「異常な行動をするヒグマ」山中で遺体発見…周辺で3頭駆除 警戒強化のなか事故発生 羅臼岳
(武田記者)「羅臼岳斜里側の登山口です。先ほど遺体が見つかったとの情報が入ってきました」
8月15日朝、小雨が降る中始まった男性の捜索。
午後1時半すぎに男性がクマに襲われた現場付近で遺体が見つかりました。
遺体の顔と上半身は傷だらけ…
特に下半身の損傷が激しかったということです。
所持品などから、遺体は安否不明となっている男性とみられています。
知床半島にそびえる羅臼岳で14日午前11時すぎ、登山客から緊迫の通報がありました。
「友人がヒグマに襲われた」
クマに襲われたのは、登山客の20代の男性です。
男性は羅臼岳の標高550メートル付近で通報した友人と2人でいたところ、クマに襲われました。
当時2人はおよそ200メートル離れて登山道を下山していたということです。
すると、前を歩いていた男性が友人の名前を叫びます。
友人が近づくと、そこにはクマと格闘する男性の姿が。
その際、男性は太もも付近からかなりの出血がありました。
男性はその後クマに襲われ、やぶの中に引きずりこまれたとみられています。
そして、その友人は震える声で警察に通報していたといいます。
その場に居合わせたという登山客は、緊迫の様子を目の当たりにしていました。
(居合わせた登山客)「座り込んでというか茫然自失という状態だと思う。電話しながら声が震えていたりスマホを持つ手が震えていたりとか。なんて声かけたらいいのか分からない状態でした」
そして、15日の捜索で動きがありました。
斜里町などによりますと、男性がクマに襲われた現場付近で遺体が見つかったということです。
これまでに男性のものとみられる血の付いたシャツや財布などが見つかっていて、所持品などから遺体は安否不明となっている男性とみられています。
また、遺体が見つかる前には、すぐそばで親子グマ3頭を発見し、ハンターが発砲。
クマ3頭は駆除されましたが、このクマが男性を襲ったクマかどうかは分かっていません。
今後、道総研がDNA分析を実施するということです。
クマの生態に詳しい専門家はー
(北大大学院獣医学研究院 坪田敏男教授)「ヒグマに襲われてかなり大きな損傷を受けられていることだと思う。羅臼岳周辺でも1か月くらい異常な行動をするヒグマがいたのはわかっている。そういう中で人を恐れない普通ではない個体が生まれてしまった」
2005年にユネスコの世界自然遺産に登録された羅臼岳のある知床。
道によりますと、登録されて以降、登山客がヒグマに襲われる被害が起きたのは今回が初めてだったということです。
しかし、人とヒグマとの距離が近年問題となっていて、数日前にも登山客がクマと遭遇していました。
知床財団などよりますと、8月10日には、クマが登山客に3・4メートル接近する事案が発生。
12日も登山客がクマに遭遇し、付きまとわれていました。
13日には町の職員などが羅臼岳に入り、警戒を強めていた最中、今回の事故が発生しました。
知床で自然ガイドを務めている男性は羅臼岳の人気ぶりについてー
(星の時間 綾野雄次さん)「半島のなかで一番高く目立つ。お盆だったら1日100人くらい登っている。そういった(遭遇したという)情報があればもっと大々的に発表するべきだし、入山規制もするべきだと思う」
人とクマとの距離を保つことはできなかったのか、情報発信は十分だったのか、検証が必要です。
警察は見つかった遺体の身元の確認を進めています。
男性は8月14日、北海道・羅臼岳で友人と下山していた時にクマに襲われ、安否不明となっていました。
そして15日、捜索隊が親子グマに遭遇し、ハンターが駆除。
親グマのすぐそばで午後1時半ごろ、遺体を発見しました。
警察によりますと、遺体は下半身の損傷が特に激しく、上半身や顔も傷だらけだったということです。
所持品などから、遺体は安否不明となっていた登山客の20代男性とみられています。
専門家は、一般的にはヒグマは人を避けてくれる動物だとし、今回のクマは「異常個体」だと分析しています。
なぜこうなったのか、考えられることとしては、例えば人の食べ残しをクマが口にし、それを人間に結びつけ、人を襲えばなにかいいことが起こると学習し、クマの行動が変容したのではと話していました。
そのため、ごみは持ち帰る・ザックを登山道に置いて登らないなど、人間がクマの生息地に足を踏み入れている認識を持ち、ルールを守って異常な個体を作らないことが大切だと話しています。