【社長の一問一答】「乱開発ではない」「丁寧に協議を重ね事業は継続」釧路湿原メガソーラー問題

北海道・釧路湿原周辺でのメガソーラー建設工事を巡り、釧路市との認識の食い違いが問題となっている日本エコロジーの松井政憲社長がSTVの単独インタビューに応じました。
松井社長は事業を一時中断したうえで、事業の継続を明言する一方で、釧路市が求める希少動物の再調査については、前向きに協議を重ねる考えを示しました。
松井政憲社長との一問一答(2025年9月11日取材)
Q.取材を受けた理由は?
(松井政憲社長)「事実誤認のまま評価されている点を正したいという思いがあります。事業地は釧路湿原国立公園の指定区域外で、概ね1キロメートル以上離れた開発可能エリアに位置しています。環境への影響については「無調査・不十分」との報道もありましたが、釧路市の指導・要綱に沿って専門家による調査・評価を継続し、その都度報告書や配慮案を提出しています。
一部で、調査結果や評価の解釈を巡って市との認識差が生じたのは事実です。そこで現在も、タンチョウなどの希少種に配慮した施工方法・工程の調整を、専門家の助言のもとで進め、書面で提案・修正しています。加えて、地域の電力安定化や災害に強い地域づくりに再生可能エネルギーが役立つ理由も、冷静な土台の上で、公明正大にデータと手続きの実態を伝える場として取材に応じました」
Q.批判されることをどう捉えているか?
(松井政憲社長)「地域の皆さまに多くのご心配をおかけしていることを、まずお詫びいたします。9月9日の(釧路での)取材では「事業を続行されますか?」との問いに対し、「法的な受理を経て投資・事業に入っているため、立ち止まることはできない」と申し上げました。「立ち止まることはできない」という部分だけが切り取られ、協議もせずに進めるのかという誤解を招いた点は、私どもの説明不足ですので修正させていただきます。本意は、無条件に前進するという意味ではありません。
本事業は、工事を一時停止します。停止期間は概ね1か月~1か月半を目安とし、その間に関係省庁・北海道・釧路市との協議、指導、要綱の再確認と、必要な是正の明文化・誤解を招いた点の全体経緯の説明と、今後の進め方の共有・復旧計画と追加の保護対策の具体化を進めます。再開にあたっては、協議結果と安全側の対策を確認のうえ対応します。また、議員の皆さまからご指摘のあった「社会的責任」については、対話・公開・是正でお応えします。誤解は事実で正し、懸念は対策で応える姿勢で引き続き取り組みます」
Q.苦情の数や度を超えた内容は?
(松井政憲社長)「賛否を問わずご意見に感謝しています。「釧路湿原にタンチョウも居るから環境破壊をするな」とか、多い時は100件を超える電話があり対応に追われました。建設的なご意見は真摯に受け止めます。一方で、事実誤認に基づく誹謗・業務妨害に該当するような連絡は、社員の安全・正常業務の観点からご遠慮いただきたい。事実に基づく対話が重要だと考えています」
Q.釧路で事業を計画したきっかけと理由は?
(松井政憲社長)「釧路市に限らないですが、道東は比較的積雪が少なく日照に恵まれ、平坦で広い用地が多いです。大規模な切土・盛土を伴わずに設計できるため、防災面での適合性も高いと評価しています」
Q.市は「工事開始を認めていない」と言っているが?
(松井政憲社長)「(工期の変更届出書や)ガイドラインの受理も頂き、60日後には着工して良いと確認し、工程ごとに作業は着手しています。一部で「工事を始めて良いのか?」という世論の声もあったので、再度、釧路市の環境保全課に「工事継続は可能か」と面前で確認しています。釧路市の環境保全課が太陽光(発電施設事業)の全体管理する中で、釧路市立博物館が約30項目のガイドラインのうち一部の希少種の調査を審査しますが、環境保全課と博物館で審査に対する食い違いがあったと考えています。許認可や確認が必要な作業より(工事を)先行させない社内ルールがあり、今後も徹底します」
Q.利益優先との声には?
(松井政憲社長)「採算性は事業継続の条件ですが、最優先は適法性と環境配慮です。得られる収益は保守メンテナンス・安全対策・環境モニタリング・地域対応へも再投資し、長期安定運転をめざします」
Q.釧路周辺で計画している17事業の進捗は?
