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倒産件数は過去最多 競争激化の美容室業界 人手不足や資材値上げ…生き残りかけた知恵と工夫

全国におよそ27万件ある美容室がいま、過去に例をみない苦境に直面しています。

取材を進めると、他店との差別化をはかる価格やサービスなどを提供し、生き残りをかけた努力が見えてきました。

決して安くない美容室代…1回2万円超の人も

みなさんは1回の美容室代にいくら支払っていますか?

(20代女性)「トリートメントとカット、カラーがセット。1万6千円くらい」

(50代女性)「6千円か7千円くらいですね。カラーとトリートメントだけ」

(30代男性)「8千円くらいですかね。カット、パーマとシャンプーと」

(20代女性)「1回で2万7千円くらい。くせ毛がひどくて、その髪質整形みたいなのをするとそれくらいの値段になります」

定期的には行きたいけど、決して安くはないのが料金です。

カット時間は約10分!企業努力で店舗拡大

破格の安さを打ち出す美容室があります。

その価格とはー?

(藤得記者)「こちらの美容室なんですが、カット690円と書いてあります。安いですね」

札幌市北区にある美容室です。

この店では平日正午から午後2時までの間、690円でカットを行っています。

お得な価格帯の時間には順番待ちが出るほど…。

690円で提供できる理由は、客の回転率を上げるカット技術にあるといいます。

(ハクブン広報部 岩崎麻由部長)「通常のカットのクオリティと変わらずにスピードを速く。通常の美容室さんの3分の1の時間で仕上げる技術をオリジナルで編み出しております」

そのカット技術を記者が体験してみました。

(美容師)「長さはどれくらい切りますか」

(藤得記者)「さっぱりとしていただきたい」

カットを始めてからスムーズに髪が切られていきます。

(ハクブン広報部 岩崎麻由部長)「今やっているのが連続刈り。くしをいれながら一度も指で(髪の毛を)持たずに髪の毛をすいていく」

(藤得記者)「ためらいがないというか、手際が良くサクサクサクサク切ってらっしゃる」

髪を留めるクリップの使用は最小限に。

工程の無駄を極力減らして切り進めます。

かかった時間は…

(藤得記者)「11分8秒」

カットにかかった時間はわずか10分あまり。

希望通りのすっきりとした髪型に仕上がりました。

「690円カット」実現のため、どんな工夫があるのかというと…

首元に巻くタオルは使い捨てのネックペーパーに変更し、タオルを洗濯する水道代や乾かす費用を節約しています。

(ハクブン広報部 岩崎麻由部長)「ことし一番コスト削減が進んでいるお店で、1か月で光熱費が約6万4千円低下しています」

カラーリングに使うチューブも…

(ハクブン広報部 岩崎麻由部長)「最後の最後までペンチで絞り出しまして、はけで出してまったくカラー剤が残らないようにして使い切っております」

こうした企業努力で店舗数は右肩上がりに年々増加。

北海道から沖縄まであわせて1200店舗を超えています。

(利用客)「いいですよ、すっきりして」

(利用客)「技術もそうだし、料金もそうだし、対応もすばらしい。ここを知ったらほかは行けない」

倒産数は過去最多…サブスクでリピート率向上を図る店

一方、美容室業界では人手不足や美容資材の値上げなどが店の経営を圧迫。

帝国データバンクによると、2024年度の全国の美容室の倒産件数は190件を超え、過去最多を更新しました。

こちらの店では客の来店頻度を増やそうと、あるサービスを行っています。

(グランディーヌ 有江優美さん)「こちらはカラーサブスクのチケットになっています。4か月間で6回まで根元染めができるようなチケットになっています」

定額料金でカラーリングが6回まで可能な「カラーサブスク」。

使うのは髪や頭皮に負担の少ないカラー剤です。

カラーリングをする客の8割ほどがこのサブスクを利用するといいます。

(3週間に1度利用する人)「かなりお得だと思いますね。特別(髪が)傷んだりとか感じたことはないですね」

(3週間に1度利用する人)「定期的に決めて来られるというのが予定が立ちやすいというのがあって、個人的には便利だと思う」

このサービスでリピート率向上につながるほか…

カラー染めにかかる費用が下がったことで、ほかのメニューも合わせて利用する客も増えたといいます。

(グランディーヌ 有江優美さん)「サブスクを利用しながらとなると、やっぱブロー代のみになるのでそこに重ねやすいので。ほかの美容室に比べたらお得な感じで、けどやっていることは内容良いみたいな感じになるのかなと」

お母さんたちに人気!保育園を経営する美容室

保育園を訪れたのは木下さんと1歳の穂風ちゃんです。

(保育士)「お預かりしますね」

わが子に後ろ髪を引かれながら木下さんが向かったのは…隣にある美容室です。

こちらでは美容室が保育園を経営し、利用客の子どもを一時的に預かるサービスを行っています。

生後2か月の子どもから預けることが可能です。

母親の木下さんは2か月ぶりのカットやカラーリングを楽しみます。

(木下さん)「まだ1歳くらいだとどうしても人の目が届くところでないと、どこか行ってしまったりとかしてしまうので、やはり保育士さんがいてくださる環境があるっていううのがいいかなって思います」

およそ2時間半、つかの間の癒しの時間を過ごすことができた木下さん。

一方で、保育園で待っていた穂風ちゃんも楽しい時間を過ごせたようです。

(木下さん)「ありがとうございます!楽しかった~!よかったね!」

(藤得記者)「穂風ちゃんもご機嫌になっていますし、いい時間でしたか?」

(木下さん)「はい、とてもいい時間でした」

子どもを持つ母親に人気のサービス。

美容室が保育園を開業した理由は、出産を経た女性スタッフが店に復帰し、安定した働き方ができるようにという考えからです。

仕事をしている間、子どもを預けるスタッフは…

(保育園に子どもを預ける 魚津彩香さん)「お迎えもギリギリまで働いてすぐ迎えにいって帰れるので、熱とかでたときにもお迎えとかもすぐ行けるので、その面では助かりますね」

店は今後も美容室にとどまらない多様なサービスで客の満足度を高めていきたいと話します。

(ウッドストック 今井健二さん)「一時預かりで預けた園が気に入ったのでちょっと試しに入園させてみたいというお客さんもいます。うちの美容室に来ることで初めて得られるメリットだとか、ほかとの違いというところを感じていただけるようにブラッシュアップしてやっていきたいなと思っています」

競争が激化する美容室業界。

生き残りのカギは「知恵」と「工夫」。

独自の価値を提供しようと店の努力は続きます。

08/30(土) 08:11

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