園児たちも夢中!自閉スペクトラム症の少年が描く「まちがいだらけ」絵本に込めた思い 北海道
こちらの個性豊かな絵を描くのは、発達障害のある15歳の少年です。
4月、彼の描くキャラクターが1冊の絵本になりました。
タイトルは『まちがいだらけ』。
その絵本に込められた思いとはー
色鮮やか!個性豊かなキャラクターたち
(子どもたち)「かわいい!」
園児たちが夢中になって見ているのは…絵本です。
個性豊かなキャラクターが色鮮やかに描かれています。
この作者はー
アーティスト名“HIROTO”本名・春日井紘斗さん15歳。
自閉スペクトラム症などの発達障害があり、何よりも絵を描くことが大好きな少年です。
(春日井紘斗さん)「何度も塗らなきゃだめだこれ」
(母・輝美さん)「なんか木の枠みたいだね」
(春日井紘斗さん)「そうそう、そういうイメージ」
紘斗さんの活動を支えるのは、母の輝美さんです。
描いていたのは、オリジナルキャラクターの日常の1コマ。
(春日井紘斗さん)「タイトルはなんだろう…『シェリーのひなたぼっこ』。額縁をつけたことでレトロ感を出した。なんかの写真立てのイメージ」
紘斗さんの絵の特徴は、すべてのキャラクターに「設定」があること。
例えば、代表作である石造の猫のゾンビ「シェリーカールにゃんこ」は“きのこ”と“バラ”が好物です。
自分の作品で多くの人に元気や勇気を与えたいと、2024年から個展を開催し、本格的に絵の活動を始めてきました。
絵の活動が“自信”に 特別支援学校の高等部に入学
ただ、集中力があまり続かず、勉強をしていても…
(春日井紘斗さん)「おしまい、絶対おしまい」
突然、怒り出してしまうことも。
人前で失敗するのが嫌で、中学校にはほとんど通うことができませんでした。
(母・輝美さん)「子育ての中でも、大変な数は多いのかなと」
しかし、この春。
(母・輝美さん)「ひもを襟の下に入れるんだ」
(春日井紘斗さん)「なるほど」
(母・輝美さん)「いやー、見違えるというか大人になったなって」
特別支援学校の高等部に入学、新たな一歩を踏み出しました。
絵の活動を通して自信がついてきたようです。
さらにもう1つ挑戦していたのが、絵本づくりです。
そこには母・輝美さんのある思いがありました。
(母・輝美さん)「社会と触れ合っていないと、この先いろんな人の助けを受けながら生きていかないといけないので、チャレンジですね」
サポートを受けて“絵本作り”に挑戦!
この日、紘斗さんたちが訪ねたのは、絵本作家の庄司あいかさんです。
庄司さんは重度の知的障害がある長男の隼人さんのために、4年前から絵本を描くようになりました。
庄司さんはNPO法人「絵本屋だっこ」を立ち上げ、絵本をつくりたい人のサポートもしています。
紘斗さんたちは、その力を借りることにしたのです。
(母・輝美さん)「紘斗の絵本はどのくらいの年齢の人に見てほしい?」
(春日井紘斗さん)「うーん、小さい子向けかな」
(庄司あいかさん)「絵本だからね」
(母・輝美さん)「障害があってもなくても本当に何色でもいいよねという」
絵本づくりはすぐに始まりました。
ストーリーは、紘斗さんと輝美さんから聞いた話をもとに、庄司さんが考えます。
(庄司あいかさん)「今回は『まちがいだらけ』というタイトルにしました。障害とか特性は捉え方。ほかの人と違うことを間違いと捉えるのか、そうじゃないのかという問いを込めて、あえてタイトルは『まちがいだらけ』」
そのころ紘斗さんは、表紙用の絵を描いていました。
(春日井紘斗さん)「よし、これで完成かな。いい感じになりました。一番難しかったのは泡。線の扱いとか色合いが。境界線を描くのが大変だった」
その後も新たな絵を描き続け、物語を作っていきました。
打ち合わせからおよそ1か月。
絵本『まちがいだらけ』が完成しました。
(春日井紘斗さん)「うれしい」
(母・輝美さん)「夢の形ができている」
絵本の舞台は「キノコの森」です。
完成した「まちがいだらけ」園児も夢中に!
「キノコの森にはたくさんのシェリーカールにゃんこがいます。」「みんな、同じ色、同じ模様です。」
そんなある日。
「なんかいる!」「オレ、テッパンカールにゃんこ。こっちはギョルトカールにゃんこ。オレたち海からきた」「なんだあのにゃんこは。まちがいだらけじゃないか」
見た目の違う「カールにゃんこ」を見て、最初は「まちがいだらけ」と思ったシェリーたち。
しかし、キノコの森にやってくるさまざまなキャラクターと出会う中で、考えが変わり始めます。
「まちがいだらけじゃなかった。わくわくだらけだったんだ」
人それぞれの違いを個性として捉えてもらえるように。
紘斗さんたちの想いが込められた絵本が出来上がりました。
(母・輝美さん)「どんな人も間違いじゃなくて、自分の色を大切に育てていけばいいと思ってほしい」
絵本は4月から販売が始まりました。
SNSを通じて購入した人には、紘斗さんの直筆のメッセージも送ることにしました。
(春日井紘斗さん)「うれしい、本当に。だからありがとう」
届いた絵本の感想を庄司さんに報告します。
(母・輝美さん)「優しい世界が広がるといいねとメッセージをもらっていて、あいかちゃんと一緒にできたからこれができたと思います」
(庄司あいかさん)「うれしい。そう言ってもらえると」
この日、向かったのは紘斗さんが通っていた幼稚園です。
(春日井紘斗さん)「『まちがいだらけ』だね。寄付する!」
絵本を寄付することにした紘斗さん。
待っていたのは…
(大沢敦子さん)「一緒に写っているでしょ。思い出して!」
紘斗さんが年中クラスだったときの担任の先生です。
先生はさっそく絵本の読み聞かせをしてくれました。
(読み聞かせ)「まちがいだらけ。ひなたぼっこをしているのはシェリーカールにゃんこです」
カラフルな絵に、子どもたちは釘付け。
キャラクターの名前もすぐに覚えてくれたようです。
(子どもたち)「シェリー!シェリー!」
(読み聞かせ)「違いがあるってワクワクしますね。おしまい」
(子どもたち)「楽しかった。すごかった」
(春日井紘斗さん)「一番は楽しく見ることだね。楽しく読んでね」
(子どもたち)「はーい」
「違い」は「間違い」ではなく、それぞれの個性。
そんな思いを絵に込めて、アーティスト「HIROTO」の世界はこの先も広がっていきます。