(松井政憲社長)「4か所前後は、専門家協議の結果、希少種への影響が軽微とは言えない可能性があるため中断しました。その他の区画は、法令遵守・釧路市の指導に沿って段階的な実施を考えています」
Q.希少種の調査について釧路市との認識の相違は?
(松井政憲社長)「相違点は「調査手法や頻度」と「ガイドラインの解釈」です。申請当時、希少種調査の具体的な要件、方法・期間・評価の明記が十分でない部分があったと認識しています。希少種のタンチョウ、オジロワシ、キタサンショウウオは種ごとの調査をお願いされましたが、時期や方法、期間などの指導がありませんでしたので釧路市との齟齬が生じました。釧路市から紹介された専門家や調査会社に調査して頂き、環境保全課と博物館に提出し、約1週間後に受理されましたので疑義はありませんでした。
その後、調査内容が不十分と追記を断続的に言われたので、弊社としては受理後にお願いされたという認識で、食い違いと指摘を受けています。釧路市は専門家の意見を重要視していると思いますが、当初は分からなかったので、希少種への影響が軽微かだけの回答で良いかと思っていましたが、施工方法などについても意見や評価をしてもらうよう言われました」
Q.報告書に「予備調査」と表記したのは?
(松井政憲社長)「調査会社に確認しましたが、「予備」というのは予定する事業に備えるための調査で、「予備調査」は一般的な言い方で、例えばアセスメントも「予備調査」と記載するのが一般的と聞いています。「予備調査」と表記はされていますが本調査との認識です」
Q.釧路市が希少種の再調査を求めていることについては?
(松井政憲社長)「再確認という趣旨は当然と受け止め、希少種の生息実態の把握、施工・工程の是正案などを報告書で提出しています。追加で求められる合理的な調査は、前向きに実施したいと考えています。再調査の範囲・頻度・手法は専門家の助言を踏まえて釧路市とすり合わせ、結果に応じたレイアウト修正・工期調整・工法変更を行います」
Q.森林法違反の疑いについて
(松井政憲社長)「当該地一帯はもともと原野で、林班の境界判定が難しい区画が存在しました。その中で、施工業者による境界認識の誤りがあり、伐採範囲を越境してしまいました。作業を停止しお詫びいたします。所管との協議に基づく植栽等の原状回復を速やかに履行します」
Q.森林法関連の書類提出の遅れについて
(松井政憲社長)「実質的な伐採の完了は7月末であり、伐採届の期間延長届の提出に遅延が生じたことは事実です。重ねてお詫び申し上げます。今後は余裕を持った期間設定を徹底し、関係機関と連携しながら適切に対応します」
Q.事業の今後の方針と理由
(松井政憲社長)「方針は一貫して「法令遵守・環境保全・地域協働」です。関係省庁・自治体との齟齬が生じないよう丁寧な協議を重ね、事業は継続していきたいと考えています。地域の電力安定化と災害時の備えに資する分散型電源の整備という目的を守りながら進めます」
Q.「ルールぎりぎりではなく、社会的責任を」との指摘については?
(松井政憲社長)「議員から指摘のあった「社会的責任」については、対話・公開・是正で応えます。「説明を続ける」という姿勢です。再生可能エネルギーは、地域の暮らしと産業、将来世代のために必要不可欠な社会的責任そのものです。必要だから続ける。ただし一方的には進めません。誤解は事実で正し、疑問に答え、必要に応じて計画を修正する。この積み重ねこそが、私たちの社会的責任と考えています。今回の問題は、再エネの必要性と現場での配慮を皆さんと共有し、共に考える機会だと受け止めています」
Q.規制を強める条例適用前の「駆け込み」との指摘については?
(松井政憲社長)「駆け込みの意図はありません。本件は現行法令のもとで受理された案件です。新しい条例を尊重しますが、事後的に適用しない形で、丁寧な運用をお願いしたいと考えています。重要なのは、対立ではなく調和と考えておりますので、合理的な追加対応は協議のうえ実施してまいります」
Q.自然保護と再エネ事業の両立については?
(松井政憲社長)「「無調査・乱開発」ではないことを明確に申し上げます。無秩序な開発ではなく、地域と共生する再エネを目指していきます。暮らしに必要な電力は、脱炭素も重要な課題です。再エネに志を持って働く社員・関係事業者・家族の安全と尊厳を守るためにも、建設的な議論を重ねていこうと考えています。国民にとって重要な電源を、どこで、どう作るかは、地域の実情を踏まえて決めることが必要で、自然保護と再生可能エネルギー事業の両立やバランスについて引き続き考えていきたいと思います」