客減少に原油高騰…苦境に立つクリーニング店 新サービスに活路 きれいにすることで生まれる“感動ストーリー”も!

衣替えのシーズン、冬物の衣類をクリーニングに出す人が多いのではないでしょうか。
しかし、クリーニング業界は店舗数が減少するなど苦境に立たされています。
その中で新たなサービスに取り組む店を取材しました。
「クリーニングだけだと厳しい」さまざまなサービス展開
手焼きしたサクサクのワッフルコーンに、後味すっきりのソフトクリーム!
中標津の牛乳を使ったスイーツを子どもたちが味わっていました。
こちらの店、実は…クリーニング店なんです。
コインランドリーが併設された店内にはカフェスぺースがあり、待ち時間を有意義に過ごすことができます。
(来店した客)「洗濯物を放り込んで1時間。ここでちょっとゆっくりして、ちょうどでき上がって帰る」
さらに、洗濯用品を中心に100種類以上のオリジナルの雑貨を販売。
なかでも自社で開発した洗剤は、ネット販売を含め年間10万個以上売れる人気商品です。
(とみおかクリーニング札幌本店 石原美紀店長)「4キロ45リットルの洗濯で約1回分が20gなんですけれども、大体このぐらいの量となっておりまして、使用量が少ないというのが特徴となっております」
もちろん普通のクリーニングも受け付けていますが、いろいろなサービスを展開するのには理由がありました。
(とみおかクリーニング札幌本店 石原美紀店長)「スーツをクリーニングに出すということですとか、クリーニング自体の件数は非常に落ちている。クリーニングだけだと厳しい現状にあるので、よりご家庭での洗濯に寄り添った商品をということで、雑貨店も一緒にオープンしたという次第でございまして」
店舗数は年々減少 100年以上続く老舗も原油高騰が負担に
クリーニング店はいま、苦境に立たされています。
札幌市豊平区の浅井照延さん77歳。
妻のみきさんと2人で店を切り盛りしています。
(浅井クリーニング店 浅井照延さん)「全部毛玉もとるんです、うちは。親の代からやっていることを、とにかく丁寧に丁寧にというので」
創業から100年を超えますが、利用客が減少していると嘆きます。
(浅井クリーニング店 浅井照延さん)「(利用客は)明らかに減っていますね。それで洗濯屋はみんなどんどん辞めていっていると思う」
洗濯物を干す乾燥室はー
(浅井クリーニング店 浅井照延さん)「毎日毎日夜びっちり干していましたね。いまはこの通りがらんとしていますね」
スーツを着て働く人が減っていることもあり、20年前と比べて半分程度になったといいます。
さらに追い打ちをかけているのが、原油価格の高騰です。
作業に欠かせない蒸気を出すボイラーは、月におよそ250リットルの灯油を使います。
(浅井クリーニング店 浅井照延さん)「これとこれがドライクリーニング用の洗剤ですね」
石油由来の洗剤はこの20年で1.5倍に値上がりしました。
(浅井クリーニング店 浅井照延さん)「使うよりしょうがないから、なるべく節約しながら無駄にしないようにやっていますね」
親から店を継いで5代目になる浅井さん。
丁寧な仕事が常連客の支持を得ています。
(クリニックの院長)「40年以上(のつきあい)になると思います。ボタンが緩んでいるのも全部付け直してくれたりして、非常に助かっています」
(浅井クリーニング店 浅井照延さん)「先行き考えるといろいろ心配なこともあるんだけども、できれば少しでも長くやっていきたいですね」
全国のクリーニング店の数は年々減り続け、10年前から35%も減少。
家庭用洗濯機の機能が上がっていることも背景のひとつにあるといいます。
衣類以外もきれいに!クリーニングが生み出す“感動シーン” 大人も子どももうれしいサービス
そんな中、衣類以外のクリーニングに力を入れている店があります。
(イチカワクリーニング 市川博基社長)「いま特に多いのはベビーカーとチャイルドシート。ベビーカーは雪がとけたから出してきたら汚れているとか、なので春は多いですね」
中でも人気なのが、ぬいぐるみのクリーニングです。
黒ずんでしまったくまのぬいぐるみは、本来の色を取り戻してきれいさっぱり。
ごわごわの毛並みになったプーさんも、ふわふわとしたぬいぐるみに復活しました。
その工程は一つ一つが手作業です。
綿を抜いて…無添加の石鹸を使って手洗い。
頑固な汚れも丁寧に落として乾燥させます。
値段は1体1980円から。
料金を追加すれば綿の入れ替えも可能です。
しぼんでいたぬいぐるみはふっくらと仕上がりました。
(イチカワクリーニング 市川博基社長)「お客さんに言われてですね。(お客さんに)できないの?と言われてやり始めたら広がっていった」
2024年は200件以上をクリーニング。
大事なぬいぐるみをきれいにしてほしいと全国から依頼が来ます。
(栃木県から依頼した小池さん)「このプーさんは3年弱、毎日だっこして使っていたので真っ黒になっちゃって。今は戻ってきて、きれいになってね、よかったよね?」
(子ども)「よかったすぎる!」
札幌市内に住む和田慶太さんです。
交際中の女性が大切にしていたぬいぐるみを受け取りに来ました。
(和田慶太さん)「ずっと小さい時に、いまは亡くなった父親からいただいたものらしくて。首のところが裂けた状態で、くたってなっていたので。今回しっかり修理していただいて、渡すのが楽しみです」
そして次の日。
(和田慶太さん)「帰ってきたよ」
(堀川美雪さん)「すごい」
(和田慶太さん)「しっかりしてるでしょ。元気になって帰ってきたでしょ」
(堀川美雪さん)「ちょっともうあきらめていたのでうれしいです。ありがとうございます」
思い出が詰まったぬいぐるみをきれいにしたい。
そんな思いに寄り添う店をめざしています。
(イチカワクリーニング 市川博基社長)「このマチのちっちゃいクリーニング屋さんにわざわざ頼ってくれている、わざわざ見つけてくれている、じゃあやろうかと。札幌で洗濯物に困ったら、イチカワさんに行ってみようかなという店になればいいなと」
苦境が続くクリーニング業界。
それでも客の期待に応えようと、工夫を凝らしたサービスと努力を続けます。