「人生えぐられた思い」乗客家族が責任追及 争点は“桂田社長の出航判断” 知床観光船沈没事故
北海道・知床沖の観光船沈没事故で、乗客の家族らが損害賠償を求める裁判が始まりました。
13日の初弁論では被告の桂田社長も出廷し、乗客家族の訴えに対し争う姿勢を示しています。
(山本記者)「いま桂田社長を乗せたタクシーが札幌地方裁判所に入ります。後部座席に桂田社長の姿も見えますが、目線を下に向けて暗い表情です」
報道陣の多さに驚いたのか、後部座席では頭を伏せたまま。
札幌地裁に姿を現したのは、被告の「知床遊覧船」桂田精一社長です。
(山本記者)「報道陣には一切目を向けず、そのまま入っていきます」
あの痛ましい事故からまもなく3年。
桂田社長も出廷し、裁判が始まりました。
(乗客家族)「これほどの大きな心の傷を負わされ、人生をえぐられているような思いをして、毎日生きています。私は桂田氏と直接2人で話したこともなければ、個別の謝罪ももらったことはありません」
いまも消えることがない怒りや苦しみ…
乗客の家族が法廷で、桂田社長の責任を追及しました。
2022年4月23日、乗員・乗客26人を乗せ、海底120メートルに沈没した観光船「KAZUⅠ」。
20人が死亡し、いまも6人の行方が分かっていません。
この裁判では、乗客14人の家族ら29人が運航会社の「知床遊覧船」と桂田社長に対し、およそ15億円の損害賠償を求めています。
乗客家族が追及するのは、運航会社の賠償責任と桂田社長個人の責任です。
事故当日は荒れた天候が予想され、ほかの観光船の船長が運航を止めたにもかかわらずKAZUⅠは出航。
(桂田社長)「海が荒れれば引き返す条件付き運航ということを豊田氏と打ち合わせ、当時の出航を決定いたしました」
桂田社長はとりあえず海に出て、荒れたら引き返すという「条件付き運航」を決めていました。
乗客の家族は悪天候が予想される中、船を出航させたとして、桂田社長の判断に「過失」があったと主張。
13日の初弁論では、原告の乗客家族が桂田社長に直接訴えました。
(乗客家族)「この事件は、安全管理規定に違反して発航させた結果が招いた悲劇です。当日の気象予報値は基準値の倍近くの数字であったため、発航をしてはならなかったのです」
一方、被告側は「当日の出航地点の波は運航基準を大きく下回る穏やかな状況。船長が途中で引き返すか、避難する港に入港すれば事故の発生を避けられた」などと、桂田社長の判断に過失はないと主張し、請求棄却を求めています。
裁判所は双方の訴えをどのように判断するのかー
乗客家族と桂田社長ら被告側との争いが続きます。
主な争点
乗客の家族らが運航会社と桂田精一社長に対し、損害賠償を求めた今回の裁判。
原告側が運航会社に求めている事故による損害の賠償責任については、被告側も認めています。
主張が対立しているのが、桂田社長の出航判断についてです。
原告側は「悪天候が予想される中、出航させた過失」を指摘する一方、被告側は「条件付き運航だったため、船長が引き返せば事故は回避できた」として「桂田社長の判断に過失はない」と主張しています。
乗客家族らの陳述
13日の初弁論には桂田社長が出廷しました。
裁判に参加した家族のなかには、桂田社長と直接会うのは事故直後以来という方もいます。
意見陳述を行った家族からは…
「家族は全員亡くなった。仕事ができる精神状態ではなく退職してしまった」
「船長のせいにしている桂田氏を許すことができない」
「心から反省し謝罪して下さい」
桂田社長に対して声を荒げながら訴えかける場面もありました。