ニュース

NEWS

すすり泣く声が響く法廷… 被告・桂田精一社長は目線すら合わせず 「謝罪と償い続ける」

(山本記者)「いま桂田社長を乗せたタクシーが札幌地方裁判所に入ります。後部座席に桂田社長の姿も見えますが、目線を下に向けて暗い表情です」

報道陣の多さに驚いたのか、後部座席では顔を伏せたまま。

札幌地裁に姿を現したのは、被告の「知床遊覧船」桂田精一社長です。

(山本記者)「報道陣には一切目を向けず、そのまま入っていきます」

あの痛ましい事故からまもなく3年。

桂田社長が出廷し裁判が始まりました。

(乗客家族)「これほどの大きな心の傷を負わされ、人生をえぐられているような思いをして、毎日生きています。私は桂田氏と直接2人で話したこともなければ、個別の謝罪ももらったことはありません」

すすり泣く声が法廷に響き渡るほど、いまも消えることがない怒りや苦しみ…

乗客の家族が桂田社長の責任を追及しました。

2022年4月23日、乗員・乗客26人を乗せ、海底120メートルに沈没した観光船「KAZUⅠ」。

20人が死亡し、いまも6人の行方が分かっていません。

この裁判では、乗客14人の家族ら29人が運航会社の「知床遊覧船」と桂田社長に対し、およそ15億円の損害賠償を求めています。

乗客家族が追及するのは、運航会社の賠償責任と桂田社長個人の責任です。

事故当日は荒れた天候が予想され、ほかの観光船の船長が運航を止めたにもかかわらずKAZUⅠは出航。

(桂田社長)「海が荒れれば引き返す条件付き運航ということを豊田氏と打ち合わせ、当時の出航を決定いたしました」

桂田社長と船長はとりあえず海に出て、荒れたら引き返すという「条件付き運航」を決めていました。

運輸安全委員会は、最終報告書で「事故当日は強風・波浪注意報が発表され、風速15メートル、波の高さは2メートルと予想されていた」と指摘。

一方、会社が作成した運航基準では、風速8メートル以上、波の高さ1メートル以上で運航しないと定めていました。

乗客の家族は悪天候が予想される中、船を出航させた桂田社長の判断に「過失」があったと主張。

13日の初弁論では桂田社長に直接訴えました。

(乗客家族)「この事件は、安全管理規定に違反して発航(出航)させた結果が招いた 悲劇です。当日の気象予報値は基準値の倍近くの数字であったため、発航(出航)をしてはならなかったのです」

乗客家族が時折声を荒げながら訴えかけますが、桂田社長はほとんど目線を合わせませんでした。

被告側は「当日の出航地点の波は運航基準を大きく下回る穏やかな状況」「船長が途中で引き返すか、避難する港に入港すれば事故の発生を避けられた」などと、桂田社長の判断に過失はないと主張し、請求棄却を求めています。

海難事故の専門家は、原告側が証拠とする最終報告書が、裁判の行方を左右すると指摘します。

(田川俊一弁護士)「(最終報告書は)全て事実だとは言えませんが、かなり重みのある証拠資料だと思う。被告側は信用性がないと言っているが、それは一つの主張であって、信用性があるかないかは中身によって判断しなければならない」

法廷では何も語らなかった桂田社長。

(記者)「桂田さん、受け止め聞かせてください」

裁判の後、「意見陳述の内容は、大変重く受け止めさせていただきました。謝罪と償い、犠牲者の方々へ慰霊を続けていく所存です」とコメントを発表しました。

03/13(木) 18:31

ニュース