明治から続く老舗の味「緑色のそば」深夜も満席!?世代を超えて継承 特有の食文化が根付くワケ...北海道釧路市

有数のそばの産地でもある北海道。
意外にも海の幸が売りの釧路も「そばのマチ」をアピールしています。
明治時代から続く老舗の味や個性あるメニューが多いのが特徴です。
独特な食文化が根付くワケを取材しました。
釧路はシメそば文化が定着 「そば」の色は緑色!
釧路市内に、客で賑わうそば店があります。
お目当ては独特の緑色のそば。
コシが強くダシが効いたそばつゆに合うと評判です。
(来店客)「おいしかった」
(来店客)「そばが好きで長野など色々回りますが、とり肉もおいしいしバリエーションがあっていい」
混みあう店内で時計の針がさしているのは1時20分。
この時間は昼ではなく深夜です。
夜中でも席は埋まり、待つ客は珍しくありません。
(そば処 星の 星野克治店主)「夏場は外まで並ぶ。『ここだけ異例だね』と言われるくらい」
以前は通常の時間帯にそば店を経営していた星野克治さん。
夜にそばを食べたいと飲み仲間から頼まれ、6年前に店をオープンしました。
釧路ではお酒の後の「シメそば」文化が定番です。
(釧路の客)「お酒を飲みに来た帰りはけっこう来る。ラーメンは(胃に)重たいので、そばの方があっさり食べられておなかに優しい」
(転勤で全国を回る客)「釧路のそばを堪能しています。シメがそばは(全国でも)なかなか無い。そういう文化なんですね」
(釧路の客)「シメそば派が多いです」
なぜ、産地ではない釧路でそば文化が生まれるのか。
店主の星野さんは、自らも修行した老舗の存在が大きいといいます。
(そば処 星の 星野克治店主)「竹老園さんと思う。父がのれんを受け継いだ流れで続けてきたが、深いことはわかっていない」
緑色のそばが定着したワケ 「色で新そばを感じてほしい」
2024年、創業150年を迎えた老舗そば店「竹老園」です。
開店するとほぼ満席にー
市民が仕事の客や帰省した家族をもてなす長年愛される店です。
(札幌から来た客)「ダシと合っていてさっぱりしていておいしい」
(80年以上通う釧路の客)「そばといえば竹老園さんですね。コシがあっておいしい」
(釧路出身の客)「ソウルフード。そばは緑色と思っていました」
緑色のそばが釧路で定着したのは竹老園が始まり。
緑色の秘密は海藻の一種「クロレラ」です。
クロレラを練り込んだ更科そばは、そば粉7割に小麦粉が3割。
お湯を加えて丁寧にこねていくと…
新そばのような緑色に変わります。
客に色で新そばを感じてほしいと創業当時、東京の店を参考にしました。
(竹老園 東家総本店 伊藤純司社長)「(東京の店が)そばの葉をすり下ろし混ぜて緑色にしたのが始まりで、(客に)大変うけていた。東京の神田藪そばが始めたがそれをまねたらしい」
そば粉などの原料や器具が移り変わるなかで、創業当時の味にこだわり、伝統を守ってきました。
竹老園は明治7年、小樽で夜間に移動式の屋台でそばをふるまう「夜鳴きそば」の店を始めたのがルーツです。
釧路には明治45年に「東家本店」として開業しました。
隣の火事で店が全焼するなど、苦難を乗り越えながら営業を続け…
昭和29年、天皇・皇后両陛下が竹老園のそばを召し上がりました。
そのそばはつなぎに卵をふんだんに使った「蘭切りそば」です。
(竹老園 東家総本店 伊藤純司社長)「蘭切りそばを(昭和天皇が)おかわりされたので、(3代目は)涙を流して感激したと聞いている」
(蘭切りそばを食べた客)「昭和天皇がおかわりされたそばなので食べました。シコシコしていてうまい」
地元で支持される「釧路のそば」は、世代を超える地域の食文化として2024年、「100年フード」に認定。
その大きな理由が竹老園の存在でした。
名物メニューといえば…お酢とショウガの相性が人気のそば寿司です。
そしてこちらはゴマ油の香りが漂う「無量寿そば」です。
生卵を溶くと油っこくなく、夏でも食欲をそそる一品です。
(竹老園 東家総本店 伊藤純司社長)「黒ごま油は希少で、ポリフェノールが加わるので白ごまより栄養価が高いといわれている」
珍しさにひかれ注文した客はー
(東京から来た人)「食感も味もごま油を混ぜるのは東京にはない味。次は大盛りを食べると思う」
市民団体は、釧路自慢の「無量寿そば」をアピールしようとグッズを作るようになり…
家庭でも味わえるようにと、大手コンビニエンスストアも仕掛けました。
4年前から商品化し、道内の店舗で期間限定の販売を始めたのです。
夏の売り上りげは冷たい麺類のベスト3に入ります。
竹老園と同じごま油を使ったこだわりの一品。
商品の開発担当者が「無量寿そば」にほれ込み実現しました。
(武田記者)「竹老園でも食べたことがあるが、ごま油の風味が出てそばとマッチしておいしい」
(ローソン北海道カンパニー 長野正宏さん)「最初は『竹老園の味は再現できないよ』と言われたが、同じダシを工場でとって何度もあきらめずに改良した商品を持って行って、『これならローソンで発売していいよ』と」
「そばのマチ釧路」の知名度アップへ 受け継がれる食文化
創業65年のこちら店も「そばのマチ釧路」を盛り上げています。
ご主人のこだわりは、そば本来の香りが楽しめる手打ちの田舎そば。
そこに厚岸産の大粒のカキを豪快に乗せ完成したのはー
ミシュランを2度獲得した看板メニュー「かきそば」です。
カキから出るうま味とカツオとコンブダシのつゆが太切りのそばによく絡みます。
客の7割が注文するという「かきそば」。
釧路の家族連れは、本州から帰省した親子に食べさせたいと店を訪れました。
(埼玉県から来た人)「カキも大きくて身もプリプリで5個も6個も入っていてすごいし、そばも少し硬めで食べごたえがあっておいしい」
(埼玉県から帰省した人)「昔は緑色のそばが当たり前と思っていたが、茶色の玉川庵のそばもおいしい」
ご主人もかきそばに自信を持っています。
(元祖かきそば玉川庵 新浜茂代表)「釧路は人口の割にそばを好きな人が多い。(今後も)かきそば一筋でいきたい」
一方で、竹老園は「そばのマチ釧路」の知名度を上げたいと話します。
(竹老園東家総本店 伊藤純司社長)「(まだ釧路は)全国レベルではないので。山形や長野がそばといえば出てくるが、そばといったら釧路と言われるようになりたい」
老舗の味を守りながら個性的なメニューを展開する「そばのマチ釧路」。
受け継がれる食文化を発信し続けます。