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帽子を薄く…“1枚2円節約” 手術の現場も直面する経営難 厳しさ増す地域医療のいま 北海道

巨額の赤字を抱える市立室蘭総合病院が2027年度末で閉院する方針となり、市民に衝撃が走りました。

物価高などで経営環境が厳しさを増している地方の公立病院の現状を取材しました。

複数の診療科を受診 病院がバラバラになると…「体がきつい」

北海道室蘭市に暮らす澤田さん夫婦です。

月に2~3回、近くの市立病院に通っています。

(記者)「すごい量ですね」

(澤田雅子さん)「先生が90何日分くれるんです」

夫婦は神経痛や高血圧などいくつかの持病を抱えていて、複数の診療科を受診しています。

車がないため、市立病院が閉院となれば負担は大きいといいます。

(澤田雅子さん)「市立病院で全部お世話になっていたので、(病院がかわって)あちこち行くのはちょっと体がきついという不安は感じている」

(記者)「通うのは大変?」

(澤田廉三さん)「大変になってきますね」

年間14万人以上の外来患者が訪れる市立室蘭総合病院です。

内科や外科のほか救急センターも担う総合病院で、長年にわたり市民の命を守ってきました。

しかしー

(室蘭市 青山剛市長)「深刻な市立病院の経営状況を踏まえ、令和9年度中をめどに製鉄病院への機能統合を目指す。統合後、室蘭市病院事業は会計閉鎖をする」

2月、青山市長は市立病院を閉院する方針を表明しました。

医師不足や患者数の減少に歯止めがかからず、今年度はおよそ23億円と赤字の拡大が深刻化しているからです。

さらに、室蘭特有の事情が背景にあります。

市内には3つの総合病院があり、室蘭だけでなく西胆振地域およそ16万人の医療の受け皿となっています。

しかし、室蘭市の人口はピーク時の16万人から半分以下にー

商店街には空き店舗が目立ちます。

市立病院の近くにあるすき焼き店です。

名物の豚肉を煮た肉鍋を目当てに、患者や職員が訪れるといいます。

(乃ざ喜 店主 野村昌孝さん)「人が全然歩いていないので、店舗の数もどんどん減って、商店街としては元気がない感じ。(閉院で)客足が減ってしまうのではないかという懸念はある」

今後も人口減少が見込まれる室蘭市。

地域医療を守るために、3つの病院の再編議論が進められてきたのです。

市立病院の一部の機能は、製鉄記念室蘭病院に統合されます。

(製鉄記念室蘭病院 前田征洋院長)「(製鉄病院は)脳神経外科領域に関してはぜい弱な診療体制で、機能を統合できれば地域において本当の急性期の拠点病院が作れる」

製鉄病院には脳神経外科など高度急性期・急性期医療を統合。

慢性期などは日鋼記念病院を中心に受け入れることが決まっています。

(製鉄記念室蘭病院 前田征洋院長)「地域に必要な医療は今後もきちんと保持・維持していきたいと思っているし、みんなその使命に燃えてやっている」

巨額の赤字を税金から補填してきた室蘭市。

2028年3月に市立病院を閉院する方針です。

道北地域の基幹病院は…「ことしは12億を超える赤字幅」

人口2万4000人の名寄市です。

マチの中心部にあるのが、名寄市立総合病院です。

病床数は349床、職員の数は768人という道北地域の基幹病院です。

この日、稚内から患者が運ばれてきました。

心臓の病気が疑われ、すぐに処置室へ運ばれます。

病院では救急と地域の医療を担っていますが、厳しい経営状態が続いています。

(名寄市立総合病院 眞岸克明院長)「去年が9億8000万円の赤字で、ことしは12億を超える赤字幅」

医師は経営難にどう向き合っているのでしょうか。

(名寄市立総合病院 大橋了輔さん)「体調どうですか?」

(患者)「大丈夫です」

消化器外科の大橋了輔さん、4年目の若手医師です。

(名寄市立総合病院 大橋了輔さん)「外科は手術中の材料費、道具や糸が経費としてかかるので、出来る限り安い道具を使ったり、1個1個安くしかも無駄もなく経費を削減するようにしている」

手術室に向かう大橋さん。

始めたのは、お腹に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術です。

年間250回程度行われるこの手術では、使い捨ての超音波メスが使われます。

費用は3万2000円ほど、国からの診療報酬では足りていないといいます。

(名寄市立総合病院 大橋了輔さん)「3万円分しか国からの補償がないので、やればやるほどこの器械に関しては損が増える。外科の中の一番損をしている部分」

物価の高騰で医療機器や医薬品のほか、光熱費や人件費などが軒並み上昇。

支出は膨らみ続けています。

そのため病院をあげて経費節減に取り組んでいます。

年間に2万個以上使うという手術用の帽子。

以前は手がうっすらと見えるものでしたが、いま使っているのはかなり薄手で、1枚当たりおよそ2円の節約になるといいます。

(名寄市立総合病院 小松和恵さん)「機能を果たせば問題ないので、材料の見直しをしている」

細かな経費節減を進めていますが、診療科によって限界はあるといいます。

(名寄市立総合病院 眞岸克明院長)「周産期医療は常にスタッフを揃えておかなくてはいけないので、人的コストに見合ったものになっていない」

病院での出産はここ10年で半減。

2025年は200人を切りました。

それでもスタッフを常駐させなくてはならず、コストがかかります。

しかし、出産できる病院がない宗谷やオホーツク管内から通院する妊婦もいて、道北地域の周産期医療の中心を担っています。

(名寄市立総合病院 眞岸克明院長)「(病院が)なくなると道北地域の住民の生活が脅かされてしまうので、何が何でも守り切らなければならない」

市立病院が抱える13億円の赤字を市の予算から捻出しなければならない名寄市。

加藤剛士市長は強い危機感を口にします。

(名寄市 加藤剛士市長)「来年度も同じような状況になると、名寄市本体の事業にも影響を及ぼすことになる。これまでにも増して国からの支援がなくては病院を維持していくことは難しくなってしまう」

専門家は、地域医療を支える仕組みづくりが必要だと指摘します。

(小樽商科大学ビジネススクール 藤原健祐教授)「(国は)地方が担っている地域を守るためにかかるコストを、診療報酬などで適切に評価する仕組みが求められるのではないか」

厳しい経営環境にさらされる公立病院。

住民の命を守るため、地域医療のあり方が問われています。

03/28(土) 07:23

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