女児は意識不明のまま 男2人に執行猶予と罰金「納得できない」被害者家族の訴え 札幌タイヤ脱落
札幌市西区で2023年、軽乗用車のタイヤが外れ、女の子に直撃した事故で、札幌地裁は運転手の男に懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しました。
父親は判決に対し「納得できない」と訴えました。
(事故にあった女の子の父親)「家族の心情としては、子どもが殺されたも同然であるのに、このような内容で納得できるはずがありません。このまま終わらせたくないという気持ちが強いです」
「納得できない」と訴える女の子の父親。
事故から1年5か月が経ち、ようやく判決が言い渡されました。
(裁判長)「主文、被告人を懲役3年に処する」「5年間その刑の執行を猶予する」
2023年11月、札幌市西区で軽乗用車のタイヤが脱落し、歩道を歩いていた女の子に直撃。
女の子の意識は今も戻っていません。
この事故で、道路運送車両法違反と過失運転致傷の罪に問われていた若本豊嗣被告51歳。
判決によりますと、若本被告は車を不正に改造し点検を怠った結果、ナットの緩みに気づかないまま車を運転。
タイヤが脱落し女の子にけがをさせました。
判決理由について札幌地裁はー
(裁判長)「ナットが緩みやすいと認識していながら運転した過失は悪質である」
そう指摘した一方でー
(裁判長)「ナットの緩みは所有者の田中被告の責任で点検すべきもの。運転した若本被告ばかりを大きく責めることは難しい」
札幌地裁は懲役3年の求刑に対し、若本被告に懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しました。
また、不正改造の罪に問われていた車の所有者の田中正満被告には、責任の大きさを認めたものの、罰金20万円を言い渡しました。
2人に有罪判決が言い渡されましたが、父親の思いが報われたわけではありません。
(事故にあった女の子の父親)「執行猶予がついたことに納得していない。求刑の段階から自分たちが受けた被害の大きさと刑罰の大きさにアンバランスを感じている。所有者の田中被告にもしかるべき刑罰を受けさせたい」
事故の後も普段通りに仕事をしていた田中被告。
警察は2024年、田中被告も過失運転致傷の疑いで逮捕・送検しましたが、札幌地検はこれを不起訴としました。
父親は、田中被告も注意義務に違反していて、共同正犯が成立すると主張。
札幌地検の処分は不服として、検察審査会に審査を申し立てました。
(事故にあった女の子の父親)「田中被告の責任の重さを裁判所は認めていて、若本被告の情状にしかなっていないが、逆に不服申し立てでそれ(田中被告の責任)がプラスに働けばいいかなと思う」
裁判所の判決は下されましたが、被害者家族の苦しみと闘いは今後も続きます。
【判決一覧】
2年前に起きた大変痛ましい事故ですが、今回の事故に関して起訴されたのは2人です。
事故当時、運転していた若本豊嗣被告は、道路運送車両法違反と過失運転致傷の罪。
求刑は3年でしたが、判決では執行猶予5年がつきました。
そして、車の所有者・田中正満被告については、道路運送車両法違反で罰金20万円の判決となりました。
【弁護士の見解】
今回の判決について、元裁判官の経歴を持つ内田健太弁護士に見解を聞きました。
・今回「執行猶予」が付いたことは、過失運転致傷という罪状では一般的な判決
・被害者の意識不明が続くという重い事故で、今回の判決が妥当とは言い難い
・一般的な事故と比べて予想することが難しい事故
・判決を下すにあたっては、裁判所としても非常に難しい事故であったと思う
と話していました。