特定少年ら6人で集団暴行…“新たな証言”も 検察が自信のぞかせる「強盗致死」裁判の争点は 男子大学生死亡から1年
北海道江別市で男子大学生が集団暴行をうけ死亡した事件から1年が経ちます。
交際関係のもつれから発展した凄惨な集団暴行事件。
新たな証言から事件の真相を追いました。
公園で“顔面”や“腹部”を殴る蹴る… 全裸で変わり果てた姿に
秋も深まり、静まり返る公園。
あの日の騒然とした空気はもうありません。
(百瀬記者)「事件は閑静な住宅街の中にある公園で起きました。比較的見渡しのいいこの場所で、男子大学生は変わり果てた姿で発見されました」
『2024年10月26日』
全裸の状態で倒れていた男子大学生。
遺体の状況から、複数の人物に暴行を加えられ、死に至ったことがわかりました。
(第一発見者)「人形かなと思ったんだけど、まさかなと思ってもう一回戻ったんだよね」
死亡したのは、千歳市の大学生・長谷知哉さんです。
事件の直前、住宅街の防犯カメラには、女の後ろを歩く長谷さんの姿がありました。
このあと暴行を受けるとは想像もしていなかったはずです。
その長谷さんの前を歩いていたのが、交際相手の八木原亜麻被告でした。
この事件で逮捕・起訴された八木原被告と川村葉音被告。
起訴状によりますと、2人は公園で長谷さんの顔面や腹部を殴る蹴るなどの暴行を加えて死亡させたとされています。
さらに、この事件には少年4人が関わっていたことも分かりました。
<新たな証言>主犯格の少年(18)は…「女の子の前ではいい格好をしたい子」
なかでも「主犯格」とされているのが、当時18歳だった川口侑斗被告です。
今回新たに、川口被告を小学生のころから知る男性に話を聞くことができました。
(川口被告を知る男性)「スポーツもやっていましたし、自転車に乗って活発にこのあたりを動いていたような子どもだった。リーダー的な存在ではないが、グループ内でナンバー2じゃないですけど、中学高校とやんちゃな子たちと付き合うようになったと聞いたことがあります」
「主犯格」という報道を見て、驚きを隠せなかった男性。
何が川口被告の行動に火をつけたのでしょうかー
(川口被告を知る男性)「女の子の前ではいい格好をしたい子なのかなと。公園で見かけたり遊んでいるところを見かけたりするときに、一番はしゃいでいるような感じ。なんで大学生を死ぬまでやるのかと。まさかですし、集団だからなのか」
自ら率先して暴行を加えたとされている川口被告。
その犯行の背景にあったのが、長谷さんと八木原被告の“交際関係のもつれ”です。
(八木原被告)「長谷さんに1年後に別れることを切り出され、その相談のために会った。今後の2人の関係について会話をする中で不満が募っていった」
暴行を加えていた当時の状況について2人はー
(八木原被告)「直接は加担していないが、ほかの容疑者が暴行する様子を笑ったり、あおったりした」
(川村被告)「自分も暴行をしている」
さらに、6人は「全部出せ、全額」「クレジットカードもな」などと、長谷さんの現金やカードなども奪ったとされています。
(八木原被告)「別れ話でもめている」
この一言がすべての始まりだったのかー
取り返しのつかない行為に対し、6人全員が問われているのが「強盗致死」という極めて重い罪です。
事件の解明は今後、法廷で明かされることになります。
交際関係のもつれ…別れ話から事件に発展
ここからは取材を続けている百瀬記者とお伝えします。
若者が金品を奪ったうえ、集団暴行で死亡させる凄惨な事件ですよね。
こちらは事件の構図ですが、長谷さんと八木原被告は交際関係にあり、別れ話をきっかけに事件へと発展していきました。
長谷さんは八木原被告と川村被告、そして17歳の少年とは面識がありましたが、川口被告や滝沢被告ら3人とは事件当日が初対面だったということです。
この6人が問われている強盗致死罪は極めて重い罪ですよね?
法定刑は死刑か無期懲役… 検察は「強盗致死罪」に自信
この強盗致死罪は法定刑で「死刑」または「無期懲役」となっています。
18歳の川口被告と滝沢被告も特定少年として大人と同じように扱われ、今後、裁判が進んでいくことになります。
これだけ重い罪ですが、検察は起訴した際、「強盗致死が適切かつ立証が可能だと判断した」と説明するなど、自信をのぞかせている印象がありました。
その状況の中で今後、6人が控えている裁判ではどういったことが争点となってくるのか取材しました。
裁判の争点は?「強盗の目的なし」を主張する可能性も
当時、警察は6人を傷害致死の疑いで逮捕。
その後、検察は「強盗致死」というより重い罪で起訴しました。
『争点① 強盗致死の認否』
検察はこれまで6人の認否を明らかにしていません。
こうした中、裁判では被告側が強盗の目的はなかったと主張してくる可能性があると専門家は指摘します。
(元検事 中村浩士弁護士)「そもそも金品を奪う目的、強盗の目的はなかったんだという主張。あるいは、死につながるような暴行、そこまでするつもりはなかったと。こういった主張をもとに、強盗致死じゃなく、傷害罪あるいは傷害致死、この成立にとどまるんだというのが主張として考えられる」
『争点② 誰の責任?』
集団暴行事件の場合、判決を下すうえで最も重要なのが、それぞれが果たした役割です。
八木原被告は「暴行する様子を笑ったり、あおったりした」、川村被告は「自分も暴行している」と供述しています。
そして、札幌家裁では川口被告を「終始犯行を主導した主犯格」、滝沢被告を「ほかの被告より暴行を加えていないものの、逃げようとする長谷さんにハイキックした」などと指摘しています。
そのため、それぞれが果たした役割から量刑を争ってくる可能性があるということです。
(元検事 中村浩士弁護士)「全体の責任について、実行行為者、手をくだしたものと同じ責任というのはおかしいと、消極的に従属的に関与したに過ぎない、手伝ったに過ぎないんだということで、正犯ではなく従犯・ほう助犯という主張も出てくる可能性もあって、量刑を争ってくることも十分あり得る」
6人の若者が加えた“集団暴行” なぜ命は奪われたのか
事件から1年経ちますが、裁判はいつ始まるのでしょうか。
そもそもこの6人は裁判員裁判で審理される見通しです。
初公判の前には、検察と弁護側の争点を整理する公判前整理手続きがあります。
主犯格とされている川口被告については、10月29日に1回目が行われることがわかりました。
ほかの5人については予定が決まっていません。
証拠や主張の整理に時間がかかっているとみられ、初公判までには今後、半年から1年近くかかる可能性もあります。
これまで取材を続けてきて感じたことは何ですか?
やはり6人全員が若者で集団で暴行を加えた点です。
これがいわゆる「のり」、集団心理が働いて大学生の命を奪ったのか。
それとも明確な動機があったのか。
法廷での6人の発言に注目したいと思います。
ここまで百瀬記者とお伝えしました。
なお、STVでは「特定少年」の被告について、事件の重大さや社会的影響などを総合的に判断し、実名で報道しています。