「緊急銃猟」自治体も判断可能に 猟友会「ガイドラインにハンターの意見入らず」広がる懸念
改正鳥獣保護管理法が9月1日から施行され、市街地に出没したクマの「緊急銃猟」が自治体の判断で可能となります。
しかし、出没が相次ぐ地域からは新たな制度に懸念の声があがっています。
8月20日、留萌の初山別村の中学校で中庭を歩くクマ1頭が目撃されました。
(山本記者)「あちらにある中学校の敷地にいたクマにハンターが発砲をしたところ、クマは奥の山の方に逃げていったということです」
人を恐れず町中に降りて来たクマ。
3日後、再び出没した際にはハンターが発砲した銃弾1発が命中しましたが、そのまま立ち去っていきました。
市街地で相次ぐクマの出没。
その中、自治体はいま新たな課題に直面しています。
(初山別村 大西孝幸経済課長)「(発砲するまでに)手続きが多いので、本当に捕獲までいけるものなのかなと考えている」
クマの捕獲に関して1日から施行されたのが、改正鳥獣保護管理法です。
市街地での発砲はこれまで警察のみ許可することができ、時間を要しました。
今回の改正法では、猟銃以外で捕獲が困難な場合や緊急性が認められる場合などの条件をクリアすれば、自治体の判断で発砲が可能になり、より迅速な対応が取れるようになります。
鈴木知事は先週、緊急銃猟で人的被害が出た際のハンターの責任について、「通常は問われることはない」と国から説明があったことを明かしました。
しかし、自治体は懸念を感じています。
(初山別村 大西孝幸経済課長)「発砲をお願いしますと自治体から簡単な形でハンターにお願いできかねる状況になっている」
改正法では、発砲による物損・人的被害などの損害について、自治体が補償するようにと記載されています。
一方でハンターがけがをした場合や、銃の所持許可が取り消される可能性については記載されていません。
北海道猟友会はこれを受けて、道内71の支部に、安全性などで銃猟に疑念がある場合は「ハンターの判断で中止してもよい」という趣旨の通知を出しています。
(北海道猟友会標茶支部 後藤勲支部長)「(国は)ガイドラインなどを決めているけど、ハンターの意見は何も入っていない。せめて国なり道なりが全てそういう問題については引き受けるというシステムを作ってもらわないと、誹謗中傷でまいる人もたくさんいる」
専門家はー
(中村憲昭弁護士)「万が一不幸で跳弾などで人的被害が生じたときにどうなるのかについてはなにも条文には書いていない。損害が生じたときは緊急銃猟の命令に従っていないのではないか、そういった形での捜査が開始される可能性はあると思います」
人命だけでなく自治体やハンターの立場を守ることができるのか。
改正法の実効性をどのように高めていくのかが問われています。
9月1日から、市町村の判断で市街地などでも特例的に猟銃を使う「緊急銃猟」が可能になります。
・人の生活圏に侵入
・緊急性が認められる
・銃以外で捕獲困難
・安全性の確保
全ての条件を満たしている場合に、自治体の判断で発砲が可能になります。
自治体側は、発砲までの手続きが多いため、捕獲できるのかという疑念があるということです。
ハンター側は、ガイドラインにハンターの意見が入っていないため、すべてを引き受けるシステムが必要だと述べています。
弁護士は、制度が運用されるためにはガイドラインに柔軟性が必要なのではないかと指摘しています。