山林火災の“危険” もし北海道で起こったら… どうすれば防げるのか、現場の最前線を取材 北海道

全国で相次ぐ山林火災。
愛媛県や岡山県では今も延焼が続き、住宅にも被害が出ています。
2月には岩手県でも大規模な山林火災が発生。
どうすれば防ぐことができるのか。
現場の最前線を取材しました。
岩手県大船渡市の山林火災 北海道の記者が目の当たりにした“現地の被害”
(記者)「建物にも延焼しています。家でしょうか小屋でしょうか、火が燃え移っています」
山全体を覆うかのような真っ赤な炎。
(無線)「合足・綾里地区の人は直ちに避難してください」
2月26日に起きた岩手県大船渡市の山林火災は、日々拡大を続けました。
(森永記者)「発生からきょうで3日目ですが、いまも被害の範囲が拡大しています。あちらの山からは白い煙が立ち込めています」
私たちが目にしたのは、住宅のすぐそばまで迫る火の手。
避難指示は一時1896世帯、4596人に出され、住民は不安と隣り合わせの生活を強いられました。
(避難者)「裏の山の影から煙が上がっていて。風向きがこっちに向かっているので一山越えれば危ない。危険性を間近にした、目の当たりにした。このような体験は初めてです」
平成以降、国内最大規模となる山林火災は、大船渡市の面積の9%にあたる2900ヘクタールが焼失。
男性1人が死亡し、いまだ鎮火には至っていません。
北海道の防災航空隊も現地入り 「今回のような大きな規模は初めて」
未曾有の火災を食い止めようと、全国各地の消防隊員が応援に入り、夜を徹した消火活動が続けられました。
道の防災航空隊もその一員です。
7人の隊員らが3月1日から3日間、上空からの消火活動にあたりました。
(道・防災航空隊 下田大輔隊長)「バケットのロープを引っ張ることで蓋が開いて水が散水する。この姿勢で保持するが非常にしんどい」
上空100メートル付近から山中の炎を確認。
風を計算し、ピンポイントで放水するのは至難の業です。
給水ポイントで最大800リットル入るバケットに水を補給して再び現場へ。
これを1日に何度も繰り返します。
(道・防災航空隊 下田大輔隊長)「本当に民家の真裏から煙があがったりしていたので、そこを優先しながら活動していた。民家に(火が)こないように優先順位をつけてあっちをたたこう(消火しよう)とか、難しいけれど他県と連携して活動できていた。今回のような大きな規模というのは初めてで、今回の活動で学ぶことは多くありました」
「あっという間にメラメラと燃えてしまう…」 経験者が語る“湿原火災”の恐怖
(佐藤記者)「釧路湿原の火災現場の上空です。野火は横一線となって湿原の中心部に向かって燃え広がっているようです」
大規模な火災は北海道でも起きています。
1970年代から90年代にかけて、釧路湿原で火災が相次ぎました。
当時、釧路湿原の火災の調査にあたった神田房行さんです。
(釧路自然保護協会 神田房行会長)「いまも危険性は同じです。よく燃えるのはこの“ヨシ”ですね。あっという間にメラメラと燃えてしまうのが湿原の火事の恐ろしさ。早いです」
釧路湿原に多く生えているイネ科の植物「ヨシ」。
このヨシを伝って火が一気に燃え広がり、1992年には釧路湿原のおよそ1030ヘクタールが焼失しました。
原因は「たばこの投げ捨て」と言われています。
(釧路自然保護協会 神田房行会長)「住宅街の近くまで釧路湿原はきているので、そこが燃えると住宅地の火災につながる可能性がある。われわれとしては他人ごとではなくて、もっとひどいことになるかもしれないといつも考えていかないといけないなと思っています」
寒い地域ならではの“山林火災の危険”も 「森林が広大な北海道では火災が拡大しやすい」
林野庁によりますと 国内の山林火災は年間およそ1300件。
このうち3月や4月の春に発生が集中しています。
いまも愛媛県や岡山県など全国で相次いでいる山林火災。
背景にあるのは、春特有の乾燥や強風といった火が燃え広がりやすい気象条件です。
さらに、寒い地域ならではの危険も潜んでいます。
(森永記者)「こちらは北海道に広く植生しているマツの木ですが、このような針葉樹は油分も多く、火が燃え広がりやすいと言われています」
大船渡市の火災でもスギなどの針葉樹が広範囲で焼損しました。
油分の多い針葉樹が延焼を加速させたと言われています。
大船渡に現地調査に入った京都大学の峠嘉哉さんです。
山林火災の原因をこう分析します。
(京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授)「この時期は人が山に入りやすいということもありまして、日本の林野火災の99%は人為的な着火によるもの。人が入りやすくなる時期は出火も多くなる」
京都大学防災研究所によりますと、山林火災の98.8%がたき火やたばこなどの人為的な火が原因で、1.2%が雷の自然現象によるものだと分析しています。
(京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授)「北海道は森林のサイズが大きいので、ひとたび大きな林野火災になると可燃物が連続していて大きくなりやすい。そこの地域だけの問題だと考えるのではなくて、乾燥注意報や強風注意報に基づいて火の取り扱いに注意するということは日本各地で必要になっている」
住宅だけではなく人の命をも奪う山林火災。
決して「対岸の火事」ではありません。