交通事故の被害者家族 抱え続ける苦悩と経済的負担 募る不安…寄り添った支援を 北海道

何の落ち度もない人が突然、被害者となってしまう交通事故。
被害者の家族には精神的な苦悩と経済的な負担が強いられます。
札幌市西区で2023年、走行中の軽乗用車のタイヤが外れ、女の子に直撃した事故の裁判で4月24日、札幌地裁は運転手の男に懲役3年執行猶予5年、所有者の男に罰金20万円の判決を言い渡しました。
(事故にあった女の子の父親)「家族の心情としては、子どもが殺されたも同然であるのに、このような内容で納得できるはずがありません。このまま終わらせたくないという気持ちが強いです」
判決が出たからといって、いままでのような生活に戻るわけではありません。
事故にあった女の子の父親は、今後の生活への不安を私たちに明かしました。
(女の子が事故にあった父親)「あくまで刑事的な責任が一段落しただけなので、こっち側の問題が解決していない。不安しかないというのが正直な気持ちですね」
(百瀬記者)「事故から1年5か月以上が経ち、ようやく判決が出ましたが、女の子はいまも意識不明のままです。この先も被害者家族の精神的・経済的負担は計り知れません」
当時小学生の息子が事故に…10年以上、意思疎通できず 24時間介護で支える日々
札幌市内に住む一人の女性。
(息子が事故にあった母親)「本当に毎日きょう死ぬんじゃないかと思っていたので」
温かい手を握りしめますが、車いすに乗った息子とは10年以上もコミュニケーションをとることができません。
2012年10月、日が沈みかかった放課後の時間帯でした。
自転車で横断していた当時小学生の息子が車にはねられ、意識不明のまま病院に搬送されました。
脳へのダメージが大きく、6年半の入院生活。
体はいっさい動かず、意思疎通も困難な「遷延性意識障害」と診断されました。
(息子が事故にあった母親)「家族もそれぞれがそれぞれの気持ちで苦痛な状態でいるので、ギクシャクばっかりしていて」
自宅での24時間の介護。
食事や移動、たんの吸引など家族とヘルパーが交代で息子を支えます。
事故の保険や国の助成を受けていますが、この生活にたどり着くまで多くの苦悩がありました。
(息子が事故にあった母親)「親指1本でもこうやって動かせられればYES・NOができるので、それでコミュニケーションをとれるじゃないですか。自分の思った通りに動かせる場所が1つでもあれば、いろんな方法でコミュニケーションがとれるんだけど。経済的サポートでいうと、最終的には補償は受けられた方なのかなと思ってはいますけど、そこまでいくのに10年近くかかりました」
会話ができる日を信じて介護を続けます。
(息子が事故にあった母親)「なに涙流してるの、どうした?なんかあった?別にって?泣いちゃった俺って、わかんないけど。泣いたの?そうなんだよね、結構俺大変なんだよねって」
精神的サポートは改善も…まだまだ不十分な交通事故被害者支援
北海道交通事故被害者の会の眞島勝彦さんです。
自治体による被害者家族への精神的なサポートは改善されてきたものの、さらに寄り添った支援が必要だと話します。
(北海道交通事故被害者の会 眞島勝彦副代表)「被害者(家族)が動かないと対応してくれないところがまだまだ残っている。市町村や国でも支援に携わっている方は、自分(担当者)ができないことがいろいろあると思うが、そのときは支援できる人につなげていってほしいと思う」
将来的な介護・治療費は“億単位”に…募る不安
タイヤの脱落事故で、娘と病室での面会が続く父親です。
事故にあった5歳の女の子も、意思疎通などができない「遷延性意識障害」とされています。
(女の子が事故にあった父親)「ずっと人工呼吸器につながれて、意識もないんですけど、看護師の方に身の回りのことを全部していただいている状況」
何の落ち度もない人が突然、被害者となってしまう交通事故。
さらに、今回の若本被告と田中被告の2人は任意保険に加入していませんでした。
このまま意識が戻らなければ、将来的な介護や治療費は億単位になると試算しています。
札幌市からの養育手当や自賠責保険などがあるものの、生活の見通しは立っていません。
(女の子が事故にあった父親)「自分がちゃんと働けるかどうか、この先ですね。いまでも精神的に事故のことを思い出して働けない時間はある。やっぱり保険が出ないと、娘を家で介護するという状況を整えるのが難しくなるというのがあって、本当だったら家で家族で過ごしたいが、過ごせる時間が減ってしまうというのが一番精神的につらい」
被害者家族は大きな不安を抱えながら、この先も生活していかなければなりません。