いじめ対応に不信感…当事者の家族が取材応じる「見て見ぬふりしているのか」札幌市教委は独自のガイドライン策定へ
札幌市で3月、児童・生徒が同級生からいじめを受けたとして「重大事態」と認定し、調査していることが分かりました。
当事者の家族がSTVの取材に応じ、学校などへの不信感を語りました。
学校に調査求めるも「子どもたちにいじめという言葉を使いたくない」2年後ようやく“重大事態”認定
(Aさんの母親)「(息子は)毎日のように暴言を吐かれるようになって、その内容が結構辛辣だったので。本人の言葉で言うと『人は言葉で人を殺すことができるんだ』」
いじめ被害を訴えている札幌市南区のAさんの母親です。
2023年4月、当時小学4年生だったAさんは複数のクラスメイトから突然“いじめ”を受けるようになりました。
(Aさんの母親)「『バカ』とか『死ね』とかそういうものだったり、からかいだったり、帽子を取って投げられたり、叩くとか蹴るとかそういうものに変わってきた。担任の先生に『こういうことをされて嫌だ』『怖い、困っている』っていうのを(息子が)訴えた時に、担任の先生がよく言っていたのは『もういい加減、自分で解決しなさい』」
学校側は同級生に注意はするものの、Aさんの悲痛な叫びに耳を傾けなかったといいます。
いじめは5年生になってクラスが変わってからも続きました。
母親は調査を学校に求めましたが、「子どもたちにいじめという言葉を使いたくない」と口頭での指導などにとどまったということです。
Aさんは次第に休む日が増え、うなされることも多くなり、2024年7月、PTSD=心的外傷後ストレス障害と診断されました。
そして、2025年8月、札幌市教育委員会がいじめの重大事態と認定し、ようやく調査を開始。しかし、Aさんの心は限界でした。
(Aさんの母親)「加害行為をしてきた子とは別のグループの子が、6年生の教室内で(息子に)いじめをしていた。(息子は)学校の先生たちは見て見ぬふりをしているのか、助けてくれないっていう気持ちはすごい強かった」
2年半以上いじめが続き、自ら命を絶とうとしたAさん。
2025年11月に転校し、卒業式にも出られませんでした。見かねた母親は手作りの卒業証書を手渡したといいます。
いじめ発生からおよそ3年。
3月30日に中間報告書が示され、調査した28件のいじめがすべて認定されたということです。
(宮永キャスター)
取材を担当した阿部記者です。今回、いじめ調査までかなりの時間がかかりましたね。
(阿部記者)
Aさんのケースを時系列でまとめました。いじめは2023年4月から始まり、母親もすぐに学校に相談します。
12月には学校に調査を求めましたが、同級生への口頭での指導にとどまりました。
2024年7月にPTSDの診断を受けましたが、重大事態の調査が始まったのは2025年8月になってからです。
9月には自殺未遂、11月に転校、そしておよそ3年経った30日に中間報告書が示され、28件のいじめが認定されました。
(宮永キャスター)
なぜ、これほど時間がかかるのですか?
(阿部記者)
いじめ調査自体に、数年単位の時間がかかる場合もあります。また、すぐに重大事態と判断できるか、学校側の初期対応も課題です。
学校の対応に疑問を抱いている別の保護者を取材しました。
席替え希望しても「無理」問われる学校の初期対応…当事者はPTSD診断
(Bさんの母親)「重大事態調査として取り扱っていただいて、もうちょっと細かい調査に入ってほしいと伝えても却下された」
こう話すのは、札幌市東区の中学校に通っていたBさんの母親です。
母親によると、Bさんは2025年6月から9月ごろ、教室の後ろの席に座っていたクラスメイトから背中を蹴られるなどの暴力を受けるようになったということです。
(Bさんの母親)「(当時息子は)太もも・尻がしびれていて、右足のつま先までしびれていた。(去年)9月25日の朝に、本人から『もうつらい』っていう言葉が出たので、いじめにあっているかもしれない疑いが出ました」
母親はすぐにいじめの重大事態として調査を求めましたが、「見守ることしかできない」と言われ、さらに席替えを希望しても「学校祭の準備があるので無理」と告げられたということです。
2月、PTSDと診断されたあと、学校からいじめの重大事態として調査を始めるとようやく連絡がありました。
それまでに、息子はストレスで意識を失い、搬送されたこともあったということです。
(Bさんの母親)「息子が早く普段通りの学校生活に戻れるようにしてほしいというお母さんの気持ちを汲んだから、重大事態調査を進めなかったと言われた。早期に物理的に距離をとってもらう、席替えとかをできない理由を述べるのではなく、できる可能性を話してほしかった」
学校側はSTVの取材に対して、「個別の案件についてはお答えできない」とコメントしています。
専門家「被害生徒側に寄り添うのが基本」札幌市は独自のガイドライン策定へ
専門家は学校側のいじめ対応について次のように指摘します。
(北翔大学教育文化学部 飯田昭人教授)「学校現場の忙しさであったり、あとはいじめ調査に時間がかかる。やはり被害児童・生徒側に寄り添うというのが基本なんですよね。納得していただくまで丁寧に説明するということがやっぱり基本」
札幌市では2026年1月、重大事態の可能性がありながら調査されなかった事案が、2013年以降で20件確認されたと発表。
現在、調査すべきか速やかに判断するため、独自のガイドラインの作成を進めています。
(札幌市教育委員会 末原久史課長)「しっかり寄り添った体制で、迅速性が求められる場合には1年以内ですばやく行いたい。困っている市民を減らすような、そういったガイドライン、学校が運用できるガイドラインを作りたい」
(宮永キャスター)
札幌市が作成している独自のガイドラインのポイントは何ですか?
(阿部記者)
まず、調査の迅速化です。これまで調査に携わる専門家は3人必要でしたが、最低1人からでも調査を始められるようにします。
さらに、重大事態の判断ポイントを明確にし、今後、調査から公表まで1年以内を目指す方針です。市教委は31日、このガイドラインを踏まえたいじめ防止の徹底を各学校に通知しました。
(宮永キャスター)
市教委もこれまでの対応は不十分だったと認め、ガイドラインの作成を進めていますが、これで対応は変わるのでしょうか。
(阿部記者)
ここで課題となるのが「教育現場の逼迫」です。北翔大学の飯田教授は「先生の負担を減らしていじめの対応に注力できる体制を作るべき」と話しています。
こうした課題を解決し、被害児童・生徒の声にどれだけ耳を傾けることができるのか。いじめの早期発見・早期解決のために丁寧な対応と説明が求められます。