【日本海側の津波対策】被害想定を初めて公表…特徴は“すぐに来る”
最大の死者数は7500人にも上ります。
道は、日本海側で地震が起きた場合の被害想定を初めて公表しました。
命を守るために必要とされたのが、「すぐ来る津波」への備えです。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「波が来たら一気に来る。そういう怖さはみんな知っていると思う」
道南の松前町に住む堺繁光さんです。
堺さんが生まれ育ったのは、海岸沿いの江良地区。
今から42年前、ある災害が襲いかかりました。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「当時ここの人たちは津波の怖さを知らずに、波が引いた時点でおばあちゃんが昆布を拾いに行ったんだね。それで波にさらわれた」
(記者)「午後0時半すぎ、3メートルを超す第1波が観測された松前町に来ています」
1983年に秋田県沖で発生した日本海中部地震。
松前町の江良地区では、津波によって1人が死亡しました。
10年後の1993年には北海道・南西沖地震が発生。
揺れから5分後に津波が押し寄せた奥尻島などで、230人が犠牲となりました。
6月3日に開かれた道の防災会議です。
日本海沿岸で巨大な地震が起きた場合の被害想定が初めて公表されました。
強調されたのは「津波到達の早さ」です。
(道防災会議減災WG 岡田成幸座長)「日本海沿岸の地震は震源が陸地に近く、揺れが大きく津波の襲来時間が早い」
陸地近くの断層が多い日本海沿岸。
15パターンの断層モデルの中で、最も被害が大きくなるのが道南のF17断層です。
マグニチュード7.8の地震が起きた場合、およそ7500人の死者が出ると想定。
ほとんどが津波による被害です。
松前町では地震発生後、7分から18分で津波が到達し、およそ2400人が死亡すると試算されています。
特に津波到達までの時間が短い江良地区。
最短の場合、揺れから2分で第1波が到達します。
道が認定する「防災マスター」として活動する堺さん。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「これですね」
案内してくれたのは避難階段です。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「これが避難路に指定されています。町内会の会長さんが地元の人に委託して、草刈りを管理しながらやってもらっている」
いつでも避難できるように、高台にのぼる階段はきれいに清掃されています。
(金澤記者)「漁港の近くのこちらの場所は、津波が来た場合、浸水する可能性があります。この場所から高台までどれくらいの時間で避難できるのか試してみます」
海岸沿いの住宅街を走って避難しているとー
(金澤記者)「あの高架のところまで避難します」
走り続けた先に見えてきたのは、江良地区の人々が大切にしている避難階段。
スムーズに駆け上がりながら、海抜23メートルの高台にたどり着くことができました。
(金澤記者)「大体1分半ですね。この階段がなければ2分以内に避難はできなかったと思います」
ただ、思うよう走れない高齢者の場合はさらに時間がかかります。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「(沿岸から)ここまで来る時間の方が長いから、整備されていても安心はできない」
町は、避難の大切さを改めて理解してもらいたい考えです。
(松前町 斉藤明総務課長)「被害想定も出ましたので、今後の避難訓練のあり方を考えていきたいと思っている」
北海道大学で地震について研究する高橋教授は、迅速な避難の重要性を訴えます。
(北海道大学 高橋浩晃教授)「(想定では)津波の避難を早くすれば、かなり人的被害が減ると示されているので、事前の対策の重要性が改めて示された」
道の想定では、直ちに避難する人の割合が2割から7割に増えれば、最大で5000人ほど死者を減らせるとしています。
一方でー
(北海道大学 高橋浩晃教授)「石狩より北側の地域では大きな地震や高い津波をあまり経験してこなかった。地震・津波のリスクがあることを再度確認して、着実に対策を進めてほしい」
道北の津波対策はどうなっているのでしょうか。
(金澤記者)「稚内の日本海沿岸からは美しい利尻富士を望むことができます。しかし、この美しい海が牙をむいたら、最大4000人の死者が想定されています」
これは稚内の近くで地震が起きた場合のシミュレーションです。
揺れから15分後には津波が港周辺の市街地を襲います。
マチに人が集まる夏の昼間の場合、最大4000人の死者が想定されています。
