事故から3年「冷たいところで命落とした」記憶をつなぐ追悼の1日…家族の思い【知床観光船沈没】
あの事故から3年。
乗客の家族が知床を訪れ、犠牲者に祈りを捧げました。
追悼の1日を振り返ります。
知床の海に向かう一人の男性。
(宝大さんの父)「痛いですね、手が。冷たいところで痛い思いをしながら命を落としていったと思うと憤りを感じますね」
男性の息子の小柳宝大さん。
観光船「カズワン」に乗船し、いまも行方が分かっていません。
カンボジアの飲食店で働いていて、一時帰国した際に事故に遭いました。
2022年4月23日、知床沖で発生した観光船「カズワン」の沈没事故。
乗客乗員20人が死亡し、6人が行方不明のままです。
あの日から3年、宝大さんの父親は、船内から見つかった宝大さんのダウンジャケットを身に付けていました。
(宝大さんの父)「事件に関することだから、お前も常に一緒にいてくれという思いですね。事故があったことは覚えていてもらいたい。再発防止ですね。こんな思いはみなさんにしてもらいたくないから」
斜里町ウトロ地区で開かれた追悼式。
被害者の家族や町民らが参列し、犠牲者に祈りをささげました。
(献花に来た町民)「あっというまの3年だったと思います。日にちが過ぎるたびに、忘れ去られないようにしていきたい、いまはそう思っています」
この事故では2024年、運航会社の桂田精一社長が業務上過失致死の罪で起訴されたほか、3月からは乗客の家族らがおよそ15億円の損害賠償を求める裁判が始まりました。
しかし、その桂田社長は2025年も追悼式に姿を見せることはありませんでした。
(帯広市の男性)「私たち被害者家族は事件のことだけでもつらい思いをしているんですけど、そういう桂田のそういう誠意のない、反省していない態度が余計に私たちを苦しめているんです」
7歳だった息子とその母親が行方不明となっている男性です。
今でも家族が無事に帰ってきてくれることを祈っています。
(帯広市の男性)「生存の可能性は低いんですけど、厳しいことだと分かっているけど、それでもやっぱり待ち続けていたい、そういう気持ちでいたい」
ボランティアで捜索活動を続けてきた漁師の桜井憲二さん。
7月に乗客家族のための洋上慰霊を実施する予定です。
(桜井憲二さん)「風化させてはいけないですし、きちんと向き合っていかなければだめだと思います」
事故を風化させないために何ができるか、斜里町も検討を始めています。
(斜里町 山内浩彰町長)「慰霊碑、ご家族の方は慰霊碑という言葉を使いたくない方もいるが、こういった部分の設置についてどう進めていくのか。多くの人にご理解いただけるように考えて意見交換をしながら進めていきたい」
悲劇を繰り返さないためにどう事故の記憶をつなぐのかー
事故から3年が経った知床の課題です。