魚離れに抗う!鮮魚店が取り組むユニークな工夫とアイディア あの手この手で食卓に魚介を届けたい…まちの魚屋の想いと挑戦

ランチ限定の海鮮丼に108円均一の「寿司バイキング」。
対面販売が売りのマチの鮮魚店がユニークな取り組みを始めています。
「魚離れ」が進む中、試行錯誤を続ける鮮魚店を取材しました。
海の幸がふんだんに敷き詰められた豪華な海鮮丼。
北海道内産の活ツブやボタンエビも!
10種類を超える魚介がどんぶりを彩ります。
(根本記者)「一口食べただけで魚も貝も口の中に入ってくる、非常に凝縮された1品です!」
ここは一見、レストランかと思いきや…
(根本記者)「実はこの海鮮丼、閑静な住宅街のなかにあるこちらの鮮魚店のなかでいただくことができるんです!」
その店構えから、インターネット上では「隠れ家」とも呼ばれている、札幌市豊平区の「魚勝 青野水産」です。
店頭にはブリやタイ、旬のニシンなどが所狭しと並んでいます。
さらに、カレイの煮つけや揚げ物。
幅広い品ぞろえが自慢です。
「買い物の仕方ががらっと…」現場が感じる”魚離れ” 魚介を直接届けることでおいしさをアピール!
経営しているのは、この道およそ20年・堀崎誠さんです。
堀崎さんはある変化を感じていました。
(青野水産 堀崎誠代表)「10年前と比べるとやり方も客の買い物の仕方もがらっと変わった」
魚が食卓から遠のく、消費者の「魚離れ」を実感しているといいます。
(青野水産 堀崎誠代表)「魚離れをしたくてしているわけではないと思う。価格の問題であったり、魚を焼いて煙を出してはいけないなどの条件があったり」
そこで、魚のおいしさを直接知ってもらおうと設けたのが、鮮魚コーナーの奥にあるイートインスペースです。
平日のランチ限定で完全予約制となっていますが、連日満席が続く人気ぶり。
海鮮丼のほか、ホタテやマグロなどが入ったボリューム満点の刺し身定食も味わえます。
(客)「おいしいです。期待通り。もう何回も予約の電話してダメだった。今回初めて来られた」
(客)「活きが良いのが見られてすぐ食べられるので良い」
(青野水産 堀崎誠代表)「鮮度の良い本当においしいものというのはこういうものなんだよっていうのはやはり専門店の鮮魚店でしかできないと思っていますので、しっかり提供していくということはやはり心がけてやっていきたいなと思っています」
フォロワーは3万人超え!ユニークなスタイルで若い世代を惹きつける魚屋
若い世代にも関心を持ってもらおうと工夫を凝らす店があります。
札幌市東区にある一和鮮魚店です。
ショーケースの写真をSNSに投稿して、いざ開店です!
すると、開店と同時に客が訪れ、あっという間に店内は人であふれかえっていました。
お目当ては日曜限定の「お寿司バイキング」。
本マグロの握りにイクラの軍艦。
どれもこれも108円均一とお手ごろ価格です。
商品を紹介するユニークなポップも買い物客の目を引きます。
さらにー
(店員)「金目鯛!マイケルと友達になればなんと1188円ですよ!」
(客)「マイケルなの?友達になったる!」
(客)「友達!イエーイ、マイケル!」
(客)「じゃあね、マイケル!」
こうしたスタイルがSNSで注目され、インスタグラムのフォロワーは3万5000人にも上ります。
(一和鮮魚店 木島和哉代表)「だいたい35~40歳くらいの人が(SNSを)見て来てくれている。その年代は子育てをしているので、そういう人に伝えるのはすごく大事」
たしかに家族連れや若いカップルが多く見られました。
(客)「マイケルと友達になりました。なってほしいと書いていたので!せっかくなら友達になってあげようかなと。スーパーだと絶対ないので楽しいですね」
(客)「近所にそんな有名な店があると思っていなかったので通おうかなと」
札幌市内で50人に質問!「1週間で何日魚を食べる?」
実際、マチの人は週にどれくらい魚を食べているのでしょうか。
(マチの人)「どうしても子どもにあわせて(魚より)肉になるかも」
(マチの人)「手間がかかるので食べづらい」
(マチの人)「3日以上食べています。筋トレしていて魚のたんぱく質が良いと聞いて、結構食べるようにして頑張っています」
50人に質問したところ、週に2日以下と答えた人が7割以上に上りました。
これは、わたしたちが1年間に食べる魚と肉の量の推移です。
魚は2001年度をピークに右肩下がりが続き、2011年度には肉類に逆転されました。
専門家は働き方の変化が影響していると指摘します。
(大東文化大学経済学部 山下東子教授)「専業主婦がたくさんいた時代と違ってみんな働き始めている。魚は腐りやすいので、きょう買ってきたらきょうしか食べられない。忙しいから当用買いできなくなっている」
購入した後までフォロー!料理例まで発信する夫婦経営の魚屋
家庭でもっと魚を食べてもらいたい。
そう取り組む鮮魚店が札幌市白石区にあります。
阿部さん夫婦が切り盛りする「北の貴辰」です。
(阿部正美さん)「2回目!ありがとうございます!きょうは何かお探しでしたか」
(阿部貴史さん)「サクラマスは?バター焼き、ムニエル、フライ!」
客とのコミュニケーションを大切にしている阿部さん夫婦。
夕方、妻の正美さんが営業中の店を後にしました。
車で向かった先は…自宅のキッチンです。
店から持ち帰った魚の切り身を取り出すと…
(阿部正美さん)「きょうは旬のサクラマスでフライを作ります。サクラマスは身が柔らかいので崩れないように、フライの方がしっかりしまるかと思って」
下味をつけた切り身にパン粉をつけて180℃の油で揚げれば、いまが旬のサクラマスのフライが完成。
すると正美さん、盛り付けたフライの写真を撮り始めました。
(阿部正美さん)「きょうはバッチリ」
その写真がこちら!
魚の特徴や料理例を紹介して、家庭での献立のヒントにしてもらおうという取り組みです。
(阿部正美さん)「献立を考える役に立てるかなと思って午前中に出しています。人と人とのつながりを持てるのが個人の魚屋。実物を見てもらう楽しさもありますし、そういうところから魚に興味を持ってもらえたらとてもうれしい」
魚離れを食い止めようと奮闘するマチの鮮魚店。
ユニークな発想と対面販売の魅力を活かして食卓に魚を届けます。