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リゾート地の乱開発「投資目的で買われて塩漬けに」大規模ホテルの建設ストップ ニセコ・富良野

【動画】大規模ホテルの建設ストップ 進むリゾート開発の影「投資目的で買われて塩漬けに」ニセコや富良野に潜む“乱開発”の現状

北海道内で海外資本による高級ホテルの開発が進んでいますが、国際的なリゾート地・ニセコでは、大規模ホテルの建設がストップしました。

リゾート地でいったい何が起きているのでしょうか。

「下請けがみんな潰れる」進むリゾート開発の影

いまや国際リゾートとして世界に知られるニセコ。

外資系のホテルやコンドミニアムが立ち並び、建設ラッシュが続いていますが…

(ニセコ町民)「下請けがみんな潰れちゃうでしょ。金もらえないからね」

ニセコ最大級のホテル建設がストップする事態にー

さらに“第2のニセコ”富良野でも…

(富良野市民)「何十年も荒廃化が進んでしまう可能性はありますよね」

宿泊施設の建設が中断。

進むリゾート開発の影を追いました。

羊蹄山を望む後志のニセコ地区です。

ラフティングなどのアクティビティや…

四季折々の美しい自然が楽しめます。

(香港から来た人)「きょうは青空なので雪が積もった山を眺められる」

(香港から来た人)「富士山のようですね!」

なかでも圧倒的な支持を得ているのが、世界一と称されるパウダースノーです。

冬に訪れる観光客の8割は外国人で、2023年度の宿泊者数は過去最多の73万人を記録しました。

倶知安町のひらふ地区は、海外資本によるホテル建設などが相次ぎ、国際リゾート地として発展を遂げました。

開発の波が押し寄せる一方で、懸念する事態もー

(山﨑記者)「ニセコ町です。この先立ち入り禁止となっている場所に大型のコンドミニアムが建設されていましたが、工事がストップしているということです」

香港系の会社が建設を進めていた高級ホテル。

ニセコ最大規模のリゾート施設として、2024年12月の開業を予定していました。

しかし、資金繰りに行き詰まり、2024年の夏ごろに工事がストップ。

建物は1年近く、シートに覆われたままです。

会社は4月、破産手続きの開始決定を受け、負債額は数十億円を下らないとみられています。

(ニセコ町民)「下請けがみんな潰れちゃうでしょ。金もらえないからね。あれ置いていかれたら固定資産税もなにも入らないでしょ、町に。あれだけ投げられたらどうするんだろうね」

建設コスト高騰 投資目的のリスクも

ニセコ町にある観光牧場です。

(観光客)「おいしいです」

搾りたての牛乳を使ったアイスクリームを目当てに、海外から多くの観光客が訪れています。

ホテルは牧場のすぐ近くにあり、従業員も集客に期待を寄せていました。

(牧場の従業員)「お客さんが通るようになれば店にも来ていただけるかなと歓迎はしていました。形にはなっているので、誰かが引き継いでオープンしていただければ」

破産管財人の代理人弁護士は、ほかの企業などへの事業の引き継ぎを目指しているということです。

なぜ資金繰りに行き詰まったのか。

民間の調査会社はこう分析しています。

(帝国データバンク札幌支店情報部 渡辺雄大部長)「計画段階よりもいまは人手不足などで人件費が上がっていて、資材の高止まりなど建設コスト自体が上がっている。かつ、いまは当初よりも円高に振れつつある」

さらに、投資目的ならではのリスクもあると指摘します。

(帝国データバンク札幌支店情報部 渡辺雄大部長)「特にニセコだと(土地の)価格が上がってしまっているので、もはや投資に見合わないような状況。投資家はその動きをすぐ察知して別のところに投資しようと金を引き上げるリスクがある」

“第2のニセコ” 富良野でも「荒廃化が進んでしまう」

海外資本による開発は富良野でも進んでいます。

夏になるとラベンダー畑が見ごろを迎え…

冬はスキーと通年で楽しめるリゾート地。

“第2のニセコ”とも呼ばれ、2024年度はおよそ190万人が訪れました。

スキー場につながる北の峰地区のメイン通りには外資系のホテルが立ち並び…

住宅や土地がいくつも売りに出されていました。

住宅地の地価の上昇率は2年連続で全国1位となっています。

マチの移り変わりを半世紀にわたって見つめてきた細川一美さんです。

(北の峰連合町内会 細川一美会長)「ここが外国人などに売られている場所ですね。これも民泊になったのかな。もともと喫茶店だったんですけどね」

住民が土地や住宅を売ってほかのマチに移り、町内会の加入世帯は10年間で60戸ほど減少したということです。

こうした開発が進む一方で…

(北の峰連合町内会 細川一美会長)「もともとは農地だったんですけど、中国系が買って開発行為をしようとしたのでないか。不測の事態があって止まったのではないかと思います」 

こちらは、スキー場のふもとに広がるおよそ4.7ヘクタールの土地。

富良野市などによりますと、札幌の会社が宿泊施設などの建設を計画し工事を始めましたが、2019年に道路を整備したあと、開発が進んでいないということです。

この土地を所有する札幌の会社について、法人登記簿を調べたところ、代表は中国に住んでいることが分かりました。

しかし、これまでに会社とは連絡がつかず実態は判然としません。

(北の峰連合町内会 細川一美会長)「富良野にとって良いことだなと思っていたけれども、こういう風に荒れ地になっちゃったら何十年も荒廃化が進んでしまう可能性はありますよね」

こうした現状に富良野市は…

(富良野市 稲葉武則副市長)「リゾート地区として観光を含めて活用されること自体は地域振興として非常に喜ばしいことですが、投資目的で買われて塩漬けにしていくということはやめていただきたい」

専門家は、一定の対策が必要だと指摘します。

(北星学園大学 足立清人教授)「日本では土地建物の取引が自由ですから、土地建物の売買に介入していくことはできない。投資や開発・都市計画などいろいろな部分から規制を考えていく必要がある。地域のことを考えて土地を利用していきましょうという視点が必要」

光と影が交錯する投資目的のリゾート開発。

将来的なマチづくりのあり方を考えていかなければなりません。

05/31(土) 08:13

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