発砲禁止の住宅街「危害を及ぼす可能性」クマ駆除の難しさ、浮き彫りになった課題 北海道福島町
北海道福島町で男性を襲い死亡させたクマは7月18日に駆除され、4年前には別の女性を襲い死亡させていたことも判明しました。
この問題をめぐり、住宅街での駆除の難しさとマチの課題が浮き彫りになっています。
(防災無線)「クマの目撃情報がありました。外出を控えてください」
18日未明、福島町で防災無線が響き、マチに緊張が走りました。
(カメラマン)「いたんじゃない」
(カメラマン)「ストップ。いるっぽい」
口に指をあて、静かにするようハンターが伝えます。
(ハンター)「いた。いた」
(山本記者)「いまハンターからいたという声が。車庫と住宅の間にクマがいるとみられます。いまハンターが猟銃を持ち出しました」
暗闇の中、ついにハンターがクマを発見。
(ハンター)「下がってください」
そして…午前3時半。
(山本記者)「いま大きな銃発音が鳴り響きました。住宅街に銃声が鳴り響きました」
福島町月崎の住宅街で、ハンターがクマに発砲しました。
そのわずか2分後。
(山本記者)「いま2発目の銃発音が鳴り響きました」
(ハンター)「OK、いいよ」
(山本記者)「ハンターからいいよという声も聞こえます」
その数分後…
(山本記者)「クマが運び出されています」
運び出されたのは体長2メートル・体重218キロのオスのヒグマ。
口が大きく開き…牙も確認できました。
その後、駆除されたクマの毛を分析した結果、7月12日に新聞配達員の佐藤さんを襲い死亡させたクマのDNAと一致。
さらにこのクマは、4年前にも77歳の女性を襲って死亡させていたことが判明しました。
駆除されるまでの間、町民たちは不安な日々を過ごしていました。
(町民)「網戸にクマが来たら怖いから(窓を)閉めている。エアコンはないから扇風機」
『なぜ?駆除に約1週間も?』
佐藤さんが襲われた現場付近は平坦な土地で、銃弾が人や民家に到達するのを遮る壁の役割となる「バックストップ」がありませんでした。
これでは発砲はできないといいます。
(函館方面松前警察署 権藤要署長)「並行撃ちは他人に危害を及ぼす可能性がゼロではない。やっぱり斜め撃ちというか、ハンターがある程度の高さから撃ちおろす形でしかできない」
現場付近ではハンターらが高所作業車の上から様子をうかがう姿が見られましたが、じつはこれは、上から角度をつけるなど駆除を試みていたのです。
一方、駆除された日の状況はというとー
(山本記者)「住宅の間のあちらの茂みの中にクマがいて、駆除されたということです」
クマが潜んでいたのは、発砲が原則禁止されている住宅街の中の茂み。
しかし、その茂みはなだらかな坂となっていたため、警察は土の地面がバックストップの役割を担い、発砲が可能と判断したとみられています。
法律が改正され、9月からは市町村の責任で猟銃を発砲できることになりますが、緊急時に市街地で住民の安全を確保するという条件を満たし、判断することの難しさを突きつけられました。
『なぜクマは市街地に?』
(山本記者)「住宅街のすぐ横にあるこちらには、私の背丈よりもはるかに高くまで伸びた草がそのまま放置されています」
クマはこういった草地をつたって市街地に迷い込むことがあるということですが、とくに問題となっていたのが私有地の茂みです。
(町民)「よその土地だからむやみに言えないし」
(町民)「役場の人が回ってきたときに、この草はどうにかならないかと聞いたが、私有地だから刈ってもらえない」
こうした現状から福島町は今週、町内会長を集め、私有地などに生えた草の処理を呼びかけることにしています。
また、クマが山から下りてこないよう電気柵の設置をすすめるなど、住民をクマから守るために町も動き始めています。
(鳴海清春町長)「違う地区でも出没が報告されているので、危険があるということを想定して対応していきたい」
クマと人間が共存するために市街地に近づかせない対策が不可欠となっています。