クリスマスを心待ちにしていた最愛の息子…事故で失った両親独白「被害者遺族だからこそ」札幌市
2024年5月、小学4年生の男の子が低血糖で意識障害に陥った男の車にはねられ死亡しました。
「同じような被害者を2度と出したくない」
最愛の息子を失った家族が訴えたい思いとは。
事故現場を訪れ続ける父親 息子を襲った悲劇
花を手に事故現場を訪れる男性。
小学4年生の息子を失った西田圭さんです。
(西田倖さんの父親 西田圭さん)「信じられない、いまだに。特に妻は一生来られないと言っていますので、その気持ちもすごくわかる。私は逆にもう、ここを直前まで倖が生きていたわけだから。倖の生きていた証を確認できるので、私はここに来続けることの意味があると思う」
3人兄弟の末っ子の倖さん。
人を幸せにしてほしいと「倖」と名付けました。
その名の通り、人を笑わせることが大好きだった倖さんに悲劇が襲います。
(鷲見記者)「男の子がはねられた横断歩道です。現場には車の部品が散乱していて、警察が入念に調べています」
2024年5月、札幌市豊平区の市道で、登校中に横断歩道を渡っていた倖さん。
そこに赤信号を無視したワゴン車が突っ込み、腹部を強く打って亡くなりました。
生活一変…止まった“家族の時計”
運転していたのは65歳の男。
糖尿病を患っていた男は、インスリンを注射後、必要な食事をとっていなかったため、低血糖による意識障害に陥っていました。
当時、倖さんが身に着けていたランドセル。
(西田倖さんの父親 西田圭さん)「ストラップが切れてしまっている。ランドセルも結構傷ついているので、本人の体を守ってくれたのかなと思うんですけど。顔も傷ついていたし、衝撃はひどかったんだなと改めて感じた」
裁判で西田さんは「重い刑罰を科してほしい」と訴えました。
しかし、過失運転致死に問われた男に出された判決は、禁錮2年6か月。
刑が確定し、刑務所に収監されています。
(西田倖さんの父親 西田圭さん)「交通ルールを守った子どもが、身勝手な行動で判断を誤った大人の責任で命を落としてしまった事件なので、罪の重さはこれでいいのかというのは、自分が当事者になって痛感している部分です」
最愛の息子を失ったあの日から、家族の時計は止まったまま。
残された2人の兄弟のためにも日常を変えないように意識していますが、悲しみが癒えることはありません。
(西田倖さんの母親)「私がキッチンでご飯を作っている間に、座って(宿題を)やったりすることが多かった。夕方5時から6時7時とかの時間は、結構2人でいることが多かったかもしれない。だから今、夕方はすごい静かです。こんな静かだったかなみたいな」
東京で単身赴任をしている西田さん。
毎日遅くまで会社に残り、仕事一筋の毎日でしたが、生活は一変します。
(西田倖さんの父親 西田圭さん)「仕事をしている間でも、頭の中では倖が出てくるというか。そんな状況なので、どっちが優先順位が高いかというと、やっぱり倖と残された私たち家族に対する時間なので。倖と、あとは私たち残された家族のために時間を費やしていく、その割合が増えていくかなと思います」
「生きているパパは僕の代わりにみんなに伝えて」
この先の人生を倖さんにささげると決意した西田さん。
息子の思いを届けるため、講演活動を始めました。
(講演・西田圭さん)「病院で出会った倖は冷たく、顔や手などのいたるところに大きな擦り傷を負っていました。私は何度も何度も倖を抱きしめながら「こんな思いをさせて本当にごめんな、痛かったな、苦しかったな、怖かったな」とずっと謝り続けていました。ひと言で言うのであれば、今この瞬間も本当に愛おしくてたまらない、抱きしめたい、そう思ってやみません」
西田さんは、持病や薬の影響で事故が起きない社会にしたいと訴えます。
(講演・西田圭さん)「息子を突然失ってしまってから、私はどのように生きていけばよいのか全くわからない状態になりました。その状況の中で、なぜ私が今この場に立っているかというと、亡くなった倖が私に「僕と同じ思いをしないように、生きているパパは僕の代わりにみんなに伝えて」と、息子がそう言っているように思えてならないためです。私と大好きな息子・倖からのメッセージとさせていただきます。ご清聴ありがとうございました」
(西田倖さんの母親)「これ楽しみにしてるんですよね。これ好きなんです」
倖さんが大好きだったクリスマス。
2024年も、心待ちにしていたクリスマスまで数えるカレンダーを用意しました。
(西田倖さんの母親)「きょうは靴下の形だったよ、食べてねって、そこにチョコ置いてある」
2023年、クリスマスプレゼントに大喜びだった倖さん。
(西田倖さんの父親 西田圭さん)「たぶんこれは宝物とか大事なものを入れる箱。サンタさんへの手紙だ」
サンタさんにお礼の手紙を書いていました。
(倖さんの手紙)「サンタさん、去年来てくれてありがとうございます。今もマリオメーカー2で遊んでいます。マリオメーカー2は楽しいゲームです。プレゼント待っています」
幸せだった日常が突然奪われた家族。
心の穴は今もふさがれないままですが、止まっていた時は少しずつ動き始めています。
(西田倖さんの母親)「悲しい気持ちはなくなることはないので、そういう気持ちとこれからずっと一生一緒に生きていくっていう覚悟が、ちょっとでき始めたかなくらいのところですね」
同じ悲劇を二度と繰り返さないためにー。
西田さんはXのアカウントを作って、情報発信を始めました。
今後は機会があれば学校や刑務所、免許更新センタ―などで講演を続けていきたいと話しています。
(西田倖さんの父親 西田圭さん)「いつ自分が加害者になるかもしれないし、被害者になるかもしれないし、どっちになってもものすごくつらい。今回もちろん私たち家族は、本当に悲しみのどん底にいるんですけど、その悲しみや恐怖心をどれだけ味わわせない世の中にしていくかは尽きない課題。被害者遺族だからこそ、向き合っていかなければいけないのかなと、いま切に感じているところ」
西田さんは人生をかけて、ハンドルを握る責任の重さを訴え続ける覚悟です。