自然遺産登録から20年 事故の影響残る観光のいま…地元が目指すマチのにぎわい【知床観光船沈没】
世界自然遺産の登録から2025年で20年。
知床観光のいまを取材しました。
遅い春を迎えた知床。
観光スポットの「知床五湖」はまだ雪景色ですが、早くも全国から観光客が訪れています。
(兵庫から来た人)「知床の雪が積もっているところが見たくて来ました」
(旭川から来た人)「安全なところを歩いているのでクマいないかなって。すごく近くに生き物が感じられるのが楽しい」
取材中のカメラの前に現れたのは、親子とみられるヒグマ。
知床にはヒグマやオジロワシなど希少な野生動物が数多く生息しています。
(当時の羅臼町長)「ありがとうございます!」
ちょうど20年前、知床はユネスコの世界自然遺産に登録されました。
それを契機に斜里町には多くの観光客が訪れましたが、2020年の新型コロナの影響で客足が減少。
さらに、観光船の沈没事故が発生し、観光客の数は思うように回復していません。
斜里町ウトロ地区で45年、ツアーガイドをしている綾野雄次さんです。
(星の時間 綾野雄次さん)「ここは子グマが登った跡。枝のないところは爪で登ります」
(ツアー参加者)「クマって爪4本?」
(星の時間 綾野雄次さん)「5本あるけどね、まるいものには3本か4本しかつかない。5本つくのは滅多にないね」
(星の時間 綾野雄次さん)「流氷が作った特殊な崖ですね」
綾野さんは事故があった日、KAZUⅠとみられる船を目撃していました。
(星の時間 綾野雄次さん)「僕が見たのは事故じゃなくて、まだ元気な人たちの姿なので、あとで報道で見て、そうだったのかなって」
観光船事故で「負のイメージ」が広がった知床の体験観光。
事故から3年が経ち、回復の兆しが見えてきているといいます。
(星の時間 綾野雄次さん)「知床に行くと言ったら、危ないからやめろって親戚に言われたという人が結構いたんです。お客さんの反応としては、もうほぼ話題にならないですね。本州から来た人、海外から来た人たちにとっては意識にないというか、もう普通の観光地になっていますね」
(店員)「失礼します、かき揚げです」
知床産のツブが入った人気のかき揚げ丼。
(客)「ツブとかエビの食感とかもすごい残っていて、あとはタレがご飯とマッチしていてすごく美味しかったです」
斜里町の飲食店では、銀ガレイの味噌焼きやウニやイクラがたっぷりのった海鮮丼が看板商品。
地元の食材をいかした料理を提供しています。
(しれとこ里味 吉野英治さん)「言葉には表せないような事件だったので、自分たちは地元としては見守るしかなかった」
コロナ禍や観光船事故の影響が続いた数年間は、地元客に支えられながら乗り越えてきましたが、2024年から徐々に外国人観光客が増加。
2025年は国内の予約も順調に入ってきているといいます。
(しれとこ里味 吉野英治さん)「人口も減ったり、観光の業者も減りつつある中で、いま残された自分たちが頑張って、これからの知床の観光を盛り上げていきたいなと思っています」
(HOTEL BOTH 丹羽慎さん)「これがバンガロー」
(北本アナウンサー)「いつできたんですか?」
(HOTEL BOTH 丹羽慎さん)「3か月前くらいかな。木材も木目の多いところを見せて木と調和したような」
斜里町の丹羽慎さんです。
観光船事故の後、就職先の東京から地元に戻り、ホテルをオープンさせました。
今シーズンは新たに4棟のバンガローを建設しました。
(HOTEL BOTH 丹羽慎さん)「コロナや事故を経て、盛り上がっていないという情報で戻ってきた僕は、追い風かのようにこの3年間、いろんな方に支援いただいて、知床をまた盛り上げようという声がマチ以外からもいただいて、よりよくしようという姿勢で進んできたので、お客さんが戻ってきてくれた」
宿泊客は当初のおよそ2倍に増えました。
ホテルのレストランは宿泊客だけではなく、地元の人がくつろげる憩いの場にもなっています。
(地元客)「若い人が一生懸命素敵なところを作ってくれて、私たちも癒されて。うれしいですよ」
丹羽さんは新たに「釣りガイド」にも挑戦。
町内の観光業者とともに知床の魅力を伝えていきたいと考えています。
(北本アナウンサー)「今後どうなっていきたい?」
(HOTEL BOTH 丹羽慎さん)「僕自身ちょうど30歳で若いと言われる年齢なので、活力ややる気を全面的に出して、マチの中心にたてるように。世界自然遺産登録のあの時の思いは幼少期ながら覚えているので、あの時みたいに、どこに行っても客がいるようにしたい」
観光船事故から3年。
地元の人たちは力をあわせて、かつてのにぎわいを取り戻そうと努力を続けています。