を植えていたわけじゃないので、家畜を飼っていたってわけでもないので、補償や助成金でもないのでもう自分たちでやっていくしかない」

幸い、およそ30頭いた馬に被害はありませんでしたが、1か月経った今も影響は色濃く残っています。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「粘土は川の奥の土だと思う。普段表に出てくるような土じゃない、出てきちゃいけない土が出てきちゃっている」

一面に青々とした牧草が生えていた放牧地は、大量の水と粘土質の土が流れ込み、今も冠水したままです。

これから冬を迎えるため、本格的な復旧作業は2026年の春から。

いつ元通りになるのか、全く目処がついていません。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「火山灰と砂利を入れて土を入れると(業者の人が)言っていたので、全体の高さを上げてから肥料をまいて種をまいてという流れになるので、来年高さを上げたところですぐには草は生えないので、年単位という形」

それでも馬の健康のために放牧は欠かせません。

冠水したままの放牧地… 馬にもストレス「早く復旧しないと」

広い放牧地が使えず、交代で外に出しますがー

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「ちょっと落ち着きないねぇ。ちょっと機嫌悪いわ」

普段より放牧時間が短くなり、ストレスがたまっている様子です。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「きのうは狭いところしか出してあげられなかったので、きのうは何だったんだというメッセージだと思います。どれだけ広い場所が必要なのか分かってもらえると思う。広い場所が思う存分使えないのは、1日でも馬はつまんないとなってしまう。早く復旧していかないとってつくづく思う」

家族に馬がいるのは当たり前 愛馬とともに北海道へ移住

神戸市出身の工藤さん、幼いころから馬に慣れ親しんできました。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「父と母が馬を飼って競技人生を歩んでいた人なので、家族に馬がいたら当たり前なんだと思って生きてきちゃった」

両親は馬場馬術の選手で、飼っていた馬とともに多くの大会で優勝をおさめました。

そして25年前、引退した愛馬と一緒に家族は北海道への移住を決意したのです。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「愛馬が夏に弱かったというのもあるので。愛馬がとにかく今を幸せに生きられる場所はどこだと探した時に北海道となって。自分の家族が幸せであるためにどこに行こうっていう感じの決め方だったと思うので」

引退した馬が幸せに過ごせる場所にー

しかし、のんびりと寿命をまっとうできる馬はごくわずか。

引退後は食肉になる競走馬も少なくないといわれています。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「馬の業界はとにかく生きる場所がない子が多い。この子も0歳の時に引き取って、体に奇形があるというか、足の向きや体の大きさ的にも競走馬になれないので、(肥育場に)出されてしまうので引き取って、一生涯面倒見るねという、うちの看板娘です。 小さいときからチビチビって呼んでいたら本人も覚えちゃって。女の子だけどチビタと呼ばれて生活しています」

馬の幸せのために「負けていられない」

困難に直面しても、馬の幸せのために前を向く工藤さん。

そんな養老牧場には、全国から支援の物資や寄付が集まっています。

この日は貴重な青草が送られてきました。

(ホースフレンドファーム 工藤紗矢香さん)「非常に問題が多いんですけど、みんなの気持ちがあれば絶対形にできると思っているので、もう少し頑張ろうかなと思っています。だって25年やってきましたからね。こんなことで負けていられないっていう。馬たちが幸せであればね、何が起きたって大丈夫だと思います」

すべては馬のためにー

記録的な豪雨災害に見舞われた養老牧場は、再起をめざし奮闘を続けます。

11/01(土) 08:21

ニュース