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【命を守る】9人犠牲の暴風雪災害から10年…教訓は生かされているか

10年前の3月2日。

急速に発達した低気圧による暴風雪が道東やオホーツクを襲い、車が立ち往生するなどして9人が犠牲となりました。
防災シリーズ「命を守る」。今回は、その教訓がいまにどう生かされているのか取材しました。

10年前の3月2日。北海道内は発達した低気圧の影響で各地で暴風雪に。
何台もの車が立ち往生し、多くの犠牲者がでました。

オホーツク海に面した湧別町です。ここで悲劇が親子を襲いました。

(娘発見の瞬間)「見つかった」「生きてる」「毛布!」

車に乗っていた父親と当時小学3年生だった娘が行方不明に。2人は翌日、乗っていた車からおよそ300メートル離れた倉庫の前で見つかり、娘は無事だったものの父親が亡くなりました。

(遠軽地区広域組合消防署湧別支署 森正光署長(当時))「お父さんは子どもを上から覆うような形だった」

暴風雪のなか、父親は娘を大切に抱きかかえながら亡くなりました。
その後の娘の手紙には、父親への思いが綴られていました。
「お父さんのことは夜ベッドに入ると優しい顔が浮かび涙が出ることもあります」

父親が亡くなったのは海岸に近い道道。10年経った現場を訪ねました。
父親と娘が見つかった場所の近くでは、さまざまな対策がとられていました。

(根本記者)「親子2人はこちらの建物の前で倒れているのが見つかりました。この反省から道は、周辺の状況が確認できるカメラを取り付けました」

現場のすぐそばに取り付けられたこのカメラを監視しているのが、道の建設管理部です。

(網走建設管理部遠軽出張所 内海久志所長)「私どもがやったのはカメラ。それと前回の事故でどこにいるかわからないということがあったので、キロポストという測点を設置した」

このカメラは、道路を通行止めにするかどうかの判断にも役立てられているということです。

対策は町内の別の場所でも—
湧別町はオホーツク海から吹き付ける風が強く、海沿いの国道ではいまでも防雪柵の設置工事が続けられています。地元の住民は、道路の安全がいかに大切か訴えます。

(オホーツクのみちと未来を考える会 田中夕貴代表)「私たちの地域は1989年に鉄道がなくなっているので、この道路だけに頼って生活が成り立っている。私たちの地域にとっては、生きていくため暮らしていくために命を守るという点で重要なのが道路」

なぜ、被害はここまで大きくなったのでしょうか。

当時の天気図を見ると、北海道に接近した2つの低気圧は途中で1つに。
気圧がさらに低くなり、低気圧は反時計回りに風が吹き込むため、海からの湿った風が勢いよく道内に流れ込みました。
また、マチが一時低気圧の渦の中心になったために、晴れて吹雪への警戒感が薄れた直後に天気が急変したことも、被害が拡大した一因とされています。
気象台によると、冬に低気圧が道内上空を通過する際には、こうした現象がまれに発生するといいます。

悲惨な事故は中標津町でも。
吹きだまりのため車が道道で動けなくなり、乗っていた母親と子ども3人のあわせて4人が一酸化炭素中毒で死亡しました。

(根本記者)「10年前、4人が乗った車は昔からあるこの防雪柵が途切れているこのあたりで雪に埋まって動けなくなりました。こうした事故を受けて道は、私の後ろに見えている新しい防雪柵を追加で設置するなどして対策を進めています」

道は湧別町の現場と同じく、カメラや現在地がわかるキロポストの設置を進めたほか、同じ場所に再び吹き溜まりができることのないように、追加で防雪柵を設置しました。
町も住民への注意喚起に務めています。

(中標津町役場総務課防災係 古谷純平さん)「中標津町では、毎年冬の時期になると広報誌で暴風雪対策の記事を掲載するようにしています」

ほかにも吹雪や視界の予測ができるシステムを導入。住民への情報提供を細かくできるようになったといいます。
また10年前の災害をうけて、気象台も呼びかけを改めるなどの取り組みを進めています。

(札幌管区気象台 高橋学 主任予報官)「2013年の暴風雪のような状況が想定されるときには『数年に一度の猛吹雪』と『外出は控えてください』という文言をキーワードとして、厳重な警戒を呼び掛ける。天気が荒れていなくても、今後2013年の暴風雪災害のような気象状況になる可能性があると思ってもらい、ご自身の行動を考えていただきたい」

一方、万が一車が雪に埋まってしまった場合への備えも進んでいます。
先月、北見市内で警察などが行ったのは、暴風雪のなか雪に埋まった人や車の位置を特定して救助する訓練です。

(道警北見方面本部警備課 福井一課長)「10年間で相当変わってきた。もう犠牲者を出さないために、このような訓練など連携して対応できるように継続してやっている」

暴風雪がおきたときは何に気を付けるべきか。
災害心理学の専門家は、道民特有の心理状況も踏まえて検討する必要があると指摘します。

(兵庫県立大学 木村玲欧教授)「北海道では雪に慣れている人が多いと思いますが、慣れているからこそ大丈夫だろうという経験主義バイアスが働く。もし不要不急であれば、なるべく家の中にとどまる。巻き込まれてもそれ以上被害を大きくさせない。こういった対策を地道にしていくことが重要」

二度と悲劇を繰り返さないために—
10年前の教訓を忘れずに、一人ひとりが命を守る行動をとることが大切です。

(2023年3月2日放送) 
「どさんこワイド179」  6/26(月)11:01更新

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