中国では監視員を配置「言ったらクビになる」スキー場運営会社の“ずさんな安全管理” 小樽5歳児死亡事故
北海道小樽市のスキー場で12月、5歳の男の子がエスカレーターに挟まれ、死亡しました。
今回、製造元である中国のスキー場を取材。
さらに複数の証言から運営会社のずさんな安全管理体制が浮かび上がってきました。
5歳児死亡 スキー場の元関係者が抱いていた懸念
中国・河北省にあるスキー場です。
子どもから大人まで多くのスキーヤーが利用していたのが、ベルトコンベヤー式のエスカレーターです。
河北省の関係機関がSNSに投稿したこの動画では、エスカレーターの安全性についても紹介していました。
「ものが挟まったら緊急停止します」
しかし、同じメーカーのエスカレーターで痛ましい事故が起きました。
小樽市の朝里川温泉スキー場で12月28日、札幌市東区の後藤飛向くん5歳がエスカレーターに右腕を挟まれ死亡しました。
飛向くんの死因は窒息死で、腕とともに衣服も巻き込まれ、首を圧迫したとみられています。
(スキー場の元関係者)「もしあなたがスキー靴を履いてあの上で、ちょっと傾斜がありますから、立って荷物を持っていたとしたら、バランスどうですか。あれを(エスカレーター)つけるとしたらまず反対でしょうね」
こう話すのは、エスカレーターを利用したことがあるスキー場の元関係者です。
抱いていた懸念は、現実のものとなりました。
(スキー場の元関係者)「(エスカレーターの)中間で転んでも痛いくらいで済むけども、ああなったらどうにもできなくなっちゃうから」
「手で止められれば…」監視員は配置されず
飛向くんは当時、駐車場とゲレンデを結ぶエスカレーターに乗っていましたが、終点付近でしりもちをつき転倒。
仰向けのままローラーとベルトの間に右腕が巻き込まれました。
当時、母親は飛向くんから少し離れた後ろの方にいて、降り口にある緊急停止ボタンを押しに行きましたが、手遅れでした。
(設備担当の従業員)「乗ってきた客がここで何らかの理由で引っかかった場合に、こちらのふたがここまで開くと非常停止で止まります。中はこういう状態で、ベルトについている雪をブラシがはらう」
(記者)「ここに腕が挟まった?」
(設備担当の従業員)「ここのところに入っていました」
運営会社は、朝の点検でエスカレーターに異常はなかったとしていますが、当時、非常停止装置は作動せず、監視員も配置されていませんでした。
適切な安全対策はとられていたのか、それとも製品自体に欠陥があったのでしょうかー
(スキー場の元関係者)「いまの時代になっても、機械は99パーセント(信用できる)かもしれないけど、あとの1パーセントというのは人ですよ。転んだ段階で(監視員が緊急停止ボタンを)手で止められれば、あの事故はなかったと思いますね」
「監視員必要」と明記…製造元・中国のスキー場の利用状況
十勝の新得町にあるスキー場です。
小樽のエスカレーターと同じメーカーのものを導入しています。
(百瀬記者)「こちらのエスカレーターは非常に緩やかな傾斜になっていまして、ガタガタという機械の揺れもほとんど感じることはありません。降り口付近には監視員の方もいるため、転倒などがあったときはすぐに運転を止めてくれるということです」
このスキー場では毎朝、営業前に安全装置の点検を実施し、営業中も2時間おきに点検しています。
エスカレーターは異物などが挟まったときに緊急停止する仕組みですが、監視員の配置は必ず必要だと話します。
(十勝サホロリゾート電気主任技術者 増子幸一さん)「途中で転ぶ方、乗るときに転ぶ方、降りたときに転ぶ方がいますので、そういうときは止めます。保安装置がきかなかったら、係員がいないと止められないじゃないですか。どんなにいいものでも故障するし、動かないときもあると思うが、そのときは人間の目で見てエスカレーターを止めることが第一原則です」
私たちは、実際に製造元である中国のスキー場を訪れ、同じメーカーの利用状況を取材しました。
(記者)「出口にも監視員の方いますね」
さらにー
(記者)「いま監視員がちょっと注意しましたね」
中国では細かい点検内容や注意事項が共有されていて、監視員の配置も徹底していました。
じつは、中国では公的機関がエスカレーターの設置基準を設けています。
そこには「入り口と出口、それぞれ1人ずつの監視が必要」と書かれていました。
そのため、メーカー側のマニュアルにも監視員の配置が必要だと記されています。
“ずさんな安全管理” 過去にも重傷事故
一方、日本の場合、スキー場のエスカレーターは建築基準法には該当せず、安全基準などが義務付けられていませんでした。
つまり、安全管理は運営会社任せとなっていたのです。
エスカレーターの導入後、小樽のスキー場で働いていた元従業員は、さらなる事故の要因を証言します。
(スキー場の元従業員)「怖い部分はやっぱり子どもだったら降りるところだと思う。ふたの部分がすっぽり開いていて、スキースクールの子どもたちが中に入って遊んでいるのを注意したこともあります」
今回、なぜふたが開いたのかはわかっていませんが、これまでに子どもの衣服や足が引っかかるケースがあったということです。
そのため、このエスカレーターは右側から降りる運用になっていました。
スキー場では過去にも重傷事故があったことから、監視員の配置を検討していたものの、対策はとられていなかったのです。
(スキー場の元従業員)「(監視員が)いたらすぐに助けられた。みんな言っていますね。(事故が)起きると思っていたと。ただやっぱり、誰も言えなかったんでしょうね」
(記者)「それはなぜ?」
(スキー場の元従業員)「やっぱり、言ったらクビになるとか、やめさせられるとか。人の意見を聞き入れる会社ではない感じ。だから結局は、やり方についていけない人は辞めていく感じ」
さらに、事故の前日にエスカレーターを利用した人からはこんな証言もー
(事故前日に利用した客)「小学5年生の息子と一緒に使ったとき、エスカレーターが行ったり来たりしていて、従業員の方も静止できないから「やっぱりだめだな」とつぶやいていて」
(山岡記者)「道警の捜査員5人ほどがスキー場の施設内に入っていきます。これから家宅捜索が始まります」
警察は業務上過失致死の疑いで運営会社に家宅捜索に入るなど、本格的な捜査に乗りだしています。
複数の証言から浮かび上がってきた、ずさんともいえる運営会社の安全管理。
悲劇を繰り返さないためにも徹底した原因究明が急がれます。