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赤毛のアンの世界を再現!“負の遺産”と言われた「カナディアンワールド」守り続ける市民の思い

バブル期に開業し、わずか7年で経営破綻した「カナディアンワールド」。

「赤毛のアン」の世界を再現したかつてのテーマパークが今、市民の手によって存続しています。

「赤毛のアン」を守るその思いに迫ります。

『カナディアンワールドを知っていますか?』

(札幌市民)「カナディアンワールド?知らないです」

(札幌市民)「知っています。35年くらい前ですか。お花が綺麗でメルヘンだなというイメージでした」

(札幌市民)「バブルがはじけたあとはいろいろな所が破綻して、同じようになくなったのは知っていた」

そのテーマパークは、かつて「炭鉱のまち」として栄えた芦別市にありました。

(テープカット)「カナディアンワールド・テープカットです。どうぞ!」

1990年、カナダの小説「赤毛のアン」の世界を再現した「カナディアンワールド」がオープン。

炭鉱に変わる観光の目玉として建設され、翌年には27万人が訪れました。

しかし、業績不振が続きわずか7年で閉鎖。

その後、市営公園として存続しましたが、2019年に廃止されました。

市の負債は32億円に上ります。

いまのカナディアンワールドは…?

現在のカナディアンワールドです。

高台に立っているのが「アンの教会」です。

(客)「見学するのは無料で?」

(西村美幸さん)「はい!」

閉鎖されたはずの教会に人の姿がー

実は5年前から市民が自主運営に乗り出し、週末だけ営業しているのです。

(西村美幸さん)「教壇の方に進んで振り返ると反対側の大きいステンドグラスが見えます」

教会を運営する芦別市の西村美幸さん。

週末に常駐し、接客にあたっています。

「赤毛のアン」の舞台を忠実に再現した教会には、今も全国から家族連れなどが訪れます。

(横浜から来た人)「ぜひ来たいと思って来ました。雰囲気が素敵で(赤毛のアンを)テレビで見ていたからわくわくしちゃうね」

(芦別市民)「もっとボロボロになっていると思ったんですけど、すごく綺麗にされていてびっくりしました。特にこのステンドグラスが綺麗なのが印象的で」

来場者を案内する西村さん、その本職はー

芦別市内でコメ農家を営んでいます。

8月下旬の収穫に向け、草刈り作業に追われていました。

(西村美幸さん)「あとは見守る感じ。どきどきします本当に」

西村さんは中学生の頃から「赤毛のアン」の大ファン。

長年集めてきた本がずらりと並んでいます。

(西村美幸さん)「アンの生き方みたいなのにすごく勇気づけられた、当時中学生の私が。母になってもずっと生涯の友としてアンがいる感じで生きてきた」

アンをこよなく愛する西村さん。

仕事が終わるやいなや向かった先は「カナディアンワールド」です。

今度は教会の草刈り作業。

仕事がある平日も週に2、3回欠かさず訪れます。

(西村美幸さん)「好きじゃなかったら無理。ちょっと好きぐらいでも無理」

ほとんど休むことなく働く西村さん。

5年前に教会を訪れた時、その様子に驚いたといいます。

(西村美幸さん)「私が初めて入ったときは一瞬借りたことを後悔するような。ちりとりを置いてザッとやるとちりとりが山盛りになるくらいカメムシがいて。こんな大きな石が窓に投げ込まれていて1か所割れていたので、そこから鳥が入っていたので鳥のフンだらけで、鳥のフンを一生懸命拭いて」

荒れ果てた教会を2か月かけて掃除しました。

それは「赤毛のアン」の世界をもう一度取り戻したいという強い信念があったからです。

その思いは訪れた人にも届いていました。

(訪れた人)「30年ぶりに来ました。ずっと来たいと思っていたので、残っていて嬉しいです」

(西村美幸さん)「やりがいはこの景色をずっと守っていきたい。あとはここに来て喜んでくださるお客様の笑顔。私は芦別のためにカナディアンワールドを残したいっていう市民としての思いが非常に強い」

カナディアンワールドは市民らが振興会を立ち上げ、「アンの家」など14の施設を運営しています。

(カナディアンワールド振興会 俵政美会長)「赤毛のアンは小さい子から年を取った人まで幅広い人に愛されている。これだけ市がお金を使って捨てるというのはあまりにも知恵がないしもったいない。次の世代に経営をバトンタッチするのが私の仕事」

アンを愛する人たちが「守る世界」

「赤毛のアン」を守りたいという思いは、芦別市民だけではありません。

江別市の遠藤寿一さんと琴美さん夫婦です。

2025年から「カフェ・リンド夫人」を運営しています。

(遠藤琴美さん)「子どもが小麦粉のアレルギーとタマゴのアレルギーだったので、それを除いた食べ物を作ってきた」

飲食店は未経験の2人。

子どもがアレルギーという経験を活かし、米粉を使ったデザートを提供しています。

(遠藤琴美さん)「(赤毛のアンは)小さい時から見ていまして、ここに何回も来ていました。開園していると知らなくて、それを知ってから良ければ連れて行ってもらってもいいと去年連れてきてもらった」

2人ともほかにも仕事をしていますが、カナディアンワールドが再開していることを知り、振興会にカフェを運営したいと申し出ました。

(遠藤寿一さん)「(江別から)2時間かけて来てます。正直儲かってはいないが、お客さんと話しながらゆっくり週末を過ごせたらいいかなと。毎日楽しいです」

「赤毛のアン」の世界を楽しんだお客さんの笑顔が2人のやりがいです。

(札幌から来た人)「アンの足あとをたどって教員になった。素敵な世界ですね」

(札幌から来た人)「疲れちゃって、アンのところからここまで来て、まさかこんな風に新しくなっていると思わなかったから」

(遠藤琴美さん)「来ていた当初にここで働いている人たちいいなと思っていたので、まさか自分もできるとは。開いていることを私も知らなかったので、もっと知ってもらえるように私たちも努力したい」

課題は「施設の老朽化」 芦別市の対応は…?

市民が自主運営を続ける一方で、施設の老朽化も目立ちます。

現在も負債を返済している芦別市は、今後について振興会と協議していく方針です。

(芦別市商工観光課 佐藤亮課長)「振興会の熱意でもって自主運営を継続していて、集客につながるような努力をしている。今後についてはほぼ白紙のような状況ですが、何かを判断する局面においては、振興会と話し合いの場をもって対応していきたいと思っています」

“負の遺産”とも言われたカナディアンワールド。

「赤毛のアン」を愛するファンと市民の力で守り続けます。

08/22(金) 05:17

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