人身被害相次ぐ異常事態「なぜ息子が?」父親の思い…コメント全文 札幌の“ヒグマ対策”最前線を取材
2025年は全国でクマの出没が相次ぎ、人身被害が発生する異常事態となっています。
札幌でクマ対策に向き合い最前線に立つ現場を取材しました。
札幌市内でクマ対策を進める清尾さんです。
(札幌市環境共生担当課 清尾崇係長)「庭にある木が折られているということで、それがクマによるものかどうかというのを確認しに行く」
この日、痕跡調査を特別に取材させてもらいました。
向かったのは住宅の庭です。
根元から木が折られていました。
(山本記者)「これはクマのもので間違いない?」
(札幌市環境共生担当課 清尾崇係長)「そうですね。この太さの木を折れるのはクマしかないので」
この庭では数日前からクマの足跡が確認されていました。
(札幌市環境共生担当課 清尾崇係長)「古いけどかじっている。(出没は)1回だけじゃないのか」
クマが食べていたのはマルメロという果実。
普段クマが食べることはほぼないといいます。
(札幌市環境共生担当課 清尾崇係長)「これを食べているのは毎年あまり見ることはない。食べる物がないのかなと」
唯一残されていたクマのものと思われる毛を回収しました。
(札幌市環境共生担当課 清尾崇係長)「ことしは餌がなくて来ているから、もしかしたらあと1回くらいは夜の間に来るかもしれない。これが毎年昼間から出てくるようになったら怖い」
クマの出没相次いだ北海道…ハンターも異常性を指摘
札幌では2025年―
(山本記者)「クマがすぐそこにいるようです。住宅街に銃声が響いています」
10月には冬眠前のクマが住宅付近に相次いで出没。
(山本記者)「子グマ2頭が何かを食べています」
(山本記者)「道内初の緊急銃猟での発砲となります」
引き金をひいたハンターはー
(ヒグマ防除隊 玉木康雄隊長)「だいたいこのあたり。ここから山の中腹くらいに(クマの)体が3分の1くらい」
緊急銃猟でクマを駆除した玉木康雄さんです。
2025年のクマの異常性を指摘します。
(ヒグマ防除隊 玉木康雄隊長)「今まで問題個体とされている個体というのは基本的に豊かな山から追い出されてしまった結構弱い個体が多かったんだと思うんですけども、ことしはそれだけじゃなくてかなり大型の個体も下りてきている。ことしのクマは本当にもう飢えに苦しんで里山の方に下りてきちゃっているんですよ」
道内では2025年、クマに関する通報件数が5000件を超え過去最多となりました。
なぜ、このような事態になっているのでしょうか?
(北海道大学獣医学研究院 坪田敏男教授)「冬眠前の準備をするにあたって、一番大事な食べ物であるどんぐりが不足していて、その餌を探して人里に出てきてしまったというパターンなんだと思う。特に札幌周辺域に関してはちょっと増えすぎている傾向はあるんだろうなとは見ていますね」
クマに襲われ死亡する事案も…父親が抱く無念の思い
7月には命が奪われる深刻な被害が起きてしまいました。
福島町では新聞配達中だった男性がクマに襲われ死亡。
事故から6日後。
道路を横切るクマが確認され、その1時間後。
深夜の住宅街にはただならぬ緊張感が漂いました。
(山本記者)「いま大きな銃発音が鳴り響きました。住宅街に銃声が鳴り響きました」
男性を死亡させたクマが駆除された瞬間です。
その後、クマの毛を分析した結果、4年前にも女性を襲い死亡させていたクマだったことがわかりました。
この衝撃的な事故からわずか1か月後。
(通報)「友人がヒグマに襲われた」
8月、知床半島・羅臼岳の登山道で、東京の男性26歳が友人と下山中にクマに襲われ死亡しました。
世界自然遺産に登録されてから初めての人身事故となりました。
この事故で亡くなった男性の父親が、STVの取材にいまの思いをコメントしました。
(亡くなった男性の父親)「なぜ、息子が?その答えを探して、3か月が経ちました。毎日のニュースでクマの事が報道されます。心が休まることはありません。当時、息子に「助けられなくてごめんな」と声をかけたのを覚えています。息子の無念さを思うと、私たち夫婦は、悲しみのあまり、胸も張り裂けんばかりです。」
羅臼岳への登山口は今も閉鎖されたままです。
クマと向き合う市の担当者「しっかり対応できる体制づくりを」
札幌市の清尾さんは、痕跡調査で採取したクマのDNAから行動範囲を分析しています。
(札幌市環境共生担当課 清尾崇さん)「ここが平和丘陵公園で、2015年にDNAが確認されている」
9月、札幌市西区の公園でイヌの散歩中だった男性がクマに襲われ負傷。
この時採取したフンを分析したところ、10年前に採取した毛とDNAが一致したのです。
(札幌市環境共生担当課 清尾崇係長)「少なくとも10歳以上。山奥を中心に動いていた個体が何らかの理由で公園まで出てきた」
最前線でクマと向き合う清尾さんはー
(札幌市環境共生担当課 清尾崇係長)「駆除や個体数管理のほかに寄せ付けない対策。もっと早く動けたのではないかなとか、もっとうまい仕組みがあればというところはこの冬眠の間に体制を立て直して、また来年以降しっかり対応できるような体制づくりをしていく必要がある」
【コメント全文】世界自然遺産に登録以降初の人身事故 亡くなった男性の父親の言葉
なぜ、息子が?
その答えを探して、3か月が経ちました。
知床羅臼岳の登山道ヒグマに襲われ命を落としたのは、私たち夫婦の自慢の息子。
享年26歳、短い人生でした。
この3か月の間、冷静になりたいのに、
全国で人身被害と出没騒ぎが続き、毎日のニュースで熊の事が報道されます。
心が休まることはありません。
息子が亡くなってから、山に登ったり、ロードバイクに乗ったりしています。
ハイキングはよくしていましたが、ちゃんとした山登りは、息子が亡くなってからです。
当時、息子に「助けられなくてごめんな」と声をかけたのを覚えています。
息子を襲った熊は私の手で駆除したかったですが、それもかないませんでした。
息子の無念さを思うと、私たち夫婦は、悲しみのあまり、胸も張り裂けんばかりです。
2025年11月 父