“賢いヒグマ”の出没相次ぐ 電気柵くぐり抜けて畑へ…「そういうクマはずるい」対策の最前線
箱わなになかなか入ろうとしないクマや、穴を掘って電気柵をすり抜けるクマもー
ハンターは学習を重ねた“賢いクマ”に悩まされています。
まさに知恵比べ、クマ対策の最前線に密着しました。
「クマが学習している」警戒心の強い“賢いクマ”
箱わなに近づく巨大なクマ。
仕掛けのエサに興味を示します。
おりの中に入るかと思いきやー
エサに手を伸ばしますが、決して中には入りません。
警戒心の強い“賢いクマ”がハンターを悩ませているのです。
オホーツクの西興部村です。
クマが現れたのは、まさにこの場所。
(記者)「カメラはどこに?」
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「分からないでしょ?あそこにある」
ハンター歴50年を超える中原さんでも、クマの賢さには手を焼きます。
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「そういうクマはずるい。わなを分かっているというか、痛い目にあっているか、クマが学習していると思う。若いやつは簡単に入るけど、年とった大きいクマはなかなか入らない」
2026年はまだ、箱わなで捕獲することができません。
この日、クマが目撃されたデントコーン畑の周辺をパトロールします。
車を降りた中原さん。
その目にとまったのはー
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「これ新しいよ、きょうの痕だよ、フキを食べている」
クマが食べたフキの痕が、あたり一帯に広がっていました。
(記者)「すぐ近くにいるかもしれない?」
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「可能性はある」
現場に緊張が走ります。
同行したハンターも痕跡を発見します。
(西興部村ガバメントハンター 渡部志乃さん)「見えます?クマの足跡。クマ歩いてこっちに行ってて」
(記者)「さっきのと同じクマ?」
(西興部村ガバメントハンター 渡部志乃さん)「かもしれない。大きさ的に」
クマの駆除は「命がけ」ハンターにとって安全な捕獲手段とは…
実はここにも、賢いクマが現れていたのです。
これは畑に仕掛けたカメラの映像です。
クマが電気柵に近づき穴を掘り始めるとー
電気柵を学習したのか、掘った穴から身をかがめ、柵をくぐっていきました。
駆除を試みますが、実は大きなハードルがー
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「こないだもここで彼女、撃てなかった」
5月、ここで渡部さんが撮影したクマの映像です。
銃を持っていましたが、すぐ後ろに国道が走っているため発砲できなかったのです。
そこで、安全に捕獲できる箱わなの設置を決めました。
全国にある箱わなはあわせて5500基ほど。
政府は2030年度までに1万基まで増やす方針です。
その理由の1つが、クマの安全な捕獲です。
2026年4月、後志の島牧村で春期管理捕獲にあたっていた69歳のハンターが、クマに襲われました。
(同行したハンター 花田雄二さん)「今回けがした人が発砲しているので、クマに向かって。その人めがけて来たと思う」
発砲した後にクマから反撃にあい、頭や顔から出血。
1か月以上の入院を余儀なくされました。
まさに、クマの駆除は命がけ。
箱わなの設置は、ハンターにとって安全な捕獲手段なのです。
千歳市にある工場で、西興部村の中原さんが注文した箱わなが製造されていました。
巨大なクマにも対応できるよう頑丈な作りで、仕掛けも瞬時に作動します。
(未来のアグリ クマ対策チーム 石澤裕さん)「クマの出没状況にあわせて(注文が)増えていることは間違いない。転倒防止に補強をしたり、トラックに載せないでそのまま引きずれるように工夫してほしいとか色々なニーズがある」
STVの調べでは、クマ用の箱わなの価格は1基あたり60万円から80万円ほど。
国は購入費の支援を進めていますが、現場には簡単に数を増やせない事情がありました。
エサ代やガソリン代…ハンターの負担「もうこれが限界」
工場から運ばれた箱わなが、西興部村に届きました。
設置には、わな猟の資格をもつハンターが不可欠です。
電気柵をくぐったあの賢いクマを捕獲できるのかー
大好物のシカ肉を数か所に仕掛けます。
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「ここだったら頭を入れただけで食べられるでしょ、次でしょ、最後にあれ引っ張ったら落ちる。いまから1頭でも2頭でも減らしておけば、被害は少しでも減ると思う」
中原さんが村に設置するわなは、これが2基目。
しかし、これ以上増やすのは難しいといいます。
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「もうこれが限界、それだけ見回りはできないし、エサも補充しないといけないから。難しい、管理できない」
クマ駆除の報酬は全国的に増額され、西興部村では1頭につき5万円が支給されます。
ただ、見回りへの報酬は僅かで、捕獲できなければエサ代やガソリン代などの負担が増します。
課題はそれだけではありません。
目撃が相次ぐ場所でも、誰もが箱わなの設置を望んでいるわけではないのです。
(牧場管理人)「近くはね、知らないところに置いてくれたら助かるけど、分かるところに置かれたら、いやーぞっとする。そこに絶対クマいるから。おそろしいよね」
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「エサを置いているから近くにクマが集まる。いいんだか悪いんだか、ポンと獲れればいいんだけど」
クマを引き寄せてしまう危険性もある箱わな。
ハンターは慎重に設置場所を考えなければならないのです。
中原さんは普段ハンターのガイドをしながら、観光客を楽しませるシカ牧場を営んでいます。
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「来たか、かわいいでしょ」
自然と共に暮らしながら、クマと村の今後に向き合います。
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「クマはシカをとって食べている。クマは悪いこともするし、だけど農作物の被害はシカもあるからね。いて当たり前なんだけどね。これ以上増えないようにするのが必要だと思う」
箱わなを仕掛けて1週間、結局クマはかかりませんでした。
カメラに映っていたのは子ジカだけ。
クマは用心深く近寄らなかったのでしょうか。
(猟友会西興部部会 中原慎一部会長)「そう簡単に獲れないよ、クマとの駆け引きだよね、クマの裏をかいて色々考えなければ獲れない」
箱わなによる駆除はハンターとクマの知恵くらべ。
少しでも被害を減らすため、ハンターはきょうも警戒を続けます。