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体が動かなくても前へ “全身まひ”になった元体操選手「障害と生きていく」新たな挑戦に密着

【動画で見る】全身まひになった元体操選手 夢を抱いて新たな挑戦!生きる気力を失っても…前へ

不慮の事故でけがをして体の自由を奪われた女性がいます。

一時は生きる気力を失いましたが、家族の支えがあり念願の一人暮らしを始めました。

体が動かなくても一歩ずつ前へと歩む姿を取材しました。

跳馬で転落「全身まひ」に…障害者になった現実

電動車いすに乗って現れた、加藤妃桜さん19歳。

妃桜さんは全身にまひがあり、首から下を動かすことができません。

手足だけではなく横隔膜も動かないため、人工呼吸器が欠かせません。

この日、念願の美容室にー

実に4年ぶりです。

明るい色に染まり、笑顔が浮かびました。

(加藤妃桜さん)「めっちゃいい」

6歳から始めた器械体操。

高校は福井県にある強豪校に進学し、全国大会出場を目指して練習を重ねる日々でした。

しかし、高校1年生の時、跳馬の練習中に首から転落。

頚椎を損傷したことで全身まひになり、3年間の入院生活を過ごしました。

行動的で明るい性格だった妃桜さんは、障害者になった現実をつきつけられ、ふさぎこむようになりました。

夢だった「一人暮らし」に挑戦 応援する母親の思い

それでも、治療を続ける中で、自分の力で生きていきたいと、ある夢を抱くようになりました。

それが「一人暮らし」です。2024年から挑戦し始めました。

(加藤妃桜さん)「かじれないから、はさみか包丁で一口くらいに」

現在は、ヘルパーのほかに札幌市独自の介助制度を利用し、サポーターの手を借りながら生活しています。

2025年の春、大学2年生になった妃桜さん。

視線入力でパソコンを操作して、大学の勉強をしています。

(加藤妃桜さん)「添削課題とかやってはいるけど、まあ合格はしてない感じ」

一人暮らしでは週に2回、訪問入浴のサービスを受けています。

母の由加さんは身の回りのことを手伝いながらも、妃桜さんの「自立」を応援していました。

(加藤由加さん)「お母さんとかお兄ちゃんとかをそんなに頼らないで、自分で決断したことを実行していいんだよって」

(加藤妃桜さん)「最初に思い描いていたよりは過酷っていうか大変っていうか。退院してすぐよりは慣れたからいまのところ問題はないかなって」

「妹の支えになりたい」看護師を目指す兄の存在

この日は近くの駅まで外出。

歩道のわずかな段差でも、妃桜さんの体は左右に大きく揺れてしまいます。

それでも、あごを使って電動車いすを操作しながら進みます。

(加藤滝大さん)「ただいま」

(加藤妃桜さん)「おかえり」

妃桜さんに会いに来たのは兄の滝大さんです。

「妹の支えになりたい」と看護師を目指し勉強に励み・・・

ヘルパーがいない時間は妃桜さんの生活を支えます。

(加藤滝大さん)「絡まりすぎてる」

(加藤妃桜さん) 「痛い・・・」

(加藤滝大さん)「自分が看護師だったらなにかあった時に安心にもなるし、自分もなにかできるんじゃないかと思うことがありました。家族として支えになってあげたいなと、将来もこれからも」

人目を避けた生活から前へ…新たな挑戦

(加藤妃桜さん)「小児在宅医療推進フォーラムにお集まりいただき、ありがとうございます」

妃桜さんは家で過ごすことがほとんどです。

2025年、ある依頼が舞い込んできました。

在宅医療をテーマにしたイベントで司会を担当することです。

人目を避けてきた生活から一歩踏み出すきっかけになるかもしれない…

妃桜さんは司会を引き受けることにしました。

(加藤妃桜さん)「息続かなくて‥・変に聞こえちゃうかも」

(加藤滝大さん)「息続かなくなったら最後ちっちゃくなるじゃん。それより、続く範囲で区切った方が・・・早口になっちゃう?」

(加藤妃桜さん)「早口でも続かない・・・」

けがをしてから人前に立つことがなかった妃桜さんにとっては大きな挑戦です。

“人との出会い” 外の世界へ踏み出す一歩に

イベント当日。

メイクも久しぶりです。

(ヘルパー)「(メイク)茶色くする?それともこのままいく?」

(加藤妃桜さん)「このままでいいかな」

訪れた商業施設は賑やかでしたが、妃桜さんは少し緊張気味。

気になるのが、すれ違う人の視線です。

(加藤妃桜さん)「めっちゃはずかしい!」

会場には多くの人が集まり、その中には、祖父の菊男さんと祖母の善子さんの姿も。

(加藤妃桜さん)「私は16歳の時、器械体操の練習中にけがをしました。けがの後遺症で全身まひになり、人工呼吸器をつけて生活しています。こんな体の自分に何ができるのだろうと考えた時、笑って楽しく障害と付き合って生きていくことを頑張ろうと思いました。ありがとうございました」

(加藤妃桜さん)「どう見られるか怖かったから最初は嫌だったけど、みんな普通に接してくれて、そんなに嫌な気分じゃなくて。出てよかったなって思った」

温かく見守ってくれる人たちとの出会いがあり、外の世界へ踏み出す大きな一歩となりました。

(加藤妃桜さん)「今の体は自分一人では生きていけないし、絶対誰かの支えが必要だから、家族とかに負担を少しでも減らせるように努力していきたい。人前にも出れるようにしていきたいなって思う」

障害者になり、自信を失いかけていた妃桜さん。

周りの支えを受けて、新たな自分へ進み始めています。

05/18(日) 08:13

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