「遺族に謝罪の言葉を述べるも、他責的な発言がある」「本件の主犯である」特定少年に無期懲役の判決 《判決理由・詳細》
北海道江別市で2024年、男子大学生が男女6人から集団暴行をうけ死亡した事件の裁判員裁判で、札幌地裁は2026年8月7日、強盗致死などの罪で起訴されていた当時18歳の特定少年の川口侑斗被告に無期懲役、当時17歳の少年に懲役30年を言い渡しました。
強盗致死などの罪に問われているのは、主犯格とされる川口侑斗被告と当時17歳の少年です。
判決によりますと2人は2024年10月、江別市の公園で長谷知哉さん(当時20歳)と交際していた八木原亜麻被告や川村葉音被告らと共謀し、長谷さんに暴行を加えて死亡させたうえ、現金やカードを奪うなどしました。
札幌地裁は、川口被告の判決理由について次のように述べました。
【川口被告について】
被告人川口は、被害者と共犯者八木原との交際トラブルとは、何ら関係がなかったのに、被害者と通話をして、被害者がいる江別市へ向かうことを独断で決め、本件公園到着後には、率先して被害者と直接やり取りをする中で、早々に被害者への暴行を開始し、他の者がほとんど暴行に及んでいない状況で、自ら数十回にわたり被害者を殴る蹴るといった暴行に及び、金品の要求をも始めている。
また、被告人川口は、終始自ら暴行を加えるだけでなく、暴行に加担していなかった当時17の少年及び当時16歳の受刑者の少年を暴行へ誘引したり、共犯者滝沢に対して再度飛び蹴りをするよう求めたり、被害者を全裸にして頭髪等へ火をつける、暴行を受けている場面などの動画を撮影するといった残忍な行為を提案したりするなどして暴行をエスカレートさせている。
金品奪取の点についてみても、身勝手な理由で金品要求を開始するや、共犯者の発言を受けつつも、主に自ら被害者とやり取りをしながら、現金やカード等を執拗に要求し、10数える間にカードの暗証番号を言わなければ当時17の少年に暴行させるなどと被害者を脅迫し、被害者が暗証番号を言うまで繰り返し当時17の少年に暴行させるなど主体的に犯行に及び、最終的には被告人川口が「めし行くぞ。」などと言ったことが、本件犯行の終了につながったものとうかがわれる。
さらに、被害者から奪った2000円や、同人のクレジットカードで購入した煙草20箱を取得したほか、同人から奪ったキャッシュカードを用いて引き出した現金12万7000円の分配を決め、自身はそのうち9万円と利益の大半を取得している。
加えて、犯行後には当時17の少年と共に被害者のスマートフォンを破壊し、衣服や持ち物を川に投棄するなどの証拠隠滅行為に及んでいる。
以上のことからすれば、被告人川口は、本件犯行全体を通じて終始共犯者を主導して本件犯行に及んだものというべきであり、本件の主犯であるとの評価が相当である。
被告人川口による暴行の回数や程度は、当時17の少年と並んで他の共犯者と比べて圧倒的に多く、特に出血の多かった頭部、顔面への暴行も認められる。
加えて、被告人川口に次いで暴行回数の多い当時17の少年を暴行に誘引し、全てではないものの個々の暴行の指示もしていることをも考慮すると、死亡結果への寄与も大きい。
被告人川口は、被害者と共犯者八木原との交際トラブルを解決しようとしていたとするが、本件公園到着後は両者の話を十分に聞くこともなく早々に暴行に及んでいるのであって、経緯に酌むべき事情はない。
また、当時16歳の受刑者の少年と共に、自ら警察署に出頭しているものの、両人を除く共犯者ら全員が既に出頭しており、早晩犯行の発覚が必至な状況であったのであるからこの点を酌むことはできない。
被告人川口の難聴や軽度知的障害、これらに対する適切なサポートを受けることができなかったことが、被告人川口が自身の複雑な感情を暴力に発展させる行動パターンを獲得するのに一定程度影響したことは否定できないものの、家庭内で暴力行為に及んでいた形跡はないこと等に照らし、暴力を振るう相手や状況を選んでいたことがうかがわれ、結局のところ暴力という手段を選択するか否かは被告人川口が自ら決定していたものと考えられる。
そうすると、前記の諸事情が本件に与えた影響は限定的であり、これを被告人川口のために大きく考慮することはできない。
また、被告人川口は、当公判において、被害者や被害者遺族らに対する謝罪の言葉を述べるものの、自らの行動の要因を他者に求めるなど他責的な発言があり、自身の行為が及ぼした影響や、自身の内面的な問題について理解を深めることはできておらず、自らの犯した罪に十分に向き合うことができているとはいい難い。
以上のことからすれば、若年であることなどを最大限考慮しても、本件事案の悪質さや終始犯行を主導し、被害者の死亡にも大きく寄与した被告人川口の責任の重さからすれば、検察官の求刑どおり、無期懲役に処するのが相当である。
※STVでは今回の裁判の「特定少年」について、事件の重大さや社会的影響などを総合的に判断し、実名で報道しています。
