【侵される大地】北海道に広がる外来種 案外身近な存在に?ペットや食用で道内へ 実態と対策を取材
「外来種」をめぐって2025年6月、猛毒のバイカルハナウドに似た植物が札幌市内で発見され、騒ぎになりました。
実はほかにも外来種の生物は私たちの身近な場所に潜んでいます。
その実態を取材しました。
暗闇の中、庭先に侵入した動物。
「外来種」のアライグマです。
(長南記者)「見えますかね、あそこにいるのが」
川の中を泳ぐ大きなザリガニ。
(北海道大学 田中一典専門研究員)「あっ、またいたほら」
そして、小さなカエルもー
生態系に影響を及ぼす恐れのある「外来種」が札幌のマチに広がっています。
札幌市清田区を流れる厚別川です。
(北海道大学 田中一典専門研究員)「ああ、2個体入っているね」
川の中に入り始まったのは、外来種の捕獲と調査です。
(長南記者)「見えますかね、あそこにいるのが外来種のウチダザリガニです」
見つけたのは「ウチダザリガニ」。
北アメリカ原産の外来種です。
研究を続けている北海道大学の田中一典さんです。
この厚別川や札幌市の豊平川などで調査をしてきました。
(北海道大学 田中一典専門研究員)「ウチダザリガニはこのハサミの付け根が白いんですよ」
繁殖力が強く、魚やエビを食べて成長するウチダザリガニ。
在来種のニホンザリガニに比べ、およそ2倍の大きさで、天敵はほとんどいません。
在来種や生態系に深刻な影響を与える恐れがある特定外来生物に指定されていて、飼育や野外に放すことなどが法律で禁止されています。
ウチダザリガニは1930年ごろに、国が食用としてアメリカから輸入し摩周湖に放流。
それから徐々に生息域が広がりました。
札幌市では2016年に南区の川で初めて確認されてから増え続け、今回3日間の調査で115匹が捕獲されました。
(北海道大学 田中一典専門研究員)「在来の水生生物がどのくらい減ったかというのは今のところ札幌市内は分からない。札幌市内の川はサクラマスもサケものぼりますので、そういうところでは影響が懸念されます」
北海道にいなかった在来種の姿も…
さらにー
(北海道大学 田中一典専門研究員)「あっ、またいたほら!これはアズマヒキガエルの子ども。ことし生まれですね。在来種なんですけれど、北海道にもともといなかったカエルです。北海道では国内外来種」
見つかったのは、毒を持つ「アズマヒキガエル」です。
(札幌市環境共生担当課 前河栄二さん)「外来種も少ないうちであれば対策も少しは容易ではあるが、一旦定着させるとそれを根絶させるのはほぼ不可能に近い。初期の段階から根気強く対策することが大事」
私たちの身近な場所に出没する外来種もいます。
北アメリカ原産のアライグマです。
9月、南区の住宅で撮影されました。
一方、厚別区の国道沿いにある住宅では、庭に仕掛けたわなにアライグマが入っていました。
札幌市から委託されているアライグマの捕獲作業です。
(札幌サニター 武藤駿さん)「寝床だと思って暗所に入る習性があり、自然と入っていく。ここはきのうも実は1頭とれていて、続けてきょうかかった」
住民が設置した防犯カメラには、未明に現れたアライグマが映っていました。
翌朝、確認すると庭の木に被害があったといいます。
(札幌サニター 武藤駿さん)「ここが家主の庭で、被害にあったプルーンの木。不自然に折れているのが分かると思うのですが、ここにアライグマが登って実をとるのに動かして折った跡だと思います。かなり食欲旺盛らしいので、食べつくすような勢いで根こそぎ持っていくことが多い」
被害が相次いでいるアライグマ。
捕獲の依頼は年々増えているといいます。
もとはペットだったのに…専用のわなも開発
いったいアライグマはどこからやってきたのか。
専門家に聞きました。
(北海道大学 池田透名誉教授)「我々の情報では、恵庭市で個人で飼育されていたところなんですが、そこから十数頭が逃亡して定着したというのが一番最初の記録になります」
もともとアライグマはペットとして飼育されていましたが、凶暴な性格のため飼いきれず、捨てられたり逃げ出したりして野生化。
1995年の調査でアライグマが確認されたのは24市町村でしたが、2024年は道内ほとんどの市町村に拡大しています。
(北海道大学 池田透名誉教授)「うちの研究室で開発した巣箱型わな。このわなはエサを一切使わないので、他の動物を呼び寄せることはありません。本当にアライグマだけが入ってくれるわなになっています」
池田教授は穴に入りたがるアライグマの習性を利用し、新たなわなを開発しました。
(北海道大学 池田名誉教授)「山の中にいるダニをアライグマがもって人里に入り込んでくる。人間に感染するルートが考えられる。これは今後注意しなければいけない大きな問題点。人間が入れたものですので、人間が責任をもって対策をするのが必要なことかと思います」
道内には植物の外来種も…侵される大地
外来種は動物だけではありません。
札幌市の円山公園でボランティア団体が駆除しているのは、ユーラシア原産の「イワミツバ」です。
(北海道自然保護協会 在田一則会長)「これは繁殖力が非常に強いので、在来のものが駆逐されてしまうという。それでこれを除去して在来の植物を増やす、もともとの生態系に戻そうということです」
団体では10年ほど前から、畑から広がったとみられるヨーロッパなどが原産のゴボウを駆除してきました。
その結果、ゴボウはほとんど見られなくなり、その場所にはふたたび在来種が芽吹き、本来の自然を取り戻しつつあります。
(北海道自然保護協会 在田一則会長)「この公園の中には外来種がたくさんあった。もとの生態系に戻してあげようという、それが一番自然にとって自然な姿である」
人間によって持ち込まれ野生化した“外来種”
その責任もまた人間がとらなくてはなりません。