牧やすまさ路地裏のスピリッツ

第6回「札幌少年鑑別所」(法務少年支援センターさっぽろ)所長 中嶋 英治さん

2019年11月5日(火)

中嶋さんは長年、少年の鑑別に携わってきた心理の専門家です!

このコーナーでは毎週、社会復帰や更生を目指す刑務所出所者を支える方たちにご出演いただき、それぞれが抱える問題や地域全体で支えていくことの重要性をお話いただきます。
  • 中嶋さん1
    中嶋さんは大阪出身。札幌少年鑑別所には今年の4月から勤務されています
●札幌少年鑑別所・法務少年支援センターさっぽろは、どのような施設ですか?
→ 札幌少年鑑別所・法務少年支援センターさっぽろでは、非行のある少年(20歳未満の者)を主な対象として、専門的な調査や診断を行う法務省所管の施設です。昭和24年、少年の健全育成を目的として施行された少年法及び少年院法とともに発足し、その後、平成27年に施行された少年鑑別所法に基づき運営されています。少年鑑別所は、北海道に4か所(札幌,旭川,函館,釧路) 全国では52か所に設置されています。

●中嶋さんは所長として、施設でどのようなお仕事をされていますか?
→ 家庭裁判所の決定により、通常は4週間(最長8週間)、非行のある少年を収容します。こうした少年たちが安心して家庭裁判所の審判を受けられるよう、落ち着いた生活環境を提供しつつ、健全育成に向けて働き掛けます。そのなかで、非行の原因や今後の指導方針を明らかにする鑑別を行い、その結果を「鑑別結果通知書」として家庭裁判所に送付します。「鑑別結果通知書」は、審判の資料になるとともに、少年院や保護観察所での指導・援助にも活用されます。
 また、少年院、保護観察所等の関係機関の依頼に基づき鑑別を行うほか、「法務少年支援センターさっぽろ」として、犯罪や非行の問題に悩む一般の方からの心理相談に応じます。この相談は、心理テストの実施等による調査・診断も含まれます。青少年の健全育成に携わる機関又は団体の皆様と連携しながら、地域における非行及び犯罪の防止に関する活動や、健全育成に関する活動の支援などに取り組んでいます。心理相談の対象者は少年に限っていないので、犯罪や非行に関する悩みを抱えていらっしゃる方は、遠慮なく御相談ください。

●社会復帰・更生を目指す方たちを拒む「壁」は何だと思いますか?
→私見ですが、矯正施設から出所した者に対する先入観が壁になっているのだと思います。あちこち転勤をして、そこで知り合った方々に自分の仕事について説明をしますが、まず、私が小柄な「おっちゃん」であることに驚かれます。収容されている人たちは、獰猛で、悪事を働く場を虎視眈々とねらう油断のならない人であるとの先入観があるからだと思います。収容される方々が抱える問題はさまざまであり、ちょっとしたボタンのかけ違いを治してあげるだけで、社会に軟着陸できる人は多くいます。
 また、失敗への不寛容さも壁になっているように感じます。もちろん被害者に対する十分な配慮は必要ですが、失敗しない人はいません。新たな出発へのチャンスを与える優しさが必要なのだと感じています。
  • 中嶋さん2
●社会復帰・更生を目指す方たちを支えるために、私たちが出来ることは何ですか?
→ 「心と体の拠り所なる場」を提供いただきたいということです。
 いずれの矯正施設でも、心理の専門職による調査を実施し、処遇目標を設定の上で、各種の必要な指導を実施しています。更には必要に応じて福祉の専門職員による社会復帰調整も実施しています。社会の皆様におかれましては、先入観を持つことなく、こうした矯正施設における働き掛けの中で、変わるために努力してきた者たちに対し、温かい気持ちを持って「居場所と出番」すなわち帰住する場所と働く場所を御提供いただくことを、また、失敗を安定に変えるためのセカンドチャンスを支えていただくことを、お願い申し上げます。
 札幌少年鑑別所では、「法務少年支援センター」の名で,非行や犯罪に関する相談を受け付けています。私たちは,こうした地域の犯罪と非行を防止するために行う業務を「地域支援」と呼んでいます。出所した者を雇用した場合に生じた悩みのほか,社会適応に困難が生じた場合の悩みなどについても御相談いただくことは可能です。
地域支援専用ダイヤルである 011-787-0111に御連絡ください。
「法務少年支援センター」が、社会復帰・更生を目指す者たちを支援くださる皆様のお力になれれば幸いです。
STVラジオをradiko.jpで聴く