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【命を守る】胆振東部地震から4年

胆振東部地震から4年。被災した厚真町・安平町の住民は日常の生活を取り戻していますが、改めてあのときの経験や教訓を胸に刻む一日となりました。

コスモスが揺れる厚真町の吉野地区。犠牲者を偲ぶ献花台がことしも置かれました。

(厚真町民)「無念だったろうなと。また自分がこうやって生きていられるのはありがたい。あの時の思いは心の隅に一つの傷として残っている」

コンクリートで補強され、草木が植えられた斜面。手を合わせ、祈りを捧げます。

(厚真町民)「ただの1日も忘れないよ。本当に絶対に忘れないですね」

“絶対に忘れない”あの地震から4回目の9月6日です。
2018年9月6日、北海道で初めて震度7を観測した胆振東部地震。厚真、安平、むかわの3町で発生した土砂崩れは4300ヘクタールにのぼり、穏やかな暮らしを一瞬にして飲み込みました。
さらに、道内全域295万戸が停電するブラックアウトが発生。この地震で44人が亡くなりました。

「お久しぶりです」
安平町の橋本裕理奈さんです。
ブラックアウトを経験し、当時は災害への準備が足りなかったと振り返ります。

(橋本裕理奈さん)「あの時なにも用意していなかったので小さい子がいながら。何も備蓄とかもしていないし、いま思えばもっとやっておけばよかった」

これは地震発生当日の映像です。避難所の小学校には体育館を埋め尽くすほどの人が身をよせていました。
家に帰ることができず食料や明かりを求めて集まっていたのです。自宅が半壊し当時1歳だった真花那ちゃんと避難した橋本さん。自衛隊の炊き出しにすがりました。

(橋本裕理奈さん)「こわくてずっと。あの震度6が体験したことなかったから動悸と震えが」「おいしいです、あったかい、温かいのがうれしいです]

被災地を不安に陥れた真っ暗闇。ブラックアウトは道内の電力供給の半分を賄っていた苫東厚真発電所の停止と、送電線の事故に伴う水力発電所の停止が原因と結論付けられています。

(北電防災グループリーダー 山崎達也さん)「当時は地震により発電所が相次いで停止したことによって供給力が不足し(需給と)バランスが取れなくなってブラックアウトに至った」

北電はその後、配管や送電線の耐震性を強化。さらに、2019年には石狩湾新港発電所が運転開始したほか、本州と電力を融通しあう新たな北本連系線も稼働。電力の安定供給に向けた体制強化を進めています。

(北電防災グループリーダー 山崎達也さん)「ブラックアウトの発生は極小化されたものと考えております。今後も北海道胆振東部地震の経験教訓を忘れることなく引き続き電力安定に向けた体制強化に努めてまいります

橋本家では、真花那ちゃんは5歳になり新たな命も誕生しました。橋本さんは、日頃の備えの重要性を実感したといいます。

(橋本裕理奈さん)「トイレが断水の時に。避難所でも使っていたので、こういうのあった方がいいんだなって。あの時を経験してから買いましたね」

インスタント食品におやつ、非常用トイレに乾電池。孤立しても家族が1週間以上過ごせるよう備蓄に努めています。

(橋本裕理奈さん)「子どもたちが元気でいてくれて、こういう毎日が一番だなと思いますね。直接ああいう地震を経験しないと実際用意とかはあんまり。思っていても明日やろう明日やろうで用意しないので、でもやっぱりいつ起こるかわからないからできるだけこういう機会に用意しておいてほしいですね、みんな」

震源地の厚真町ではいまだ復旧工事が続いています。河川や道路などは修復を終えましたが、森林の治山事業の進捗は4割未満。かつての姿を取り戻そうといまもたくさんの重機が稼働しています。

被災者も歩みを止めていません。

(三上敏幸さん)「スイカ作っていたんだけど全部アライグマにやられて元あったうちのほうで作っていたもんだから、いろいろ野菜はね」

三上敏幸さん68歳。「災害公営住宅」にひとりで暮らしています。

(三上敏幸さん)「見晴らしはいいよ。だいぶ元に戻りつつあるわね」

幌里地区にあった家を土砂崩れで失った三上さん。倒れた家屋に7時間以上、挟まれていたところを救出されました。三上さんは、2年間に及ぶ応急仮設住宅での生活を経て、おととし「災害公営住宅」に入居しました。

(三上敏幸さん)「わたしは地震の時のことはあんまり覚えてないからね。肩挟まったところがいつもしびれている、動くから大丈夫だけどね」

毎年この時期、瞼に浮かぶのは一緒に暮らし土砂に飲まれた弟・秀幸さんの面影。別れの言葉を言えませんでした。

(三上敏幸さん)「(仲は)悪くはなかったよ。いろいろ山菜を採りに行きました」

今月3日、胆振東部地震から4年になるのを前に開かれた追悼式。
37人が亡くなった厚真町。遺族ひとりひとりがかつてのありふれた日常に想いを馳せ、犠牲者の霊を慰めます。

(両親と祖母をなくした 中村清人さん)「突然の別れから4年の歳月が過ぎようとしており、日常を取り戻しつつあります。私たち兄弟の子どもたちも仲良く健康に成長しています。父さんたちにも見てほしかったです。生きていたらとてもかわいがってくれたんだろうと思うと残念でなりません。私たちはどんなときも応援してくれたあなたたちと、あの日のことを決して忘れません」

黄金色に輝く稲穂。厚真町ではまもなく稲刈りが始まります。

(三上敏幸さん)「短かったね、あっという間の4年だったよね。兄貴は何とか元気でやっていると」

幸せな日常を壊した地震。
愛する家族を奪った地震。
いつ起こるかわからない地震とどう向き合っていくのか。4年前の震災が問いかけています。

(2022年9月6日放送)
「どさんこワイド179」  2/9(木)12:41更新

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