(訓練)「これはJアラートのテストです」
市の職員が確認しているのは、稚内市が全世帯に貸与している「防災ラジオ」。
Jアラートや大津波警報などを受信すると、大音量で避難を呼びかけます。
(稚内市企画総務部 大久保和彦防災主幹)「行動の源は情報なので、重要な情報を早く正しく伝えることが、今回の津波・災害に非常に有効だと思う」
海岸近くにある養護老人ホームです。
(養護老人ホーム富士見園 山内正人施設長)「いざという時は外の非常階段からも避難できるような施設になっています」
ここでは建物の3階を津波から避難するスペースとして整備しています。
施設の中には食糧のほか、おむつなどを備蓄し、長期の避難に備えています。
施設がある地区はおよそ8.7メートルの津波が6分で到達する恐れがあり、足が不自由な入所者の命をどう守るかが課題です。
(養護老人ホーム富士見園 山内正人施設長)「少しでも海抜の高いところに避難誘導することで、日ごろから訓練や研修をして周知しているところです」
施設では車椅子の人を上層階に避難させる訓練を定期的に実施。
被害が長期化した場合に備え、発電機を導入するなど災害への備えを強化しています。
(養護老人ホーム富士見園 山内正人施設長)「一度準備して終わりではなく、継続して繰り返して、訓練や備えを進めていくのが命を守るために重要だと考えている」
松前町・江良地区の堺さんです。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「売っているやつよりはずっとおいしい。ノリの厚さが違うんですよ」
海の恵みはまさに生きる糧。
その側で暮らすからこそ、津波への備えは欠かせません。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「(津波が)2分で届くという短い時間の災害の想定を頭の中に入れて、地震が来たらどうするか心構えをしておくべき」
大きな被害が想定される日本海沿岸の地震。
命を守るために「すぐ来る津波」への対策が必要となります。
日本海側の地震の特徴は、断層が陸に近く「津波がすぐ来る」ことです。
奥尻町など最短1分で第1波が到達。
津波の高さもせたな町で最大26.9メートルに及ぶなど、多くの被害が予想されます。
大きな揺れが来たらすぐに避難する。
その意識が生死を分けることを忘れないでください。
(2025年6月3日放送)
道は、日本海側で地震が起きた場合の被害想定を初めて公表しました。
命を守るために必要とされたのが、「すぐ来る津波」への備えです。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「波が来たら一気に来る。そういう怖さはみんな知っていると思う」
道南の松前町に住む堺繁光さんです。
堺さんが生まれ育ったのは、海岸沿いの江良地区。
今から42年前、ある災害が襲いかかりました。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「当時ここの人たちは津波の怖さを知らずに、波が引いた時点でおばあちゃんが昆布を拾いに行ったんだね。それで波にさらわれた」
(記者)「午後0時半すぎ、3メートルを超す第1波が観測された松前町に来ています」
1983年に秋田県沖で発生した日本海中部地震。
松前町の江良地区では、津波によって1人が死亡しました。
10年後の1993年には北海道・南西沖地震が発生。
揺れから5分後に津波が押し寄せた奥尻島などで、230人が犠牲となりました。
6月3日に開かれた道の防災会議です。
日本海沿岸で巨大な地震が起きた場合の被害想定が初めて公表されました。
強調されたのは「津波到達の早さ」です。
(道防災会議減災WG 岡田成幸座長)「日本海沿岸の地震は震源が陸地に近く、揺れが大きく津波の襲来時間が早い」
陸地近くの断層が多い日本海沿岸。
15パターンの断層モデルの中で、最も被害が大きくなるのが道南のF17断層です。
マグニチュード7.8の地震が起きた場合、およそ7500人の死者が出ると想定。
ほとんどが津波による被害です。
松前町では地震発生後、7分から18分で津波が到達し、およそ2400人が死亡すると試算されています。
特に津波到達までの時間が短い江良地区。
最短の場合、揺れから2分で第1波が到達します。
道が認定する「防災マスター」として活動する堺さん。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「これですね」
案内してくれたのは避難階段です。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「これが避難路に指定されています。町内会の会長さんが地元の人に委託して、草刈りを管理しながらやってもらっている」
