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故郷から奪われた「アイヌの遺骨」1000体以上が返還されず…問われる国の責任 民族の尊厳を守り続ける人たち

シリーズ「カムイと共に」。

かつて北海道内の墓地からアイヌの遺骨が無断で持ち去られました。

研究が目的でしたが、いまだ1000体以上の遺骨が故郷の土にかえれないままです。

民族の尊厳を取り戻そうとするアイヌの人たちを取材しました。

研究目的で盗掘 “アイヌの遺骨”

アイヌ民族の儀式に使う「イナウ」。

人間と神々や先祖との間を取り持つ役目を果たします。

先週末、十勝の浦幌町で行われたのは、先祖を供養する伝統儀式「イチャルパ」。

浦幌では過去に奪われた先祖の遺骨100体以上が返還され、故郷の地に眠っています。

(浦幌のアイヌ 差間啓全さん)「土にかえって安らかに眠ってもらう、ここの地域に眠ってもらうというのが大切な意味がある」

かつて、大学の学者たちは研究という名のもとで、道内各地でアイヌの遺骨を無断で掘り起こしました。

頭蓋骨の形状や大きさなどから人類の起源がわかるとされていたのです。

国は、遺骨の返還にはアイヌによる儀式が必要としていますが、担い手不足が問題となっています。

(静内のアイヌ 高月勉さん)「祭祀継承者や返還後の儀式などを国が指定することがおかしい。それぞれの地域に任せるべきだと思う。あまりにもハードルが高すぎる」

遺骨収集は小樽でも…差別と偏見にさらされたアイヌ

道内有数の観光名所・小樽。

年間800万人を超える観光客が訪れます。

いまの運河周辺にアイヌが暮らしていたことは、ほとんど知られていません。

(アイヌの歴史を研究 平山裕人さん)「このあたりいったいですね。ここにオルゴール堂があって」

(記者)「ここにアイヌが住んでいた?」

(アイヌの歴史を研究 平山裕人さん)「そうだと思いますね」

小樽でアイヌの歴史を研究する平山裕人さんです。

明治時代、アイヌの集落があった場所は土人地と記載されています。

しかし、その面影は全くありません。

1880年に政府に提出された文書です。

(文書)「小樽郡旧土人は市街各所に散居し」「甚だ不潔」「人家隔絶適当」

かつて小樽にいたアイヌは差別と偏見にさらされ、郊外への立ち退きを強いられました。

(アイヌの歴史を研究 平山裕人さん)「このあたりですね。ここから盗掘されたと思います」

アイヌの遺骨研究の第一人者・東京帝国大学の小金井良精教授。

小樽でも遺骨を収集していました。

(小金井良精教授)「アイヌがまだ付近にいるようなところは避けて、無縁の墓場を探し求めるのが最も大切。手安く骨に達する。頭骨の中に脳髄が白く、あたかもひめ糊」

(アイヌの歴史を研究 平山裕人さん)「おかしいと思わなかったのか。どこかの時点で。明治時代も法律違反ですから」

文部科学省の調べでは、アイヌの遺骨は国内12の大学でおよそ1600体が保管されていました。

現在はウポポイに1300体あまりが集約されていますが、遺骨の返還は慰霊式ができる団体などに限定されています。

(アイヌの歴史を研究 平山裕人さん)「(強制移住で)小樽にもともといたアイヌの人はいなくなった。誰に返還するのという問題になる。いないでしょって」

東京大学が謝罪 遺骨20体が返還され埋葬

強制移住と遺骨の盗掘を知った平山さん。

アイヌ民族ではありませんが、遺骨返還のために団体の設立をすすめました。

それから5年、持ち去られた遺骨がようやく地元に返されました。

東大や北大などで長く保管されていた遺骨あわせて20体が、市営墓地の一画に埋葬されます。

(記者)「似合っています」

(平取のアイヌ 木村二三夫さん)「そうか」

日高の平取町のアイヌ・木村二三夫さんです。

(平取のアイヌ 木村二三夫さん)「長い年月さらされ続けてきた侮辱的な日々でした。あなたたちの望む場所への旅立ちを見送ることができます」

国が返還の条件としている「慰霊式」を開くため、甥で小樽のアイヌ・安ケ平さんと一緒に先祖を供養しました。

東大の職員も一緒に遺骨を土に帰します。

(東京大学 広末賢太本部総務課長)「東京大学は過去にアイヌ民族の遺骨を研究調査のために収集し保管してきた。こうした一連のことがアイヌの意向に寄り添うことなく行われ、尊厳を傷つけたこと、改めて深くお詫び申し上げます」

(小樽のアイヌ 安ケ平拓也さん)「盗られた側ですから、盗った側が責任を持って埋葬してほしいというのが本音。あるべきところに戻れたということでほっとしています」

途絶えていた民族伝統の儀式 遺骨返還を機に担い手育成へ

浦幌町で活動するアイヌの団体です。

1本1本、木を削り、イナウをつくります。

(浦幌のアイヌ 差間啓全さん)「初めてにしてはすごいよ」

(浦幌のアイヌの男性)「自分が1本作る間にみんなは2~3本作る」

ここでも民族伝統の儀式が途絶えていましたが、2017年の遺骨返還を機に担い手の育成に乗り出しました。

(浦幌のアイヌ 差間啓全さん)「大切なのは手をかけること。イナウの削り方が立派だからいい儀式ができるとは限らない。心の問題」

先祖の遺骨を土に帰すためにー

差間さんはアイヌ文化を守り続ける覚悟です。

(浦幌のアイヌ 差間啓全さん)「わたしたちは文化の継承が途絶えた地域で、遺骨の返還で会がひとつに結束して、再埋葬できない人のためにも、有志の人が集まって返還への取り組みもしていきたいと思う」

故郷から奪われ、いまもさまよい続ける先祖の遺骨。

長い年月、放置してきた国の責任が問われています。

08/29(金) 07:35

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