SNSで瞬く間に浸透 過熱する編み物ブーム 若者たちが夢中になるワケ…初対面の人と“編み会” も

SNSをきっかけに若者の間でブームとなっている「編み物」。
同じ趣味の仲間が集まる「編み会」が開かれるなど、その熱が冷めることはありません。
なぜ若者が夢中になるのか、その背景を探りました。
「初めまして」の女性たち… 集まったワケは“編み物”
(参加者)「こんにちは。初めまして」
(参加者)「初めまして。かわいい」
(参加者)「ありがとうございます」
カフェの一室に集まった若い女性たち。
初めて顔を合わせた5人が取り出したのは、毛糸と編み針、そして制作中の編み物です。
(参加者)「行ったことあります?エスコン」
(参加者)「ないです私」
(参加者)「1回行きました」
たわいもない会話をしながらそれぞれの手は動いたまま…
みなさん、どういったつながりがあるのでしょうかー
(松尾由香さん)「SNSで告知して、集まっていただいた、みんな初めましての方同士」
(参加者)「趣味でつながれるのは、すごいなと思います」
SNSを通じて自由に編み物をする交流の場、その名も「編み会」です。
集まった女性は20代と30代。
編み物が令和の新たなカルチャーとして注目されています。
SNSで突発的に始まった“編み物ブーム” 瞬く間に若者たちに浸透
札幌市内の手芸店を訪ねてみると…
ここにも、そしてこちらにもー
毛糸を手に取る若い人が目立ちます。
そのほとんどが、最近編み物を始めたばかりだといいます。
(記者)「できたものを見せてもらえますか?」
(客)「こんな感じで花束を作りました。YouTubeで動画を上げてくれる人がいるので、そういうのを見て作りました」
(客)「終わった後の達成感がありますね」
いま、若者たちが夢中になる編み物。
(カナリヤ札幌本店 赤澤美香さん)「きっかけは韓国のアイドルの子たちが作ったり着たりということで、SNSで突発的に始まったことが大きい。編み物ブームが続いています」
これをきっかけに編み方を紹介するユーチューバーが増えています。
旭川に住む20代の女性があげた動画は39万回再生を記録、瞬く間に若者たちに浸透していきました。
(カナリヤ札幌本店 赤澤美香さん)「20代前半くらいまでの方が一番多い。こんな風に若い方が溢れてということはいままではなかったです」
毛糸の需要が高まりうれしい悲鳴 羊のマチ・士別市
編み物ブームの影響はこんなところにも。
羊のマチ・士別市です。
観光客に人気の羊からとれるのが「羊毛」です。
こちらの工房では、飼育している羊の毛を手作業でつむいでいます。
最近はウール100パーセントの毛糸の需要が高まり、うれしい悲鳴を上げています。
(めん羊工芸館くるるん 志村富美恵さん)「毎日してます。毎晩やってます。ずっと糸を作っていますね。私たちも目指していたので、若い人たちに(編み物を)作ってほしいなという思いがだんだんとSNSを通じて、ブームに火が付くとすごいですよね」
キャラクターの推し活にも 編み物の広がり
再び手芸店を訪ねると、一人の男性を見つけました。
(記者)「編み物ってしたことあるんですか?」
(客)「やったことないです」
日本のアニメが好きな韓国の男性。
編み物に挑戦する理由は「推し活」です。
(客)「ぬいぐるみの帽子を作ったり、自分でコスプレ衣装を作ったり、そういう(SNSの)投稿が多いですね。作ってみたいですね」
さらに、こちらの女性もー
(客)「ありますよ、作ったやつ。最近の流行の。被り物を作って被らせています」
(記者)「いわゆる推し活?」
(客)「そうですね、推し活ですね」
キャラクターの「推し活」にも編み物が広がっています。
編み物でストレスを軽減「デジタルデトックス」にも!
なぜ、ここまで若者たちを魅了するのでしょうか。
SNSをきっかけに2025年から編み物を始めた札幌市の長崎涼花さんです。
仕事が休みの日に、自分好みのポーチやペンケースを作ってきました。
(長崎涼花さん)「職場に持って行く小さいペンケースがほしいなと思っていたので、編んでみました」
黙々と編み物に集中する長崎さん。
編み始めてから1時間、1度もスマホを手に取ることはありません。
これが、若者がのめり込む理由のひとつです。
(長崎涼花さん)「休みの日は家で何時間も携帯を見ていたりとか、何もしないで1日終わっちゃったことが結構多くて。これはちょっとよくないなと思って。(いまは)有意義な時間を過ごせている感じがありますね」
編み物は、スマホから離れストレスを軽減する「デジタルデトックス」につながっているのです。
(長崎涼花さん)「何もしていないと考えごとをしちゃったり、結構落ち込みやすいので、(編み物は)ちょうどいいですよね」
心の余裕が奪われがちな社会で…こころを魅了する「編み物」
編み物をする交流の場「編み会」です。
徐々に作品が完成に近づいてきました。
(参加者)「かわいい~」
(参加者)「これは帽子です。同じ趣味同士の人だから、楽しめるかなっていうのはある」
(松尾由香さん)「大学3年のころにコロナが入り始めて。大半がオンラインになって、温かさとかつながりが薄れていったから、私は直接会えるイベントにこだわっている」
つながりが薄れ、心の余裕が奪われがちないまの社会。
こうした若者に編み物がぬくもりを与えていると、編み物作家の横山さんは話します。
(編み物作家 横山起也さん)「(編み物を)やっているときは嫌なことを忘れられるんです。それは逃げだけじゃなくて、そういう時間を持つことによって元気でいられる。それをみんな求めていたんじゃないかなと思う」
毛糸と編み針だけで自分らしさを表現できる「編み物」。
いまの時代を生きる若者のこころを魅了しているのかもしれません。