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【裁判詳報】「パキスタン人が盗んだ」 チェーンソー紛失で恨み…モスク放火の男に判決 札幌地裁

2026年2月、北海道江別市でイスラム教の礼拝所「モスク」やパキスタン人が管理する事務所兼住宅など3棟が相次いで狙われた連続放火事件。

非現住建造物等放火などの罪に問われていた千歳市の石井遼太郎被告(37)に対し、札幌地方裁判所は10月29日、拘禁刑6年6か月(求刑:拘禁刑8年)の判決を言い渡しました。

 

ペットボトルに混合油…深夜に侵入し大火に 被害額は2000万円超

判決によりますと、石井被告は2026年2月、江別市角山にあるパキスタン人が管理する会社事務所兼住宅や、イスラム教の礼拝所であるモスク「EBETSU MASJID」などに火を放ち、全焼させるなどしました。

犯行の手口は極めて計画的かつ危険なものでした。

被告は飲み口を加工した500ミリリットルのペットボトル複数本に、ガソリンを主成分とする混合油と着火剤を詰めて現場へ運搬。

深夜に建物内へ侵入し、複数箇所や床下に設置して着火したほか、備え付けの灯油タンクに投入したり、ガスボンベを併用して火力を強めようとしたりしていました。

約半月の間に敢行された犯行は未遂1件を含む計3件に及び、2棟が全焼。被害総額は2000万円を超え、地域社会にも大きな不安と衝撃を与えました。

 

発端は「名刺」と「ネット情報」…短絡的な決めつけによる怨恨

なぜ、被告はモスクやパキスタン人の施設を標的にしたのか。公判ではその身勝手な動機が浮き彫りになりました。

石井被告は日頃から自身の経済的境遇に不満を募らせていたほか、過去の体験から外国人への憤りを抱えていました。

そうした中、自宅の玄関前に置いていたチェーンソーを紛失。

付近にパキスタン人の名刺が落ちていたことから、「パキスタン人が盗んだ」と短絡的に決めつけ、犯行を決意したといいます。

 

さらに、出所不明なインターネット上の情報を鵜呑みにした被告は、盗難とは何の関係もない被害者らの施設を標的に定めました。

判決で裁判長は「落ち度のない被害者らに筋違いの怨恨を向けたといわざるを得ず、動機・経緯に酌むべき事情はない」と厳しく断じました。

 

判決直前に350万円を“贖罪寄付” 検察側は求刑を減刑

これまでの公判で弁護側は「日頃の鬱屈がたまった八つ当たり的な犯行であり、思想犯ではない」として情状酌量を求めていました。

迎えた10月29日の判決公判の直前、弁護側から新たな事情が示されました。

石井被告が自らの共済契約を解約して工面するなどし、計350万円を「赤い羽根共同募金」と「札幌法律援護基金」へ寄付したことが明かされたのです。

これを受け、当初「拘禁刑9年」を求刑していた検察側は、改めて「拘禁刑8年」を求刑し直す異例の展開となりました。

裁判長から「判決の前に何か言っておきたいことはありますか?」と促された石井被告は、消え入るような声でこう述べました。

「いろいろな人に迷惑をかけて申し訳ありませんでしたとしか言いようがありません」

 

札幌地裁の判断――「危険かつ重大」も反省の情を考慮

判決で札幌地裁は、犯情の重さについて次のように指摘しました。

「各建物が住宅密集地にあったわけではなく、延焼の危険に限界があったことを考慮しても、犯行態様は甚だ危険」

「短期間に3度も及び、全焼2件・未遂1件で被害総額は2000万円を超え、結果は総じて重大」

「同種事犯の中でもかなり重い部類に属し、長期の実刑を免れない」

その一方で、情状面においては一定の酌量を認めました。

公判廷に出廷した被告の父親が、出所後にともに農業を営むなど社会復帰を支援する姿勢を示していること、そして被告自らが共済を解約して贖罪寄付を行い、反省の態度を見せていることなどを考慮。

最終的に、求刑(拘禁刑8年)から1年6か月減軽した「拘禁刑6年6か月」の判決を言い渡しました。

独善的な思い込みとネット情報への盲信が生んだ連続放火事件。被告が背負う罪の重さと、地域に残された傷痕は決して小さくありません。

 

10/31(土) 07:00

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