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宿泊施設やカフェに活用 歴史的建造物でマチづくり 価値を守り活性化につなげる 観光都市・函館

【動画】歴史的建造物の“保存”と“活用” 観光のマチ「函館」の財産を観光でも 歴史と文化をつなぐ新たな動き 北海道

北海道函館市内には数多くの歴史的建造物があります。

観光のマチとして財産ともいえる価値ある建物をどう保存し、活用していくか…

観光客にどう親しんでもらうか、新たな動きが始まっています。

国の重要文化財を宿泊施設として活用へ 売りは“特別な体験”

歴史と風情がただよう築百年以上の邸宅。

明治末期の1908年に建てられた「旧相馬家住宅」です。

和と洋が調和した趣きのある建物は、2018年、国の重要文化財に指定されました。

天井に使われているのは北海道では貴重な屋久杉の一枚板。

細かい細工が施された欄間にー

表面が波打った手作りの窓ガラスも当時のままです。

この建物に着目したのが、東京の民間企業です。

(バリューマネジメント 他力野淳代表)「この相馬家住宅がずっと長きにわたって丁寧に残されてきたと。当時のものがそのまま残っているということが、この建物の価値だと考えております」

3月、この企業ともう一社が共同で宿泊施設として活用する計画を発表しました。

(バリューマネジメント 他力野淳代表)「長く滞在することで見えてくる建物の価値という部分があると思っていまして。まさにこの旧相馬家住宅はそれができる場所だと思います」

重要文化財に宿泊できる特別な体験を売りにしたホテル。

客室は3室で、宿泊代の一部は建物の保存に役立てられます。

取り壊される寸前だった邸宅…16年間維持したオーナーの思い

(東出伸司さん)「あこがれますね、あこがれの人です」

「旧相馬家住宅」のオーナー・東出伸司さんです。

あこがれの人と話すのは、この住宅を建てた相馬哲平。

米穀商や金融業で財をなし、函館に設立された銀行の取締役を務め、地元に多額の寄付をするなど函館の発展に貢献しました。

取り壊される寸前だったこの邸宅を買い取り、16年間維持してきた東出さん。

85歳という自身の年齢や体力を考え、引き取り手を探していたところでした。

(記者)「ホテルとして活用する考え方は?」

(東出伸司さん)「いいです。絶対それが一番、それしかないと思います。志のある方が出れば、お金じゃないと、守ってもらうと」

赤レンガ倉庫をホテルとして活用している施設があります。

「旧相馬家住宅」を受け継いだ企業が手がけていて、建物の価値を守りながら観光などのマチづくりに取り組んでいます。

(東出伸司さん)「これだけ景色の良いところだから、部屋を作って、皆さん泊まって。地域の活性化にもなるし、古いものは残していく、残っていくと」

「長く守り続けたい」市民と協力したマチづくり

歴史的建造物が多く残る函館市。

市では建物の修繕に補助金を出すなど、市民と協力しながらマチづくりを進めています。

現在およそ140の建築物について維持保存に努めているといいます。

「茶房 旧茶屋亭」もその一つです。

明治時代の店舗兼住宅は、カフェとして生まれ変わって2025年で33年目。

すっかり観光客の憩いの場です。

お茶を楽しみながら、貴重な家具が並び異国情緒あふれる空間で過ごす時間。

(東海林記者)「香りがよくてホっとします。お茶を飲みながらゆっくりとした時間を過ごすことができます」

人気は季節のフルーツを使ったあんみつセット(1650円)。

デザートを楽しみながらゆっくりと過ごすお客さんが多いといいます。

(東京からの観光客)「やっぱり落ち着くし、いいですよね」

(東京からの観光客)「すごく素敵ですね。函館ならではの住宅のつくりがありますよね。それをうまく保存して、中はすごく洋風なアレンジで、これはこれでありかな」

母親から店を引き継いだ店長の半田大士さん。

ここで働くようになっておよそ15年。

建物への愛着も増してきています。

(茶房 旧茶屋亭 半田大士店長)「階段ですね。なかなかこんな階段見たことがなかったので、すごく味があって風情があって好きですね」

遠くから通ってくれるお客さんのためにも、長く店を守り続けていきたいと半田さんは話します。

(茶房 旧茶屋亭 半田大士店長)「リフレッシュしていただけるような空間であっていただきたいなとは思ってやっています。少しでも函館のイメージを守るという面でも、協力していきたいなとは思っています」

空き家をオフィスに改装 歴史的建造物は函館のブランド価値

空き家だった建物が活用された事例も。

大正時代、事務所だった建物は、2年前からDX=デジタルトランスフォーメーションの拠点として使われています。

和洋折衷の外観はそのままに、中はオフィスとして改装。

デジタル技術を使った地域の課題解決や新たな事業の開発に役立てられています。

(TOPPANデジタル 浮田貴章さん)「函館市側の課題としても空き家の問題もあったので、課題解決にも貢献したいと。非常に趣きのある建物、静かな環境で開発業務など日々の業務で働きやすい場所」

この建物を勧めたのが、マチづくり事業に携わっている北山拓さんです。

歴史的建造物の活用はマチの活性化にもつながると期待を寄せています。

(はこだて西部まちづくRe-Design 北山拓代表)「建物は函館のブランド価値が表出した1個の成果物で、それに価値を感じて新しい価値を入れてくれる人を誘致して継承して、経済活動をしていくというサイクルを回していく、これが一番大事だと思っている。しっかり外に対してこのマチのブランドを売っていけば、こういうところで宿泊・出店・オフィスをつくりたいという人のニーズはまだまだ満たせる」

マチの“歴史”と“文化”を紡ぐシンボル

4月いっぱいで譲渡される旧相馬家住宅。

4月1日、無料公開が始まりました。

(東出伸司さん)「どうぞどうぞ遠慮なく、きょうは無料ですからどうぞどうぞ」

長年応援してくれた市民や観光客への感謝の思いが込められています。

(訪れた人)「けっこう立派な建物で眺めも良くて、見る価値がありましたね、本当に」

(訪れた人)「こういう建物は保存していくのは大変だと思うんですけど、残していってほしいなと思います」

東出さんにとってもここで過ごす最後の時間です。

(東出伸司さん)「継投できたと、そういうことで安心感というか感じていますね。そのままで残っていってほしいと。間違いなく函館のシンボルだと思います。歴史上のシンボルですよね」

さまざまに引き継がれ、新たに活用される歴史的建物。

これからもマチの歴史と文化を紡いでいきます。

04/15(火) 06:41

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