海と山の二刀流!猟師が感じた「海の異変」…生き抜くために選んだ「猟師」の道 “ハンター×ハンター” 北海道
海と山の二刀流で生きる“りょうし”がいます。
海の“漁師”と山で獲物を狙う“猟師”。
海の異変に向き合いながらも、「笑顔」で2つの仕事をする姿には、これからの時代を生き抜くためのヒントがありました。
「確実に水の変化はある」肌で感じる“海の異変”
明け方から昼間にかけては海の漢。
しかし、陽が傾くとその姿は一変。
獲物狙って駆け回る山の漢にー
(前田貴宏さん)「やりがいはありますよね。生き物相手なので本当に難しいと思うんです」
「漁師」と「猟師」。
“令和の自然”を相手に生きる「海と山のハンター×ハンター」の物語です。
太平洋を抱く北海道白糠町。
暖流と寒流が交わる絶好の漁場。
マチは海と共に栄えてきました。
安全と豊漁を祈る例大祭では神輿が海にー
このマチで生まれ育った前田貴宏さん47歳。
この時期はサケのトキシラズの定置網漁です。
前田さんのトレードマークはこの「笑顔」と「笑い声」。
チームで仕事をする「海の漁師」は、コミュニケーションがかけがえのない時間なのです。
(漁師)「一言で言えばムードメーカーだな。この人が来てから仕事場が明るくなって楽しくなった」
実は、仕事の半分以上は「網の修復」です。
(前田貴宏さん)「どれやれって言ってんの?これかい。これはひどいね」
(記者)「網の長さは何メートル?」
(前田貴宏さん)「なんぼあんだ?何メートルあるべ。300メートル以上あるよ」
2025年の秋に見舞われた記録的な大雨で川が氾濫。
大量の木が海へと流れ込み、網に無数の穴が。
修復作業はいまなお続き、費用も数百万円以上に及びます。
(前田貴宏さん)「漁師ってのはこういう作業が基本的にあって、見えないところでみんなこんな感じでやっている」
前田さんが漁から戻ってきました。
本命のトキシラズではなく、ブリも目立ちます。
どこか浮かない表情の海の漢。
(前田貴宏さん)「(トキシラズが)きょうは4本。ブリが3本。少ないです。全然でしたね」
わずか数年前は、1回の漁で300匹に迫る勢いで水揚げされていたトキシラズ。
この日は他の船と合わせても、たったのこの数です。
(前田貴宏さん)「仕事をしていても水温も高いしぬるいのはわかるので、確実に水の変化はありますよね。ここ数年はこんな感じです」
肌で感じる「海の異変」。
漁師だけでは食べていけない現実がすぐそこに。
生き抜くために選んだもう一つの「現場」エゾシカの有害駆除
夕方、静まり返る山の中に前田さんの姿がー
ここが時代を生き抜くために選んだもう一つの「現場」です。
(前田貴宏さん)「鉄砲に興味があったのが第一前提で、狩猟というものにも興味があった。地元のハンターに連れてってもらったのが始まりなんだよね。あ、いたね。あれやるかい。戻るかな。戻るわ」
チームワークの海の仕事から一転、すべてが孤独な山の仕事。
白糠町ではエゾシカの有害駆除の報奨金は1頭につきおよそ1万円。
深刻な食害・農業被害は2億4000万円にも迫ります。
(酪農家 鹿野諒太さん)「山の上はきょう行ってきました」
(前田貴宏さん)「出てた?」
(酪農家 鹿野諒太さん)「そうですね。親子2、3頭」
農家とは自然を相手に生業を立てる者同士。
共感することも多いといいます。
(前田貴宏さん)「本当に農家もエサが高いなか、どんどん毎日食われてさ。そういう苦しみも不安もわからないでしょ。なんぼでもお金なんて手元に残したいんだから」
前田さんの思いは「さらにその先」にー
駆除したシカは地元の加工業者に届けます。
(イェーガー 江刺家勝代表)「子どもを産んでいないシカなので、状態はかなりいい方だと思いますよ」
そのまま白糠町内の寿司店へー
骨付きのロースは表面を軽く焼いたあと、オーブンで1時間以上、じっくりと火を通していきます。
(前田貴宏さん)「うまっ」
(イェーガー 江刺家勝代表)「何を食わされてるのかわからないわ」
(前田貴宏さん)「シカって感じがしない」
(前田貴宏さん)「ラムと同じで多少癖があっても『懐かしいよね』みたいな感覚と同じような感覚で、地元発信にしていきたいというのがある」
地元の恵みを広く発信したい。
それも前田さんが目指すところです。
漁師と猟師の二刀流 2つのフィールドで挑戦続ける
自然相手の厳しい現実に対峙しながら、漁師と猟師の二刀流でたくましく生き抜いて見せる。
前田さんの長い一日の終わりです。
(前田貴宏さん)「きょうは(漁が)無理だから、このまま丘の仕事に行きます。給料はあるから、最低限は保証されているけど、獲れなかったら寂しさはありますよ」
変わりゆく海の厳しい現実。
しかし、前田さんは笑顔で海に山に向かいます。
(前田貴宏さん)「(漁師は)昔みたいな働き方ではなくなってきたのかなって気がします。シカのことを勉強して、自分でも小さい工場を持ってやりたいなというのもあるし、浜ともまだこうやって関わっていたいなというのもあるので、とどまらないで登っていきたいなという思いはあります」
海を愛し、山を守る。
2つのフィールドで挑み続ける「海と山のハンターハンター」の生き方は「新しい漁師像」の羅針盤と言えそうです。
