大学発のベンチャー企業2.5倍に 業界に新風吹き込む若き起業家に密着 世界進出目指すラーメン店やクラフトビール醸造も

煮干しだしの中華そばに昆布水つけ麺。
新たなラーメンを開発し、世界進出を目指す若者と、クラフトビールを文化として根付かせようと奮闘する大学生。
業界に新風を吹き込む2人の若き起業家を追いました。
学生企業のラーメン店がすすきのに 3年間で4店舗に拡大!
(スタッフ)「特上夜鳴き中華そばです」
もちもち食感の中太麺に、煮干しの旨みを凝縮したあっさりスープ。
シメにぴったりのラーメンです!
(客)「すごくおいしくて。あっさりしているんですけど、出汁に深みがあって、飲んだあととかにすごくいいかな」
札幌・すすきののど真ん中にあるラーメン店・ICHI。
経営するのは盛大地さん24歳。
若き起業家です。
(ICHI代表 盛大地さん)「札幌のラーメン屋さんの人たちに憧れていたので、札幌で将来お店をつくりたいと思っていて」
店を立ち上げたのは3年前。
盛さんは現役の大学生でした。
創業当初から煮干しを使ったスープに道産小麦の中太麺など、素材にこだわったラーメンで勝負。
順調に売り上げを伸ばしました。
(ICHI代表 盛大地さん)「1年以内にもう1店舗、いい場所を見つけ次第、その場所にあったラーメンを作りたい」
そう話していた盛さんが向かった先はー
(ICHI代表 盛大地さん)「ここがTSUKEMEN ICHIです」
3年前の宣言通り、7か月後には2店舗目をオープン。
備長炭で焼き上げた鶏モモチャーシューに昆布水を使ったつけ麺が評判です。
その後も出店を続け、今は4店舗を展開。
それぞれに趣の違うラーメンを打ち出し、人気を得ています。
盛さんはここ1年、現場に立たず経営に専念してきました。
(ICHI代表 盛大地さん)「初めて給料を現金で渡したんですけど、これだけやってくれているのにこれしか渡せないんだということを思った時に、経営者としてちゃんとやっていかなければならないと」
業績伸ばし売り上げ1億円に到達! 大学発のベンチャー企業が急増中
その効果はすぐに表れ、2024年度の売り上げは前の年の2倍、およそ1億円に達しました。
取材中、業績を伸ばした理由が垣間見えるシーンがありました。
メンバーとミーティングを兼ねた昼食です。
食べているラーメンはー
(スタッフ)「彼らに作ってきてと言われたので」
(ICHI代表 盛大地さん)「全然メニューにないものを突然作ってと言って、普段のメニューは作り方が決まってそれを作っているだけですけど、0から1のレシピの構築が大事だと思っていて」
まかない作りも新たな開発の場。
(ICHI代表取締役 盛大地さん)「頭おかしい」
(スタッフ)「麺なにしたの」
(スタッフ)「冷やしてキャベツかけて豚骨の背脂をチャッチャしました」
メニューをより良くするための積み重ねが、業績アップにつながっているといいます。
(ICHI代表 盛大地さん)「(客は)こういうラーメンが出てくるだろうと思って来ると思うんですけど、お客さんの求めている想像のちょっと上を行けるかみたいな、お客さんを楽しませるというのが大事だと思っていて」
1人で始めた会社は、若いメンバーを中心に14人まで増えました。
(入社2年目)「楽しいです。毎日本当に楽しいです」
(入社2年目)「自分たちの個性を最大限活かせる場所だと思っていて」
(ICHI代表 盛大地さん)「大学のときに起業したぼくの会社としてできることって何だろうなと考えた時に、若いチームで飲食業界を盛り上げて、さらにいいものに持っていくことができるか考えた上でやっていきたい」
盛さんのように大学に在籍しながら起業する人がいま増えています。
大学発のベンチャー企業は4000社を超え、この10年でおよそ2.5倍に増加しました。
北海道大学の現役大学院生が挑戦しているのは…
フルーティーな香りとスッキリした苦みが特徴のクラフトビール。
これも大学発のベンチャー企業が手がけました。
(パイオビア代表取締役 宮地帝輔さん)「お疲れさまです。おはようございます」
札幌市白石区のビール醸造所です。
訪れたのは北海道大学の大学院生、宮地帝輔さん25歳。
2023年にクラフトビールを開発する会社を立ち上げしました。
醸造所を持たず、ビールの製造は委託しています。
(パイオビア代表取締役 宮地帝輔さん)「う~んいいですね、スッキリ。7月ごろにどんどん出ると思うので、少し炭酸があってもいいかなと、いままでより」
(醸造家)「強めに?」
(パイオビア代表取締役 宮地帝輔さん)「そうですね」
夏場にスッキリ飲めるようにと炭酸の増量を依頼。
理想の味を追求しています。
農家を志し、北大農学部で学んでいた宮地さん。
転機が訪れたのは3年前、ヨーロッパでの農業研修のときでした。
(パイオビア代表取締役 宮地帝輔さん)「ビールの文化、町ごとに味わいの違うビールが愛されていたり、そういったところを日本の人に知ってほしいという思いと、日本オリジナルの新しい文化をどんどん醸成していく、そこに貢献できたらうれしい」
本場でクラフトビールに魅了された宮地さんは帰国後、ビール作りに没頭。
開発したビールは北大のキャンパス内で販売されています。
(東京からの観光客)「けっこう苦みがあってスッキリした感じ。おいしいと思う」
北大生の宮地さんが作ったクラフトビールは、カフェにとってもメリットがあります。
(ミュージアムカフェぽらす 浅野目洋平店長)「北大の魅力も伝えられるし、ほかの場所で販売するよりも北大の中で飲めるというのは付加価値が高いと思って声を掛けた」
売り上げも徐々に増え、北大発のクラフトビールの可能性は広がります。
(パイオビア代表取締役 宮地帝輔さん)「より多くの人が面白い多様なビールを手に取って飲むきっかけを広げて作っていきたいと思うので、クラフトビール業界を巻き込んで盛り上げていける存在になりたい」
若き起業家の飽くなきチャレンジ精神 業界に新たな進化を
すすきののラーメン店・ICHIです。
オープン前からご覧の行列。
この日は特別メニューを提供する、月に一度のイベントです。
店内では盛さんが最終チェック。
(ICHI代表 盛大地さん)「麺うまくなったね」
3か月かけて開発した「薄野家系ラーメン」。
濃厚な豚骨スープが際立つ自信作です。
(ICHI代表 盛大地さん)「半年なのか1年後なのか分からないですけど、間違いなく店舗化するので、それを目指して初めてお客さんに出すので、めちゃめちゃわくわくしていますね」
盛さんは2025年度中に、札幌やメキシコなど新たに3店舗の出店を目指しています。
家系ラーメンは札幌の新店の目玉商品で、イベントを成功させて弾みをつけたい考えです。
(客)「バカうま」
(客)「あぁ~うめぇ」
反応は上々。
客足は途切れることなく、ラーメンは完売しました。
(ICHI代表 盛大地さん)「これだけのお客さんが来てくれてうれしいんですけど、初めてお客さんに出してみて反省点も沢山あると思うので、それを基に来月もイベントがあるのでそれまでブラッシュアップしていければ」
より良い一杯を求めて。
若き起業家の飽くことのないチャレンジ精神が更なる進化を生み出しています。