命を守る“盲導犬”が不足 課題は資金確保「9割が募金」育成から引退後まで…必要な支援は?

視覚障がい者の目となり生活を支える盲導犬。
しかし、その数は十分ではありません。
盲導犬1頭を育成し飼育するには500万円の費用がかかるといわれています。
盲導犬をどう増やすのか、その課題を取材しました。
命を守る大切な存在「盲導犬」
(表谷光剛さん)「グッドグッド、ムサシ行ってー」
14年前に病気で視力を失った札幌市の表谷光剛さん。
その横を歩くのは、盲導犬のムサシです。
赤信号の交差点に差し掛かるとー
(表谷光剛さん)「横断行ってー、グッドムサシ」
ムサシと出会ってからまだ3か月ですが、表谷さんの命を守る大切な存在です。
(表谷光剛さん)「今はちょっとしか距離が縮まっていないですけど、ウィードのときみたいに、最終的にはお父さんと一緒にいれて良かったよって言ってほしいなと思って毎日接している。もっともっと絆が強くなっていくと良いだろうなと思う。そこを目指して歩いて生活しているという感じ」
10年より添った盲導犬ウィードの引退
(表谷光剛さん)「はいウィードハーネス、最後の散歩行くぞー」
ムサシと出会う前、表谷さんの目となりサポートしていたのは、ウィードでした。
(表谷光剛さん)「待てだよウィード、待て」
10年間、表谷さんに寄り添い、どんな時も一緒だったウィード。
12歳になる2025年に引退を迎えました。
(表谷光剛さん)「じゃあねウィード。元気でな、また会おうね。じゃあね、ウィード。ハーネスはもうすることないよ」
(表谷光剛さん)「最後ハーネスを外した後に、あえてハーネスに首を入れてくるっていうことは、置いていかないでお父さんっていう感じで多分いたんだろうなと思う。本当に切ないなっていう風には思いますよね。いろんなことが終わって、誰もいなくなってからもう本当に涙が止まらないって感じでした」
仕事をしている表谷さんをじっと見守っていたウィード。
いまはその場所でムサシが表谷さんに付き添っています。
(表谷光剛さん)「盲導犬と一緒になったことで、常に24時間一緒にいるわけだから、癒しになるし、そばにいてくれるだけで心強いなっていう風に僕の場合は感じる」
盲導犬は全盲の人が優先… 行きわたるのは希望者の3割程度
(杉本梢さん)「いまどこらへんかな?」
生まれつき視力が弱い弱視の杉本梢さん。
白い杖=白杖を使って一人で出かけます。
(杉本梢さん)「やっぱり自分が感じたことですべて判断しないといけないので。いつも迷いながら、よく迷子になりますし、迷いながら安全第一でって気持ちで歩いている」
日差しが強いと建物や人の姿がほとんど見えなくなるといいます。
(杉本梢さん)「太陽の光を浴びてしまうと、ちかちかフラッシュしてしまったり滲んだり部分的に白飛びしたり、そしてそれが一歩一歩動くたびに変わるのでかなり見えにくくなる」
点字ブロックのない道は自分の感覚に任せて進みます。
(杉本梢さん)「1つの頼りがなくなる感じです。妄想ですけどいいなーって、盲導犬と過ごしてみたいなって考えたことは何度もある」
杉本さんは盲導犬を希望していますが、全盲の人が優先となるため、まだ一緒に過ごしたことがありません。
(杉本梢さん)「体験で盲導犬と歩いたことはあるが、どことなく安心するというか、やはり自分一人で歩くのは精神的なエネルギーを使うので、いてくれるだけで心が優しい気持ちになって歩けるなと思いました。盲導犬の見ている世界からも情報をもらえるのは、白杖とは違った大切な情報になるのかなって」
全国で盲導犬を希望している視覚障がい者の数はおよそ3000人と言われています。
しかし、実際に活動している盲導犬は900頭ほどで、必要とする人全員に行き渡っていないのが現状です。
盲導犬1頭に約500万円 育成から引退まで資金確保が課題
表谷さんと別れたウィードです。
引退した盲導犬は老犬ホームで余生を過ごしますが、世話をする職員の人件費や食費など、多額の費用がかかります。
盲導犬1頭を育成し、引退後まで飼育するには500万円の費用がかかるとされ、資金の確保が大きな課題となっています。
(北海道盲導犬協会 和田孝文所長)「必要な資金の9割が一般の方々からの募金で賄わせていただいている。見えない方だけを対象にするのではなく、見えにくい方も対象にすることによって、いつでも安全に外出できる環境を整えていくのが私たちに求められている役割ではないかと考えている」
(表谷光剛さん)「はいおつかれさま」
盲導犬のムサシと暮らし始めた表谷さん。
生活を支えてくれるムサシは、表谷さんにとってかけがえのない存在です。
(表谷光剛さん)「きょう暑いねとか、きょう空気気持ち良いねとか会話しながら歩くので、おのずと歩きながら笑顔になれる。お互いの気持ちを汲みながら、ともに進んでいけるっていうのが僕にとって心地よいので、だからこの子の気持ちをしっかり汲み入れながら、嫌われないように進んでいきたいなというのが今の目標ですね」
精神的にも大きな支えとなる盲導犬。
必要とする人が盲導犬と過ごせるように、1人でも多くの人の支援が欠かせません。