いつでも避難できるように、高台にのぼる階段はきれいに清掃されています。
(金澤記者)「漁港の近くのこちらの場所は、津波が来た場合、浸水する可能性があります。この場所から高台までどれくらいの時間で避難できるのか試してみます」
海岸沿いの住宅街を走って避難しているとー
(金澤記者)「あの高架のところまで避難します」
走り続けた先に見えてきたのは、江良地区の人々が大切にしている避難階段。
スムーズに駆け上がりながら、海抜23メートルの高台にたどり着くことができました。
(金澤記者)「大体1分半ですね。この階段がなければ2分以内に避難はできなかったと思います」
ただ、思うよう走れない高齢者の場合はさらに時間がかかります。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「(沿岸から)ここまで来る時間の方が長いから、整備されていても安心はできない」
町は、避難の大切さを改めて理解してもらいたい考えです。
(松前町 斉藤明総務課長)「被害想定も出ましたので、今後の避難訓練のあり方を考えていきたいと思っている」
北海道大学で地震について研究する高橋教授は、迅速な避難の重要性を訴えます。
(北海道大学 高橋浩晃教授)「(想定では)津波の避難を早くすれば、かなり人的被害が減ると示されているので、事前の対策の重要性が改めて示された」
道の想定では、直ちに避難する人の割合が2割から7割に増えれば、最大で5000人ほど死者を減らせるとしています。
一方でー
(北海道大学 高橋浩晃教授)「石狩より北側の地域では大きな地震や高い津波をあまり経験してこなかった。地震・津波のリスクがあることを再度確認して、着実に対策を進めてほしい」
道北の津波対策はどうなっているのでしょうか。
(金澤記者)「稚内の日本海沿岸からは美しい利尻富士を望むことができます。しかし、この美しい海が牙をむいたら、最大4000人の死者が想定されています」
これは稚内の近くで地震が起きた場合のシミュレーションです。
揺れから15分後には津波が港周辺の市街地を襲います。
マチに人が集まる夏の昼間の場合、最大4000人の死者が想定されています。
(訓練)「これはJアラートのテストです」
市の職員が確認しているのは、稚内市が全世帯に貸与している「防災ラジオ」。
Jアラートや大津波警報などを受信すると、大音量で避難を呼びかけます。
(稚内市企画総務部 大久保和彦防災主幹)「行動の源は情報なので、重要な情報を早く正しく伝えることが、今回の津波・災害に非常に有効だと思う」
海岸近くにある養護老人ホームです。
(養護老人ホーム富士見園 山内正人施設長)「いざという時は外の非常階段からも避難できるような施設になっています」
ここでは建物の3階を津波から避難するスペースとして整備しています。
施設の中には食糧のほか、おむつなどを備蓄し、長期の避難に備えています。
施設がある地区はおよそ8.7メートルの津波が6分で到達する恐れがあり、足が不自由な入所者の命をどう守るかが課題です。
(養護老人ホーム富士見園 山内正人施設長)「少しでも海抜の高いところに避難誘導することで、日ごろから訓練や研修をして周知しているところです」
施設では車椅子の人を上層階に避難させる訓練を定期的に実施。
被害が長期化した場合に備え、発電機を導入するなど災害への備えを強化しています。
(養護老人ホーム富士見園 山内正人施設長)「一度準備して終わりではなく、継続して繰り返して、訓練や備えを進めていくのが命を守るために重要だと考えている」
松前町・江良地区の堺さんです。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「売っているやつよりはずっとおいしい。ノリの厚さが違うんですよ」
海の恵みはまさに生きる糧。
その側で暮らすからこそ、津波への備えは欠かせません。
(松前町江良地区 堺繁光さん)「(津波が)2分で届くという短い時間の災害の想定を頭の中に入れて、地震が来たらどうするか心構えをしておくべき」
大きな被害が想定される日本海沿岸の地震。
命を守るために「すぐ来る津波」への対策が必要となります。
日本海側の地震の特徴は、断層が陸に近く「津波がすぐ来る」ことです。
奥尻町など最短1分で第1波が到達。
津波の高さもせたな町で最大26.9メートルに及ぶなど、多くの被害が予想されます。
大きな揺れが来たらすぐに避難する。
その意識が生死を分けることを忘れないでください。
(2025年6月3日放送)
「STVニュース」
6/4(水)14:54更新