SHIROの新製品に採用!「日高昆布」の可能性に魅了され起業した大学生 コンブの価値を高める“若者の発想力” 北海道
北海道の未来を考える「みらいWEEK」。
きょうは「コンブ」に魅了され、会社を立ち上げた大学生です。
扱っているコンブは人気の化粧品にも採用。
挑戦を続ける22歳の女性を取材しました。
スキンケア製品に使われているのは…「日高昆布」
(客)「あー、いいですね」
人気の化粧品ブランド「SHIRO」。
店内には多くの女性客が訪れていますが、今、注目されているスキンケア製品があります。
(客)「めっちゃコンブ!コンブのヌルヌルがいい意味でモチモチに変化する感じでよかったです」
そうなんです!原料に使われているのは「日高昆布」。
その昆布を提供しているのが、現役の大学生。
若き女性起業家の挑戦に迫ります。
コンブに魅了された大学生「コンブにどんなポテンシャルが眠っているのか探る会社」
十勝の広尾町です。
社長の大砂百恵さんと副代表の錦古里大河さん。
2024年、2人は「e-Combu」という会社を立ち上げました。
(竹井アナウンサー)「この先が気になって仕方ないんですが…」
事務所の中に設置されたグレーのテント。
その中に入っているのは…
(竹井アナウンサー)「あ!すごい!」
(e-Combu 大砂百恵さん)「こんな感じでコンブがたくさんありますね」
(竹井アナウンサー)「全部、広尾で獲れたコンブ?」
(e-Combu 大砂百恵さん)「1袋15キロくらい入っているのが10個以上ありますね」
温度や湿度を管理し、保管されているのは「日高昆布」。
かたちや見た目が不揃いの規格外とされるコンブです。
(e-Combu 大砂百恵さん)「私たちはこういうコンブにどんなポテンシャルが眠っているのかを探っている会社」
広尾漁協から仕入れたそのコンブを、およそ5ミリの大きさまで小さくカットし出荷します。
(竹井アナウンサー)「かなり細かく砕けていますね」
(e-Combu 大砂百恵さん)「粉ではなくてちょっと粗め」
この、細かく裁断されたコンブに目を付けた会社がありました。
幅広い世代に愛されている化粧品ブランドのSHIROです。
9月に発売された新製品に大砂さんのコンブが使われています。
発売からわずか10日で完売!製品づくりに“地球温暖化”の影響も…
(SHIRO 小林美月さん)「少量でお肌に吸い付くようなもっちり感を体感いただけます」
1本で肌の潤いをキープし、保湿ケアもできるオールインワン美容液。
発売からわずか10日で、1か月分の在庫2800本が完売しました。
(客)「サラサラして。べとべとするのが苦手なんですけど、めっちゃつけやすかったです」
自然の素材を活かすSHIROでは、これまで「がごめ昆布」を使ってきましたが、水揚げ量が減少。
原料集めに悩んでいたときに大砂さんの「日高昆布」を知ったといいます。
(SHIRO 小林美月さん)「もともと使っていたがごめ昆布が、地球温暖化の影響でなかなか獲れなかったり、日高昆布のように海に打ちあがってしまっているものが増えたとか、そういったところで季節や環境に合わせたモノづくりを大切にしています」
日高昆布を使った新製品がもうひとつ。
ビタミンやミネラルが含まれたフェイスマスクです。
(竹井アナウンサー)「開けると…ちょっと磯の香りがする」
ベタつきはなく、さらっとしていて、水分が肌に広がるような感じでした。
(竹井アナウンサー)「すごい、モチモチしています」
(e-Combu 大砂百恵さん)「あとに残らない感じがとってもいいですよね」
大砂さんが日高昆布を活用しようとしたきっかけは、浜に打ち上げられたままのコンブを見たときでした。
コンブの入手に難航…漁師の信用を得るためにとった行動は?
(e-Combu 大砂百恵さん)「私は稚内生まれなので、利尻昆布を食べて育ったんですけど、もっと有効活用できるんじゃないかなって。海藻・コンブを通してならこの世界をもっとよく出来るんじゃないかみたいな」
小樽商科大学でビジネスを学んでいた大砂さんは、4年生の錦古里さんと出会い、会社を立ち上げました。
ところが、最初は漁師の信用を得られず、コンブを仕入れることができなかったといいます。
(e-Combu 大砂百恵さん)「漁業権というものを超えるには漁師さんのサポートが必要で、めっちゃ難しかったんですけど、広尾のコンブを使っていきたいんだっていうのを漁師さんに本気で知ってもらうためには、もうこれは漁師さんの隣に住むしかないって思いました」
自分たちのことを信用してもらおうととった行動が、広尾町への移住でした。
(吉田秀司さん)「2階に引っ越してきました、お願いしますって来たの」
(e-Combu 大砂百恵さん)「初日にお風呂入るかいって言ってくださって」
(吉田秀司さん)「寒かったんだ、その日。ストーブも持ってこないし電気もないし」
いまでは漁師の吉田さんとまるで家族の一員!
コンブ漁の手伝いや食事を一緒に囲んで関係を深めたといいます。
(吉田秀司さん)「e-Combuとかいうの何をやる会社なのかなと思って、大丈夫か?と思った。良い考えだと思うよ、コンブをいろんな使い方してもらっているからさ、そしていまはSHIROまでいったでしょ、すごいなと思って」
若者の新たな挑戦「新しい目線でコンブの価値を引き出したい」
大砂さんが新たに挑戦しているのは、養鶏です。
与えるエサの配合を研究しています。
(e-Combu 大砂百恵さん)「黄色いのがトウモロコシ、黒いのがコンブですね。だいたい質量の1%くらいコンブを加えています」
広尾町の農家から譲り受けた5羽のニワトリにコンブを与えています。
生んだタマゴを割ってみると、黄身の色は黄色からオレンジに変化してきたといいます。
(竹井アナウンサー)「すごくクリーミーです。口の中にタマゴの甘味がふわっと広がっていきます。ねっとりしている感じ」
(e-Combu 大砂百恵さん)「いまは飲み水が普通の水なんですけど、コンブからだしを取った液体を飲ませてみたいなって思っています」
(竹井アナウンサー)「だしを飲むニワトリって聞いたことないですね」
(e-Combu 大砂百恵さん)「ないですよね。タマゴは水分が多いので、だしを飲ませたらいろいろ変わるかなと想像しています」
コンブの魅力を引き出し、新たな価値を生み出す大砂さん。
(竹井アナウンサー)「未来に向けて、今後どういった活動をしていこうと思っていますか?」
(e-Combu 大砂百恵さん)「コンブ産業がずっと未来でもあり続けてほしいなと思うので、自分たちはまずコンブの価値を上げる。地域に眠っている資源をどんどん掘り起こして、私たちの新しい目線で価値を引き出していきたいと思います」
若者のチカラと発想力が地域の未来に新たな可能性を切り開きます。