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「人を思う気持ちに戻れなかった」2人死亡の放火殺人事件 被告の男…きょう判決へ 札幌地裁

北海道北広島市の生活困窮者向けのアパートで2022年9月、2人が死亡した放火殺人事件の裁判員裁判で、殺人と放火の罪に問われている男にきょう(9月17日)判決が言い渡されます。

殺人と放火の罪に問われているのは、荻野正美被告70歳です。

起訴状によりますと、荻野被告は2022年9月、北広島市の生活困窮者向けのアパートの自室に火をつけ、管理人の男性と入居していた女性を死亡させた罪に問われています。

この裁判では、荻野被告に責任能力があったかどうかが争点となっています。

検察は懲役30年求刑 弁護側は無罪主張

検察は、荻野被告が犯行時に、放火後のことを考えてキャッシュカードをポケットに入れていたことや、靴を履き替えたあとに火をつけたことなどを指摘。

「精神疾患の影響はあったものの限定的で、自身にブレーキをかけながら目的のために行動していたことから、最終的な意思決定の自由は残っていた」として、善悪を識別する能力や自分をコントロールできる能力は失われていなかったと主張しました。

以下3点の荻野被告の事情・行動については、検察側も認めています。

・処方されていた薬の影響で妄想が発生していたこと

・無関係な人を巻き込まないために火をつけたあとに「逃げろ」と呼びかけ避難誘導をしたこと

・犯行に計画性はないこと

しかし、2人が死亡するという結果は重大で、社会として許容できず非難するべきとして、懲役30年を求刑しました。

一方で弁護側は、事件当時の荻野被告が、急性一過性精神病性障害の影響で心神喪失状態だったと主張しています。

急性一過性精神病性障害はストレスなどの影響で、妄想や幻覚、まとまりのない発言や行動などの症状が短期間で急激に起こるのが特徴。

荻野被告に対して、他の入居者が「周りの状況を気遣う人」「とてもきさくな人で、仕事はまじめにこなしている」などと発言していることからも、犯行時の状態は極めて異質だった。事件当時の幻覚や妄想などは、急性一過性精神病性障害の激しい症状の圧倒的影響により、犯行を思いとどまることができない心神喪失状態だったとして無罪を主張しています。

「尊い命を失わせてしまった…憎んでください」

公判を通じて最初から最後まで目を閉じて話を聞いていた荻野被告は、裁判長から「最後に言っておきたいことはありますか?」と聞かれると、車いすから立ち上がり、ゆっくりと語り始めました。

(荻野正美被告)「私はこのような大きな事件を起こしてしまったことを心から反省し、自分本来の…なんというんでしょう…人を思う気持ちに戻れなかったことが本当に、本当に悔やまれてなりません」

「2人の命を失わせてしまったことは事実です。妄想か、夢か現実か分からないまま、あのように火災を起こし、尊い命を失わせてしまった。住んでいた皆さんの財産並びに思い出の全てを焼き尽くしてしまったことを心から、心から反省しています」

「傍聴席には、被害者2人の親族や友人の方がいると思います。その方たちに申しておきます。私が生きている間にどうか恨んでください。そして憎んでください。呪ってください。2人の命を奪ったこと、施設関係者に迷惑をかけたこと、すべてにおいて現実です。自分に戻れなかったことが心残りです。以上です」

裁判は9月10日に結審し、判決は9月17日に言い渡されます。

09/17(水) 05:26

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