現場の登山道に獣道 危険事例は前年2倍“ヒグマとのあつれき表面化”観光客の問題行動も 羅臼岳

北海道・羅臼岳で2025年8月14日、登山道で東京都に住む男性(26)がヒグマに襲われ死亡した事故を受け、環境省や道などは事故の概要や今後の対応を発表しました。
また、事故が起きた現場の写真が公開されました。
事故発生現場の見取り図
事故があった現場周辺の見取り図です。
山頂から岩尾別温泉方向に向かって進むと、560メートル岩峰にぶつかり小広場となっていて、登山道上にあるバツ印の地点で事故が起きたことがわかりました。
現場の道幅は約110センチ
被害にあった男性は、緩やかな右カーブの登山道を下山中にヒグマに襲われていて、現場の写真からカーブの手前では事故発生地点が見えない状況になっています(写真①)
カーブを曲がり始めると、男性が襲われた地点が見えるようになり(写真②)、襲われた場所には登山道を横断するように獣道(白線)ができていました(写真③)
ヒグマの目線から登山道を見下ろすと(写真④)人がいるのが確認でき、男性が引きずり込まれた方向は背の低い木が生い茂り見通せない状況(写真⑤)でした。
観光など利用者の問題行動で“危険事例”は増加傾向
知床半島は全域がヒグマの生息地であり、道内でも目撃件数が突出して多い場所ですが、報告書によりますと、観光などの利用者の問題行動に起因する危険事例は増加傾向になっているということです。
2024年は危険事例がおよそ70件発生し前年の2倍に増えていて、観光利用などによる“ヒグマとのあつれき”が表面化していることが示されました。
知床半島全体では2017年以降、今回の事故を除いてヒグマによる人身事故が4件発生していますが、一般の利用者が死亡した事故は今回が初めてです。
今回事故があった岩尾別コースは、ヒグマの出没を理由に計画的に閉鎖(入山禁止)とした記録は過去になく、2010年8月に登山道上でヒグマがエゾシカを捕殺する事案が発生した際に調査のため一時的に閉鎖。その後8月25日に登山道直近の林内で捕獲したエゾシカを摂食していることが判明し、約1週間にわたり利用自粛を呼びかけた事例のみでした。
再発防止策として、事前準備や装備など登山者に求める登山のルールや規範、リスク情報の提供の在り方を検討するということです。