人手不足が加速 介護業界で増加する外国人 課題は語学力 新たな人材養成に取り組むマチ 北海道

介護業界では人手不足が加速しています。
北海道北部のマチでは、留学生を積極的に受け入れる仕組みを作り、介護が必要な高齢者を支えています。
どのような取り組みなのか取材しました。
半数以上が留学生 積極的に受け入れる専門学校
(アルビさん)「お花どうですか?好きですか?」
(施設入居者)「まあまあ」
インドネシア出身のアルビさん26歳。
上川の剣淵町にある特別養護老人ホームで、4月から介護福祉士として働いています。
(アルビさん)「私はどんな人ですか?」
(施設入居者)「とっても親切でいい人だわ」
(アルビさん)「本当?」
(施設入居者)「本当だよ~。私も安心してお話できるし」
(アルビさん)「良かった。ありがとうございます」
日本で働くことが夢だったというアルビさん。
人と関わる仕事がしたいと考え、介護の道を選びました。
(アルビさん)「介護の仕事は私の国にはなかなかないので、日本で経験をしたい」
アルビさんが介護を学んでいたのが、旭川の隣・東川町にある専門学校です。
(先生)「出席とりますね」
2025年の新入生67人のうち、なんと46人が韓国やベトナムなど11か国から来ている留学生です。
学校では国家資格の「介護福祉士」を養成し、およそ10年前から積極的に留学生を受け入れるようになりました。
(マレーシア出身の1年生)「人の役に立つのが好きで介護の仕事を選びました」
(タイ出身の1年生)「介護福祉士はとても大事な仕事だと思っています。介護福祉士として日本で働きたい」
なり手不足解消なるか 国家試験は日本人と同じ…課題は語学力
留学生を受け入れる背景には、介護業界の深刻ななり手不足があります。
(東川国際文化福祉専門学校 黒田英敏副校長)「介護の仕事は厳しい、あるいは待遇が難しいという世間の風潮があって、それで本校でもどんどん学生減少が続いていました。(外国人人材は)介護サービスを進めていく上で必須のサポートだと思います」
(留学生)「身の回り…意味は自分の周りのもの、友達とか家族とか」
留学生にとって、一番の課題は語学力です。
介護福祉士の国家試験は日本人と同じ問題が出題されるため、学校では日本語の授業も用意されています。
さらに、充実した奨学金制度が留学生たちを後押ししています。
【奨学金制度】留学生と自治体・施設がウィンウィンに
自治体や施設が留学生1人に対し、年間380万円の奨学金を支給します。
学生は自己負担なしで学校に通う代わりに、奨学金を出した自治体や施設で、卒業後5年間は働く仕組みです。
介護を学ぶ留学生は寮生活を送っています。
奨学金制度では授業料のほかに、この寮費や生活費も支援しています。
(カンボジア出身の留学生)「来週は再試験があります…私1人だけ。体温…脈拍…血圧…」
留学生はアルバイトなどをしなくても生活できるため、日本語や介護の勉強に集中できます。
これまでに171人が奨学金を受けて学んでいます。
制度に参加するマチはー
(東川町多文化共生課 本多大樹課長)「介護がしたいという外国の人たちにいかに来てもらうかということが重要なので、日本で就職したいというふうに思ってもらって、それが長続きするような環境を整えるということがやっぱり喫緊の課題」
(アルビさん)「ゼリーを飲みますよ。おいしいですか?」
剣淵町の老人ホームで働くインドネシア出身のアルビさんも、奨学金制度を使って専門学校を卒業しました。
(アルビさん同僚)「利用者の声のかけ方とかすごい優しくて、自分もすごく参考になっていて、いろいろな方面で優しい子です」
仕事を始めてまだ2か月ですが、即戦力として活躍しています。
(剣渕ひらなみ荘 井渕俊雄施設長)「(奨学金を出すことで)確実に1人来てくれる、来年はこの方がたぶん来てくれるんだなと分かるのはものすごく安心しますよね。外国人といえども本当に日本人にかなり近いレベルです。このレベルを維持していけるのであれば、やはり他の日本人と同等の思いでうちに入ってきていただきたいなと考えています」
アルビさんはここで5年間、介護の経験を積んだ後、インドネシアに戻る予定です。
(アルビさん)「インドネシアには施設があまりなくて、高齢者は自分の家族でお世話をするので、自分の施設を経営したい」
2019年に始まった奨学金制度。
当初の参加は4市町村でしたが、今は24の自治体に拡大しています。
(美瑛町介護施設 担当者)「ここの卒業生を採用したらものすごく優秀で、それで外国人に対する抵抗がなくなった」
(滝上町介護施設 担当者)「(施設の人手は)ギリギリ…外国人の力を借りながらなんとかやっている。ここの卒業生の方はみんな頑張ってくれている。いい雰囲気も出しているのでとても助かっている」
留学生のニーズが高まる一方で、需要と供給の差が課題となっています。
(東川国際文化福祉専門学校 黒田英敏副校長)「卒業する学生を1町村に1人か2人というところが、今せいぜいな部分なんですけれども。複数人希望のところを、残念ながら今学校としてもちょっとお断りというか、人数を絞らせていただいている。もっと外国人人材を受け入れて、そして養成して送り出す仕組みが必要だと思う」
人手不足が加速し、外国人の力が欠かせない介護業界。
新たな人材を養成する仕組みづくりが求められます。