【密着】4か月でプロの道へ なり手不足のすし業界 下積み期間短縮!職人育てる老舗の挑戦 小樽市
「飯炊き3年、握り8年」。
すし職人の世界では長い修業が当たり前とされてきましたが、短期間で技術を身につけられる道場が小樽のすし店に開設されました。
その門をたたき、自らの夢に挑む女性に密着しました。
「飯炊き3年、握り8年」すし職人の世界
職人が手際よく握る日本の伝統料理「すし」。
創業89年を迎える老舗の「おたる政寿司」です。
熟練した職人の技と…
(職人)「ホッキ貝。いきますよ!」
巧みな演出が寿司の味わいを一層引き立てます。
(客)「おいしい」
(客)「めちゃくちゃおいしいです」
そんな多くの客でにぎわう店の奥では…
黙々と魚をさばく職人の卵たちがいました。
すし職人を養成する「政寿司道場」の門下生・安藤さんと坂野さんです。
(おたる政寿司 伊藤信夫師範)「この切っ先が背骨の内側にきちんと入っている。身のところに骨の跡が斜めについています。これが的確に包丁が入った証拠です」
包丁で骨の形を感じながら刃を入れますが、これがなかなか難しいんです!
(坂野佳子さん)「やった、これ。『滑らかに骨に沿って』と伊藤さんに言われるんですけど、力が入っちゃうんですよね。(力を入れてしまうと)骨を切っちゃうので。あとで苦労して骨を取らなきゃいけない」
安藤さんは、店の実力と個性が出ると言われる「たまご焼き」に挑戦。
(安藤彩さん)「はりついています」
(おたる政寿司 伊藤信夫師範)「ちょっと修正しましょうか。きょう卵液2つ目入れるのが少し多かったかもしれない。だから少し半熟気味になってくっついていますから」
焦げ目のないきれいなたまご焼きを作るにはこまめな火加減の調整も必要です。
「飯炊き3年、握り8年」ともいわれるすし職人の世界。
弟子入りから一人前の職人になるまでには、長い修業期間が必要でした。
修業期間を短縮!わずか4か月で「すし職人」に
しかし、「政寿司道場」では、下積み期間を短縮し、わずか4か月間で「職人」としての必要な基礎を叩き込みます。
すし職人で道場主の中村副社長です。
道場を立ち上げたきっかけは、職人のなり手不足にありました。
下積みが長く、厳しい世界というイメージが若い料理人に敬遠されていると中村さんは話します。
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「(道場では)短期間で集中してスキルを覚える。若い人たちが活躍している姿が見えるということが、なり手を増やすのに大事じゃないかなと思いました」
(おたる政寿司 伊藤信夫師範)「いきますよ!ではよ~いスタート。始めてください」
始まったのは、3分間で10貫を握るタイムトライアル!
手の感覚を頼りに1貫18グラムを目指します。
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「(重さが)バラバラだと味のばらつきにつながる。きれいで早いを目指していかないと」
道場生の安藤さん、シャリの重さは狙い通りでしたが、ある課題を指摘されました。
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「ここでしっかりと作ることね、コメ。このあとにまた足しているから」
一度握ったあとにシャリを足すことは見栄えや仕上がりを損なうため、ご法度とされています。
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「まず手水つけて、両手やってポンってやって、ある程度シャリが握れるとこまできたら、ネタを持って。(手を)洗ってふきんでいい感じの(冷たい)手にしていくっていうのが。そのコントロールだからすし屋は。手のコントロール」
次は、巻物の練習です。
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「あ、ダメだ、ちょっとやっぱりシャリの量が多い」
シャリを敷きすぎて、うまく巻くことができませんでした。
海外で和食の人気高まる「すしが握れると評価される」
(安藤彩さん)「いただきます」
ここで、まかないを食べて一休み。
(安藤彩さん)「実際の現場なので臨場感があってすごく勉強になります」
東京の外資系企業に勤めていた安藤さんは、会社の倒産を機に一念発起。
海外で働きたいという夢をかなえるため、日本食レストランへの道を選びました。
(安藤彩さん)「日本人で飲食店に働くとなった場合、すしの技術を身につけておいた方が絶対有利だろう。ただの出稼ぎ労働者ではなくて、ちゃんとスキルを持って現地にも貢献できるような何かを持って行った方がいいなと思った」
海外では和食の人気が高まり、日本食レストランの数が急激に増えています。
2025年に政寿司道場を卒業し、イタリアの5つ星ホテルなどで働く、すし職人の篠原舞さんもその人気を実感しています。
(篠原舞さん)「すしって言うとスーパーにもいま売っていますから、冷凍のやつ。若者にも人気なんですよね」
一方で、すしを握れる職人は不足しているといいます。
(篠原舞さん)「ご飯と魚があれば作れるのに誰も作れない。もう海外では日本人、すしが握れる、すごい評価されますよ」
すし職人をめざす安藤さん。
いよいよ最終試験の日を迎えました。
(安藤彩さん)「心配な点…最後のヤマ。巻物。ちゃんとできるかなってドキドキです」
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「じゃあ最終試験を始めます」
(安藤彩さん)「はい」
最終試験では中村副社長を前に一人前のすしを握ります。
練習では1回でシャリをまとめられませんでしたが…
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「いいよ、手はすごい。プロっぽい感じの動きにはなっているよ」
そして、一番不安だった巻物です。
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「あんまりね、ペタペタペタペタやると美味しくなさそうに見えるから」
厳しい指摘も飛びましたが、しっかりと巻くことができました。
緊張しながらも心を込めて握った一人前の完成です。
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「うん、うまい、うまい。ふんわり握れている。全然お金を取れる商品にはなっていると思うから。たぶんドイツに行っても大丈夫だと思います」
プロの厳しい基準をクリアし、見事最終試験に合格しました。
(安藤彩さん)「ここまで頑張ってきてよかったと思います。ここで学んだ技術を最大限に活かして、今後につなげていきたいと思っています」
(おたる政寿司 中村圭助副社長)「うちですしの勉強をして世界で活躍するというのに関わるということが、それができることがすごい幸せだなと思います」
職人のなり手不足という課題を抱えるすし業界。
新たな育成の取り組みが、伝統の技を次の世代へつないでいきます。