自治体は難色示す 上下分離方式の提案検討 赤字額は147億円余り“黄色線区” JR北海道
JR北海道は、赤字が続く8つの区間について、運行と設備の維持管理を分ける「上下分離方式」を含めた提案を検討していることがわかりました。
鉄路の行方はどうなるのでしょうか。
車窓には雄大な自然 地域観光の一翼担う「花咲線」
釧路と根室を結ぶJR「花咲線」です。
車窓には道東の雄大な自然が広がります。
終点の根室駅。
その目の前にあるのが、民宿「えびすや」です。
民宿を訪れたのは、菰渕さん家族です。
納沙布岬を見るために、はるばる四国の香川県からやってきました。
そんな旅人をもてなすのが、女将の青木恵美子さんです。
近海で獲れたサンマや旬のタラバガニ、アサリの酒蒸しなど、根室の食材を使った料理をふるまいます。
(民宿えびすや 青木恵美子さん)「花咲線から見えた景色はどうでしたか?」
(菰渕さん)「シカばっか見よったけん」
この日は函館から列車を乗り継ぎ12時間。
中でも印象に残った光景がありました。
(菰渕耀斗さん)「シカがここおるんやみたいな。花咲線になってからは(自然との)距離も近くて」
およそ135キロの鉄路には手つかずの原野が広がり、野鳥やエゾシカなどさまざまな動植物を見ることができます。
根室市は花咲線を「地球探索鉄道」と名づけて、その魅力を発信し、観光客の誘致に取り組んでいます。
(民宿えびすや 青木恵美子さん)「花咲線に乗るためだけに来ましたという人もいるんですよ。本当にいつまでもいつまでも走っていただきたいなと思いますよね」
地域観光の一翼を担う花咲線。
しかし、その行く末は不透明なままです。
赤字額は147億円余り…単独では維持困難「黄色線区」
JR北海道は2016年、花咲線など単独では維持困難とする8つの区間=黄色線区を公表。
地元負担を前提に存続を目指していますが、具体的な議論は進んでいません。
これまで沿線自治体とともに観光列車の運行など収支の改善に取り組んできましたが、2024年度の8区間の赤字額は、目標から12億円多い147億円余りに膨らんでいます。
(夢空間☆花咲線の会 鈴木一雄代表)「ここが昨年まで東根室駅だったところです」
花咲線を応援する会のメンバー・鈴木一雄さんです。
1961年に開業し、日本最東端の駅として人気を集めた花咲線の「東根室駅」。
しかし、利用者の減少などを理由に2025年に廃止となりました。
(夢空間☆花咲線の会 鈴木一雄代表)「(花咲線は)経営的にも大変だということは分かっていますし、(路線が)廃止になるよりは仕方ないのかなと思いますね」
沿線住民を対象にした調査では、およそ7割が「JRを全く使わない」と回答しており、地元の利用者減少が課題となっています。
(根室市民)「どうしても車の方が自分の好きな時間にも出られるし、慌てることなく行ける」
(根室市民)「(JRは)本数も少ないですし、車で行った方が便はいいかなって」
住民の鉄道離れが進む中、鈴木さんは花咲線に親しんでもらおうとイベントなどを企画。
2024年に開催した乗車会にはおよそ30人の地元住民らが参加しました。
花咲線の魅力を伝え、鉄路の存続を目指しています。
(夢空間☆花咲線の会 鈴木一雄代表)「観光客誘致も大事ですけど、やはり普段使う地元の沿線住民のみなさんも利用してもらえたらと思っております」
利用者の多くが高校生 駅移設で利用者6倍に増加
名寄市内を走るJR宗谷線です。
名寄から稚内までの間は、単独では維持困難な8区間の一つです。
名寄市にある名寄高校。
全校生徒およそ400人のうち90人ほどが士別市や美深町など市外から通っています。
そんな生徒たちの通学の足となっているのが、学校のすぐ目の前にある「名寄高校駅」。
登校時間になると多くの生徒が駅から学校へと向かいます。
(剣淵から通う生徒)「(駅から)すぐ高校が近くて助かっている」
(士別から通う生徒)「士別の学校まで歩くより(通うのが)楽だから名寄高校にしました」
名寄高校駅ができたのはいまから4年前。
それまで最寄り駅は高校から1.5キロ離れた場所にありました。
ただ、利用者のほとんどが高校生だったことから、近くの場所に移設されたのです。
利用促進のため、市がおよそ6000万円かけて駅を移設し、利用者はおよそ6倍に増加したといいます。
駅が身近になったことで生徒の関心も高まりました。
(前澤結人さん)「不便さを感じていた名寄高校駅を、情報技術科で学んだ知識をいかしてより良いものにしたいなって」
この春、卒業した前澤さんと川上さんは、CGを使って理想的な駅舎のデザインを考案。
駅舎をガラス張りの二重窓にして寒さを防ぐとともに、列車の到着がすぐに分かるよう工夫しました。
(前澤結人さん)「多くの人に(JRを)利用してもらえるきっかけだったり、知ってもらうきっかけをこの研究で作れていたらいいなと」
JRは“上下分離”の提案検討 難色示す自治体
赤字8区間の公表からまもなく10年。
(JR北海道 綿貫泰之社長)「当社単独でこの膨大な赤字を抱え続けることはできません。従って鉄道を持続的に維持する仕組み、すなわちコストの負担の仕組み、これが必要となります」
年頭のあいさつでこのように語った綿貫社長。
関係者によると、JR北海道は自治体などが線路など施設の維持・管理を担い、JRは運行に専念する「上下分離方式」を含めた提案を検討していることがわかりました。
JR北海道の費用負担が減る一方で、自治体側の負担が増すことになります。
宗谷線の協議会の会長も務める名寄市の加藤市長は難色を示します。
(名寄市 加藤剛士市長)「前向きな維持、あるいは収支の改善だとか、利用が促進されるだとか、そうしたものに対しての投資や支援はやぶさかではない。毎年毎年これだけ赤字になるので、その分の一部を補填してくださいみたいな支援の仕方はできない」
専門家は国も含めた費用負担の議論が必要だと話します。
(北大大学院工学研究院 岸邦宏教授)「物流に関して言えば、農作物が鉄道貨物を使って本州方面に運ばれているというのであれば、例えば農水省の予算を使うとか。誰が負担するっていうところも含めて、新たな制度とかも幅広く議論しながら進めていかないと、この問題っていうのは私は解決しないと思います」
JR北海道は、国から今年度末までに8区間の改善策を取りまとめるよう求められていて、近く提案を公表する見通しです。